毎年バレンタインズデーには、旦那が高級レストランに連れて行ってくれるのですが、主婦の私は、そのレストランで払う大金がどうも割りが合わない気がして納得出来ない。そこで今年は、自宅で私の手料理のバレンタインズデーディナーとしました。
その代わり旦那が食べたいと言う献立を重視し、なかなか日本では手に入らない材料を、わざわざネットで検索しお取り寄せまでして準備しました。我が家の今年のバレンタインズデーのディナーは、こんな風でした...
ステーキ&キドニーパイ
さて皆様、この下の写真のドロリ~~ンとしたものですが、これが一体何かお分かりでしょうか?
これはラムの腎臓です。英語ではキドニーと呼ばれる臓物です。チリコンカルネに入っている茶色いインゲン豆、この腎臓にそっくりでしょう!だからあのインゲン豆はキドニービーンズと呼ばれるんです。
私が夕べ旦那の為に作ったステーキ&キドニーパイには、キドニービーンズではなく、このラムのキドニーが牛肉と共に入っているんです。
本当は牛のキドニーが手に入れば良かったのですが、ホルモンを売った肉屋でも、“まめ”と呼ぶ腎臓はなかなか見かけないし、コリアマーケットでもあったりなかったり。結局冷凍ですぐに入手出来たラムのキドニーを代用しました。
腎臓と言えば泌尿器系臓器。キドニーはそのため料理用に加工されたものでも、封を開けるとまだアンモニア臭が漂います。気になる人は恐らくこれを水に漬けたりして、アンモニア臭を抜いてから調理するんでしょう。
しかし、その辺は大胆なイギリス人のこと。そんな手間なことはいたしません!買って来て封を開けたら洗いもせず、たっぷりのバターを熱したフライパンで焼いて食べたり、煮込み料理に入れたりします。
そうそう、この前私が作ってブログで紹介したランカシャーホットポット も、本来の作り方に従うならば、ラム肉と共にキドニーを投入して煮込むんです。
レバー同様に非常に栄養価の高い臓物で、特に鉄分が多いので、貧血気味の人や産後のお母さんなどにも最適の食べ物。現代のイギリス人が食べる数少ない臓物の1つです。
ステーキ&キドニーパイはイギリスのパブの定番料理の1つ。下の写真は先日の帰省時旦那がパブで食べたものですが、珍しくショートクラストペイストリーで包まれていました。一般的にはパイ生地ではなくダンプリング生地に包んで焼きます。
ダンプリング生地に使うスエットという獣脂(日本ではケンネ脂として知られています)は、腎臓の周りの脂です。私の勝手な解釈だけれど、腎臓の入ったパイをダンプリング生地で包むことで、その原形をイメージしているのではないかと思います。
<材料 2人分>
牛肉(ランプステーキ、すね肉など)...370~380g
ラムキドニー(料理用に加工されたもの)...2個(約100g)
牛脂、なければサラダオイル...適宜
たまねぎ、薄くスライス...小1個
にんにく、薄くスライス...1かけ
小麦粉...大さじ1
ビーフストック、なければコンソメ...300ml
トマトピューレ...小さじ1
リー&ペリンウスターシャーソース...小さじ1
塩こしょう...適宜
味の素...適宜
マッシュルーム、薄くスライス...1パック(約100g)
ローレル...1葉
タイム...2~3本
(ダンプリング生地)
小麦粉...140g+α
ベーキングパウダー...5g
塩...小さじ1/2
バター、1cm角に切る...40g
卵...1個
牛乳...大さじ1
1.牛肉は脂肪を取り除き約2cm角に切る。キドニーは約1cm角に小さく刻む。
2.深鍋に牛脂を熱したまねぎとにんにくを炒める。
2.深鍋に牛脂を熱したまねぎとにんにくを炒める。
3.焦がさない程度にたまねぎとにんにくを炒めしんなりしたら、牛肉とキドニーを加え肉全体に火が通り色が変わるまで炒める。
4.3に小麦粉を加え混ぜ合わせる。熱いストックを徐々に加えて粉分を完全に溶かす。
5.4にトマトピューレ、ウスターシャーソースを加え、塩こしょう、味の素で軽く味付けをする。煮立ってきたらマッシュルームとハーブを加え、蓋をし弱火で1時間半煮込む。
6.1時間半経って水分が少し減った時点で味見をし、必要であれば調味料を加えて、ハーブを取り除き火からおろす。あら熱を取る。
7.ダンプリング生地を作る。小麦粉、ベーキングパウダー、塩を合わせスプーンでよくかき混ぜる。バターを加え指でつぶしながら、壊れたビスケットのようなクランブル状になるまで粉に擦り込む。
8.卵と牛乳を混ぜ合せ7の粉に加える。フォークでかき混ぜながらさっくり混ぜ合わさったら、手に替えて生地をひとまとめにする。柔らか過ぎるようなら少し小麦粉を足す。
9.8が耳朶程度の柔らかさの生地になったら、打ち粉をした台の上に移し麺棒で伸ばす。6のフィリングをパイ皿に入れ、延ばした生地を載せしっかり指でパイ皿に貼付ける。何カ所か空気穴を開け、200度前後で予熱を済ませたオーブンで約30分焼く。
パイが焼き上がるまでの間、バレンタインズデーの昨日はロゼシャンペンを開けました。10月の結婚記念日の時に開けようと買って来たのが、なぜかタイミングを逃し昨日まで開けることがなかったシャンペン。
結婚祝いに旦那の友達夫婦からもらったこのシャンペングラスが、安物と言う私に対し、いや高価なものだと主張する旦那。ロマンチックな日だと言うのに、危うく大げんかになる寸前でした。たかがシャンペングラスで...(苦笑)
あと一歩で大げんか!そんな時タイミング良くパイが焼き上がってくれました!
旦那の為に焼いたパイには、残った生地をハート型で抜き貼付けてみました。私もそろそろ50やちゅうのに、ほんまよぉやるのぉ!と自分でもあきれて笑えてきます。(爆)
キドニーなんて滅多に手に入りませんから、せっかくの機会、私は昨日はこだわって本格的に作りたくて、ビーフストックはイギリス製のもの、ダンプリング生地はバターではなくスエットをまぜたものにしました。
そして付け合わせにはリーク(西洋ねぎ)の代用で、ねぎをバターで炒めて加えたマッシュポテトに、旦那のリクエストでグリーンサラダを添えました。
気になるキドニーのアンモニア臭は、ハーブとともにじっくり煮込む間に消えます。そしてそれはキドニー独特の風味と変わり、普通のビーフパイでは味わえないこくを添えるんです。
パイの中にはじっくり煮込まれたシチューが、この通り!熱々のシチューにマッシュポテトをつけて食べるのが、もう最高に美味しいんです!
イギリスには美味しいものがない?誰がそんなこと初めに言うたんや!こんだけ旨いもんががあるやろうが!と、私はこのパイを食べる度、イギリス料理を誤解している人達に声を大にして言ってやりたい。