消費者心理学とマーケティング - 消費者心理学・消費者行動論の研究より - -2ページ目

消費者心理とマーケティング-店舗の雰囲気No7-

消費者心理とマーケティング-店舗の雰囲気No7-を取り扱います。

環境心理学の古典的なモデルであるMehrabian Russellのモデル (1974) No4です。このモデルは未だに消費者の店舗でのショッピングの分析に最もよく使われているモデルです。

今回は、Mehrabian Russellのモデルの消費者行動への応用です。以前、店舗の雰囲気No1としてDonovanRossiterの研究を取り上げたのですが、今回の内容と重複するので差し換えます

1.Mehrabian Russellのモデル 復習

外部刺激(例、店舗雰囲気)がどのように人間の感情に影響を与え、最終的に行動に影響を与えるというモデルです(詳細はこちら )。

Mehrabian Russellの研究自体は一般的な状況に関する研究で小売業を対象にしたものではありません。

具体的には以下のようになります。

(1)外部刺激(2)感情(3)行動



2.Donovan等の研究Donovan, & Rossiter, 1982; Donovan, Rossiter, Marcoolyn, & Nesdale, 1994)

Donovan等の研究はMehrabian Russellのモデルを実際に消費者行動に応用した事例として良く知られています。彼らはMehrabian Russellのリサーチ手法(1974)を多少修正して消費者行動の研究に応用しました。修正部分等にリサーチ手法としてやや問題があると(私を含む)一部の研究者に言われていますが、今回はDonovan等の研究をそのまま紹介します。

3.結果

(1)情報レート(information rates

消費者が知覚した店舗の雰囲気(レイアウト、音楽、色彩、混雑など)は下記のように分類されました(Donovan, & Rossiter, 1982)。

(A)革新さ・目新しさ

(話題の)新商品があるか、陳列方法に目新しさがあるか、驚きのあるような商品があるかなど

同じような商品・陳列方法が長期間続けられている店舗は革新さ・目新しさの程度が低いということ

(B)不規則さ

他社にはないような商品があるか、色彩にコントラストがあるか、陳列にコントラストがあるなど

他社と同じような商品・色彩が同じようなパッケージが並んでいる店舗は不規則さの程度が低いということ

(C)バラエティ

商品、パッケージ、陳列、音楽などにバラエティさがあるか

単調な色彩、音楽、陳列などの店舗はバラエティさの程度が低いということ

(C)混雑さ

店舗・通路・階段などのスペースは充分か

店舗・通路・階段などのスペースが狭く、顧客通しの体が触れ合うような店舗は混雑さの程度が高いということ

(D)大きさ

店舗・陳列スペースなどは充分広いか

店舗・陳列スペースなどが狭く迫力のない店舗は大きさの程度が低いということ

(2)情報レート(information rates)と感情の関係(以前のご紹介内容はこちら

(A)革新さ・目新しさ、(C)混雑さ、(D)大きさが覚醒の程度と正の関係がありました。

つまり、多くの目新しい商品がある店舗、混雑している店舗、大きな店舗に入ると消費者はドキドキと鼓動が高まるということが分かりました。なお、衝動買いをする消費者は覚醒の程度が高い傾向にあると言われます。

(3)感情と行動の関係(以前のご紹介内容はこちら

(A)快(pleasure/不快(displeasure

快・不快の程度(快感に感じる程度)は以下の行動に影響を与えました。つまり快の程度が高いほど下記の項目をより強く感じました。

その店舗で買物を楽しんだか、また来るか

店舗滞在時間

顧客に対してフレンドリーな店舗と感じたか

その店舗を好きか

(B)覚醒(arousal/昏睡(nonarousal

全体として、覚醒・昏睡の程度(興奮している程度)は消費者の行動に影響を与えませんでした。

しかし、DonovanRossiterの研究(1982)では快適に消費者が感じている環境下では覚醒・昏睡の程度が消費者の下記の行動に影響を与えることが分かりました。(不快な環境下では影響はなし)

その店舗で買物を楽しんだか、また来るか

店舗滞在時間

一方、Donovan, Rossiter, Marcoolyn, Nesdaleの研究(1994)では不快に消費者が感じている環境下で覚醒・昏睡の程度が消費者の下記の行動に影響を与えることが分かりました。(快適な環境下では影響はなし)

非計画的(衝動的)な購買

上記の違いは研究の対象とした店舗形態の違いとDonovan等(1994)は述べています。前者は様々な複数の業態が対象で、後者はディスカウントデパートが対象。

4.実務への応用

上記のリサーチからも分かるように店舗の売場の変更は消費者の売場の知覚・感情・行動に影響を与えます。当然、実務家の方々はこのような関係は実務経験上分かっていることです。実務上の本当の問題はそれぞれの関係を定量的に測定できないということだと思います。

定量的に測定できる場合は、成績優良店(群)と成績不良店(群)の比較や売場変更前と後の比較、食品と雑貨など売場ごとの比較など様々な応用が可能になります。当然ですが、店舗のフォーマットや立地によって来客の特徴は異なるので、それぞれの店舗の売場はそれぞれの主要来客に合った形のものでなければなりません。このような主要来客に合った売場作りも消費者の売場の知覚・感情を定量化することで可能になるのではないでしょうか?

定量化するには上記の説明で取り扱った学者等が用いたような50から100項目程度にのぼる質問表とそのデータに対する統計分析が必要になります。

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コンサルタント時代の同志とGoot Advice(こちらというサイトでマーケティングに関する無料相談を承っています。

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主な参考論文

Donovan,R.J., & Rossiter,J.R. (1982). Store atmosphere: An environmental psychology approach. Journal of Retailing, 58, 34-57.

Donovan,R.J., Rossiter,J.R., Marcoolyn,G., & Nesdale,A. (1994). Store atmosphere and purchasing behavior, Journal of Retailing, 70, 283-294.

Mehrabian.A., & Russell,J.A. (1974). An approach to environmental psychology, Cambridge, MIT press.

消費者心理とマーケティング-店舗の雰囲気No6-

消費者心理とマーケティング-店舗の雰囲気No6-を取り扱います。

環境心理学の古典的なモデルであるMehrabian Russellのモデル (1974) No3です。このモデルは未だに消費者の店舗でのショッピングの分析に最もよく使われているモデルです。

1.Mehrabian Russellのモデル 復習

外部刺激(例、店舗雰囲気)がどのように人間の感情に影響を与え、最終的に行動に影響を与えるというモデルです。

Mehrabian Russellの研究自体は一般的な状況に関する研究で小売業を対象にしたものではありません。

具体的には以下のようになります。

(1)外部刺激(2)感情(3)行動



2.感情詳細はこちら

感情は以下の3つの側面の程度で測定されます。

(1)快・不快:満足、幸福感の程度

(2)覚醒・昏睡:興奮している程度

(3)支配・従属:コントロールしている状況にあるか、コントロールされている状況にあるか

3.行動

上記の感情の程度によって接近(approach)と回避(avoidance2通りの行動が現れます。

具体的には下記の4つの側面で接近と回避の程度が測定されました。

(1)状況に留まりたい

(2)状況を探索したい

(3)状況で作業した

(4)状況に属したい

4.感情と行動の関係過去の研究結果によるMehrabian Russellの仮説です。理論の基礎となっている概念です。

(1)快(pleasure)・不快(displeasure)と行動の関係

快(満足、幸福感)の程度が高まるにつれて接近(approach)の程度が高まるというものです。

例えば、ショッピング中に快適に感じる程度が高い店舗ほど顧客は長時間店舗に滞在し、長時間店内を探索し、販売員とより多くの会話し、ロイヤルティが高まることなどが考えられます。

(2)覚醒(arousal)・昏睡(nonarousal)と行動の関係

覚醒・昏睡と行動はU字型の関係にあるというものです。覚醒の程度が低い場合と高い場合は回避(avoidance)の程度が高まるが、適度な程度の覚醒の場合に接近(approach)の程度が最も高まるということです。

例えば、陳列における色のコントラストに関して、まったく単調的なパッケージの陳列(例、全て同じ色のパッケージを羅列)では、顧客は非常に淡白に感じて短時間で店を出てしまうかもしれません。一方、色の配列を何も考えずに目立つ色(例、赤色、青)のパッケージの商品を乱雑に陳列した場合は、顧客はチカチカと刺激が強すぎると感じて同じく短時間で店を出てしまうかもしれません。顧客に長時間買物を楽しんでもらうには適度な程度のコントラストが必要と言う事です。

上記の説明が分かりにくいかたは外部刺激と感情の関係を取り扱っている回の記事 をご参考にして下さい。

(3)支配・従属と行動の関係

支配・従属と行動の関係は過去の証拠が少ないため(明確など)関連は認められないとのことでした。

5.感情と行動の関係Mehrabian Russellの研究(1974) 結果)

(1)状況に属したいdesire to affiliate

小売業ではストア・ロイヤルティに関連する側面だと思われます。Mehrabian Russellの研究(1974)では、(覚醒などと比べて)快・不快が最も関連する感情であるということです。つまり、快適度が高まる状況で最もストア・ロイヤルティが高まることが想定されます。

また快(pleasure)に感じている状況では、(低い・適度に低い・高い程度の覚醒程度に比べて)適度に高い覚醒の程度のケースが最も状況に属したい(desire to affiliate)欲求が高まるとされました。つまり顧客が快適に感じている店舗では、適度に覚醒度が高い(例、赤・青の色彩や音楽を適度に使った)ケースで最もストア・ロイヤルティが高まることが想定されます。

上記の説明が分かりにくいかたは外部刺激と感情の関係を取り扱っている回の記事 をご参考にして下さい。

一方、不快(displeasure)に感じている状況では、高い覚醒程度が最も状況に属したい(desire to affiliate)欲求が高まり、次に適度に低い覚醒程度が状況に属したい(desire to affiliate)欲求が高まるとされました。

(2)状況に留まりたい・探索したいdesire to stay and explore

小売業では店舗内に留まりたい・探索したいという欲求と関連すると思われます。これらは非常に強く快(pleasure)・不快(displeasureの感情に影響を受けるとされました。つまり快適に感じる程度が高まると顧客はより長時間店舗内に留まり探索することが想定されます。

覚醒・昏睡に関しては状況によって異なるとされました。

快(pleasure)に感じている状況では、(低い・適度に低い・高い程度の覚醒程度に比べて)適度に高い覚醒の程度のケースが最も状況に探索したい(desire to stay and explore)欲求が高まるとされました。(U字型)

不快(displeasure)に感じている状況では、適度に低い覚醒の程度のケースが最も状況に探索したい(desire to stay and explore)欲求が高まるとされました。(U字型)

一方、支配(dominance)しているように感じている状況では、高い覚醒の程度のケースが最も状況に探索したい(desire to stay and explore)欲求が高まるとされました。支配している状況とは自分でコントロールしている状況です(自分の意思で買物をしているなど)。(直線)

従属(submissive)しているように感じている状況では、低い覚醒の程度のケースが最も状況に探索したい(desire to stay and explore)欲求が高まるとされました。従属している状況とはコントロールされている状況です(上司と会議室にいるなど)。(直線)

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

主な参考論文

Mehrabian.A., & Russell,J.A. (1974). An approach to environmental psychology, Cambridge, MIT press.

消費者心理とマーケティング-店舗の雰囲気No5-

消費者心理とマーケティング-店舗の雰囲気No5-を取り扱います。

以前取り上げていた店舗の雰囲気について今回から少し掘り下げていきます。

環境心理学の古典的なモデルであるMehrabian Russellのモデル (1974) No2です。このモデルは未だに消費者の店舗でのショッピングの分析に最もよく使われているモデルです。

1.Mehrabian Russellのモデル 前回の復習

外部刺激(例、店舗雰囲気)がどのように人間の感情に影響を与え、最終的に行動に影響を与えるというモデルです(前回の内容の詳細はこちら )。

具体的には以下のようになります。

(1)外部刺激(2)感情(3)行動




2.外部刺激

色、音、匂い、混雑などの要素によって構成される複雑な外部刺激は情報レート(Information rateという概念で一括的に表現されます。情報レート(Information rate)が高いか低いかによって感情が高まったり・低くなったりします。例えば、目新しい音楽はより多くの情報が含まれていると考えられ、情報レート(Information rate)が高いとされます。

以下の状況は情報レート(Information rate)が高く、()内の表現は情報レート(Information rate)が低いとされます。

複雑(単純)、ランダム(パターン)、キーキーきしむ(調和した)、異質な(同質な)、雑多な(変化のある)、コントラスト(似ている)、断続的な(継続的な)、目新しい(見慣れている)、驚いた(驚かない)、早い(遅い)、距離が近い(遠い)、スペースが狭い(広い)、混雑していない(混雑している)

具体的には、複雑な陳列(音楽・文章・・・)は情報レート(Information rate)が高く、単純な陳列(音楽・文章・・・)は情報レート(Information rate)が低いというように使います。

(具体的な色彩、音楽、照明、混雑などの影響は今後扱います)

3.情報レート(Information rate)と感情との関係

前回述べたように感情は下記の概念で表されます。

(1)快・不快:満足、幸福感の程度

(2)覚醒・昏睡:興奮している程度

(3)支配・従属:コントロールしている状況にあるか、コントロールされている状況にあるか

この内、覚醒・昏睡(興奮している程度)が情報レート(Information rate)と直接関係があるとされます

情報レート(Information rate)の程度が上がると覚醒・昏睡(興奮している程度)が上昇するということです。例えば、目新しい商品を店頭で見つけると、見慣れた商品を見た場合よりも覚醒(興奮)の程度が高まる(つまりドキドキする)ということです。

一方、快・不快および支配・従属との関係はそれぞれのファクターによって異なり、一定していません

例えば、情報レート(Information rate)が高い目新しい商品は快(Pleasure)(快適さ・幸福感)の程度が高いが、同じく情報レート(Information rate)が高い混雑している売場は快(Pleasure)(快適さ・幸福感)の程度が低いということです。

4.応用:いくつかの質問をするので考えてみてください!

(1)店舗内で顧客の動くスピードは覚醒の程度が高まると速くなると言われています(快・不快も関係しますが・・・)。それでは店舗内のどのような要素を使うと顧客をゆっくりと店舗内を探索させることになると思われますか?

広く単調な(直線的な)かつ長い通路にする、バックグランド音楽は遅いテンポにする、商品の色彩のコントラストは過激にしない、また商品はカテゴリー別に陳列するなどが挙げられます。

(2)覚醒の程度が高いケースは衝動買いの可能性が高いと言われています。それではどのような売場を作ると衝動買いが高まると思われますか?

質問(1)とは逆の売場作りです。つまり、通路は複雑にジグザグにし、しかも狭く・短くする、バックグランド音楽のテンポは早くする、商品の色彩はコントラストを強調する、商品の陳列は分かりにくいパターンにする、あっと驚くような商品を置くなどです。

この例を見てみると、なぜドンキホーテが成功したかが分かると思います。人間には覚醒を求める(Arousal seeking)タイプの人がいます。つまりドキドキするのが好きで覚醒度の高い状況を求める人ですが、そのような人がドンキホーテを支持しているのでしょう。逆にそのようなタイプではない人にとっては、ドンキホーテは不快の程度を高め、あまり好きではないと思われます。

注意;この欄(4.応用)は私の個人的見解(仮説)で過去のリサーチなどに基づくものではありません。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

次回は感情と行動の関係をより詳細に扱います。

主な参考論文

Mehrabian.A., & Russell,J.A. (1974). An approach to environmental psychology, Cambridge, MIT press.

消費者心理とマーケティング-店舗の雰囲気No4-

消費者心理とマーケティング-店舗の雰囲気No4-を取り扱います。

以前取り上げていた店舗の雰囲気について今回から少し掘り下げていきます。

環境心理学の古典的なモデルであるMehrabian Russellのモデル (1974)を取り上げます。このモデルは未だに消費者の店舗でのショッピングの分析に最もよく使われているモデルです。

1.Mehrabian Russellのモデル

外部刺激(例、店舗雰囲気)がどのように人間の感情に影響を与え、最終的に行動に影響を与えるというモデルです。

具体的には以下のようになります。

(1)外部刺激(2)感情(3)行動

ポイントは、外部刺激による人間の行動の変化は感情の変化が媒体になるということです。









2.外部刺激

外部刺激(例、店舗雰囲気)は人間(例、消費者)に知覚されます。

Mehrabian Russellの研究 (1974)によると、外部刺激は以下の3つの側面に分類されました。

主に以下の3つの側面の程度によって人間の感情が変化すると考えられています。

(1)目新しさの程度

(2)大きさの程度:広さ、混雑の程度など

(3)複雑さ:単調さなど

3.感情

感情は以下の3つの側面の程度で測定されます。

主に以下の3つの側面(快・不快、覚醒・昏睡が中心)の程度によって人間の行動が変化すると考えられています。

(1)快・不快:満足、幸福感の程度

(2)覚醒・昏睡:興奮している程度

(3)支配・従属:コントロールしている状況にあるか、コントロールされている状況にあるか

4.行動

上記の感情の程度によって接近と回避2通りの行動が現れます。

具体的には下記の4つの側面で接近と回避の程度が測定されました。

(1)状況に留まりたい

(2)状況を探索したい

(3)状況で作業した

(4)状況に属したい

5.重要性

(1)消費者行動との関連

分かり易いように具体例を一つ取り上げます。

非常に混雑している店舗を考えて下さい。

非常に混雑しているという外部刺激は大きさが相応しくないように知覚されます。すると不快という感情が高まり、結果として回避(店に留まりたくない、店の中を探索したくない、店の従業員とは話したくない、贔屓にしたくない)という行動に結びつきます。

注意;この欄(5.重要性)は私の個人的見解(仮説)で過去のリサーチなどに基づくものではありません。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

次回は外部刺激と感情の関係をより詳細に扱います。

主な参考論文

Mehrabian.A., & Russell,J.A. (1974). An approach to environmental psychology, Cambridge, MIT press.

消費者心理とマーケティング-意思決定スタイルNo2-

消費者心理とマーケティング-意思決定スタイルNo2-を取り扱います。

今回は消費者の意思決定スタイル店舗の雰囲気を取り上げます。

以下の1-3が前回の要約です。詳細はこちら をご覧下さい。

1.消費者の意思決定スタイル

どのような特性(例、品質、値段、ブランド)を重視して買物をするかを消費者の意思決定スタイルと致します。

2.研究

Sproles Kendall1986)がCSI という消費者の意思決定スタイルの測定方法を開発して消費者のセグメンテーション(グループ化)を行いました。

3.セグメントSproles & Kendall, 1986

過去の研究に基づいて消費者は以下のセグメント(グループ)に分けられました。

1. 品質を非常に重視する消費者

2. ブランド名を非常に重視する消費者

3. 目新しい商品に非常に興味を持つ消費者

4. 快楽的で買物をレクリエーションと考えている消費者

5. 値段に敏感な消費者

6. 衝動的な消費者(衝動買いをする傾向のある消費者)

7. 多くの商品(情報)に困惑している消費者

8. ブランドロイヤルティの高い常習的な消費者

4.重要性

(1)店舗の雰囲気(注1)との関連

消費者の意思決定タイプによってどのような雰囲気の店を作るべきかが変わってきます

A品質/ブランド名を非常に重視する消費者

高級感がキーワードとなります。店舗の外装は消費者のイメージと一致するものにする必要があります。理由は、消費者は外装を見て販売されている製品(価格・品質・ブランドなど)を推定するからです(詳細はこちら )。高級アパレル店でしたらその典型的な外装にする必要があります。

内装に関しては、高揚させるよりも快適に感じさせる(注2)ように心がける方が良いと思います。快適に感じるほど、消費者は長い時間店舗に滞在し、お金を使います。具体的には通路は広くまっすぐに、バックグラウンド音楽はスローテンポのクラッシック音楽をかけることなどが挙げられます。色彩に関しても注意が必要です(詳細は省略)。

《注》

1.ここでの店舗の雰囲気とは外装・内装・レイアウト・バックグラウンド音楽・サービス・混雑度などを含んだ店全体の雰囲気のことです。

2.感情は快・不快 (pleasure / displeasure)、覚醒・睡眠 (arousal / non-arousal)の2軸で環境心理学の世界では捉えられることが多いです。快・不快は快適かどうかという概念で、覚醒・睡眠は気分がどきどきするか寝たような感じという概念です。

B)目新しい商品に非常に興味を持つ消費者

赤色には最新で革新的に見せる力がありますので、製品のパッケージや内装にうまく取り入れたいです。ただし、赤は消費者の覚醒のレベルを上げる(ドキドキと脈拍が速くなるなど)力があるので、店舗での滞在時間が減るのであまり使い過ぎない方が無難です。当然ですが、陳列の仕方もフェースをより多く設ける・陳列場所をより良い箇所に設けるなどの工夫が必要です。当然のことと思われる方が多いでしょうが、目新しい商品に興味を持つ消費者のプロファイルが分かっていないと効果的な陳列ができませんので実行するには一部の企業だけだと思います。貴社のこの対象は男性・女性、子供・大人・シニアのどの層でしょうか?全体の顧客の何%でしょうか?

C)快楽的で買物をレクリエーションと考えている消費者・衝動的な消費者

衝動買いする消費者は覚醒の程度が高いと言われます。ということは戦略としては顧客の覚醒を高める店作りをすべきということとなります。色彩に関してコメントしますと、(暖色の代表)と(寒色の代表)は覚醒のレベルを上げる効果があります(赤の方がより強い)。赤と青色の使い方がポイントとなります。一方、バックグラウンド音楽はテンポの早い音楽、ボリュームの大きな音楽覚醒のレベルを上げる効果があります。

注意;この欄(4.重要性)は私の個人的見解(仮説)で過去のリサーチなどに基づくものではありません。

ショッピング中の感情、色彩・音楽などの消費者行動への影響を次回以降に扱います。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

主な参考論文

Sproles,G.B., & Kendall,E.L. (1986). A methodology for profiling consumers’ decision-making style, The Journal of Consumer Affair, 20, 267-279.

消費者心理とマーケティング-意思決定スタイルNo1-

消費者心理とマーケティング-意思決定スタイルNo1-を取り扱います。

今回は消費者の意思決定スタイルを取り上げます。

1.消費者の意思決定スタイル

どのような特性(例、品質、値段、ブランド)を重視して買物をするかを消費者の意思決定スタイルと致します。

2.研究

Sproles Kendall1986)がCSI という消費者の意思決定スタイルの測定方法を開発して消費者のセグメンテーション(グループ化)を行いました。その後、米国だけでなく、英国、ギリシャ、ニュージーランド、韓国などの消費者を対象にした研究にも使われています(Cathy & Mitchell, 2003; Hafstrom, Chae & Chung, 1992; Lisonski, Durvasula & Zotos, 1995)。

3.セグメントSproles & Kendall, 1986

過去の研究に基づいて消費者は以下のセグメント(グループ)に分けられました。

1. 品質を非常に重視する消費者

完ぺき主義者で慎重に製品を比較するタイプの消費者。単に良い商品だけでは満足しないタイプの消費者。

2. ブランド名を非常に重視する消費者

ブランド名を非常に気にするタイプの消費者。このタイプの消費者は値段が高いものが品質も良いとの思いが強い傾向がある。良く知られている、広告されている製品なども好む傾向にある。

3. 目新しい商品に非常に興味を持つ消費者

目新しい製品を探し出すことに喜びを感じ、常に最新のスタイルをしていることを好む傾向にある。バラエティを求めることも特徴。

4. 快楽的で買物をレクリエーションと考えている消費者

ショッピングをエンターテイメント・レクリエーションと考えて楽しむタイプの消費者。

5. 値段に敏感な消費者

価格の安いものを求め、製品の比較をよく行うタイプの消費者。値段のわりに良いものを求める傾向がある。

6. 衝動的な消費者(衝動買いをする傾向のある消費者)

計画的に買物をしないタイプの消費者。

7. 多くの商品(情報)に困惑している消費者

製品や情報が多すぎてどの製品を選べば良いか分からなくなっている消費者。心理学で言う医情報過多の状態。

8. ブランドロイヤルティの高い常習的な消費者

お気に入りのブランドが決まっていて毎回同じものを購入する傾向がある消費者。

4.重要性

(1)消費者行動モデルとの関連

このモデルが重要な理由は、それぞれの意思決定スタイルによってマーケティング戦略の前提とする消費者行動モデル詳細はこちら )がまったく異なるからです。

品質を非常に重視する消費者と値段に敏感な消費者はAIDMAのようなモデルのように行動すると思われます。初めに対象ブランドの情報を取得し、記憶内の知識と絡めて考えて、そのブランドに対する信念・考えを形成する。次に考え・信念を評価することでそのブランドに対する感情・気持ちを形成する。最後に購買意図が形成されるという流れとなると思います。(テレビ・雑誌等)広告・口コミなど様々な情報を基に(比較検討を行い)合理的な意思決定をします。そのため、消費者の意思決定の助けとなる情報提供がポイントとなります。

ブランドロイヤルティの高い常習的な消費者は(ほとんど知られていないでしょうが)Ehrenberg ATR モデル1974)のように行動すると思われます。初めにそのブランドに対する信念・考えを形成する。その後、感情を持つ前に購買。そして使用した結果として満足・不満足と言うフィーリングが生じる。満足した場合はブランドに対する信念が固まり常習的に購買するという流れになります。広告には反応せずに、実際の使用した際の満足度やショッピング時の満足度によって再購買を行います。如何に本当に良い商品を揃えるか、ショッピング時・後に満足させるかがポイントとなります

ブランド名を非常に重視する消費者や目新しい商品に非常に興味を持つ消費者は快楽的な(Hedonic)モチベーションによって態度が形成されるというモデルのように行動すると思われます。初めに無形の商品特徴(パッケージが可愛い、CMで宣伝していた、友達が持っているなど)を評価することでそのブランドに対する感情・気持ちを形成する。次に購買する、最後に対象ブランドの情報を取得し、記憶内の知識と絡めて考えて、そのブランドに対する信念・考えを形成する。ポイントは、従来前提とされていた認知(Cognition感情(Affect)という順番ではなく、感情が認知の先に来ることもあるとした点です。このような消費者には情報提供を目的とした(テレビ・雑誌等)広告は効果がありません。むしろ、某消費者金融のCMのようなちわわを使って可愛いと思わせるCMや有名人を使ったイメージ戦略の方が効果があります。また(品質そのものよりも)パッケージやデザインも非常が重要な要素となります。

注意;この欄(4.重要性)は私の個人的見解(仮説)で過去のリサーチなどに基づくものではありません。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

主な参考論文

Cathy,B., & Mitchell,V.W. (2003). Generation Y female consumer decision-making styles. International Journal of Retail & Distribution Management, 31, 95-106.

Ehrenberg.A, (1974), Repetitive advertising and the consumer, Journal of Advertising Research, 14, 25-34.

Hafstrom,J.L., Chae,J.S., & Chung,Y.S. (1992). Consumer decision-making styles: Comparison between United states and Korean young consumers, The Journal of Consumer Affairs, 26, 146-158.

Lisonski,S., Durvasula,S., & Zotos,Y. (1995). Consumer decision-making styles: A multi-country investigation. European Journal of Marketing, 30, 10-21.

Sproles,G.B., & Kendall,E.L. (1986). A methodology for profiling consumers’ decision-making style, The Journal of Consumer Affair, 20, 267-279.

消費者心理とマーケティング-口コミNo6-

消費者心理とマーケティング-口コミNo6-を取り扱います。

今回はパーソナリティ新技術などの受け入れ易さ(革新度)関係を取り上げます。

1.イノベーター

マーケティングの教科書では、新技術を最初に受け入れるのはイノベーター(革新者)と呼ばれる集団で、そこから(口コミなどを通じて)アーリーアダプター(早期採用者)、アーリーマジョリティ(早期多数者)、レイトマジョリティ(遅れた多数者)の順番で新技術の採用がなされるとされています(Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。

2.パーソナリティ

ClarkGoldsmithの研究(2006)では下記の3点を取り上げて新技術などの受け入れ易さの関係をリサーチしました。

(1)他人(準拠集団)からの影響の受け易さConsumer susceptibility to interpersonal influence(Bearden & Netemeyer & Teel, 1989)

以前(詳細はこちら )紹介したように準拠集団からの影響を消費者は受けます(Park & Lessig, 1977)。準拠集団からの影響の受け易さには個人差があります

(2)他人と比較する程度Attention to social comparison information(Snyder, 1974, sited in Clark & Goldsmith, 2006)

一部の消費者は望ましい社会的な見栄えのためにセルフモニタリングと呼ばれることを行います(Anderson, Silverster, Cunningham-Snell & Haddleton, sited in Clark & Goldsmith, 2006)。つまり、他人と比較することで自分がどのように振舞うべきかをコントロールします。このような周囲からの目を気にする程度には個人差があります。

(3)製品の実用的な側面を重視する程度

一部に、製品の実用的な側面を(スタイルやファッションなどの)表面的な側面よりも重視する消費者(Role-relaxed consumer; Kahle, 1995a,b)がいます。Role-relaxed consumer周囲からの期待に同調する程度が低い消費者とも言えます(Clark & Goldsmith, 2006)このような周囲からの期待に同調する程度には個人差があります。

3.パーソナリティと新技術の受け入れ易さの関係Clark & Goldsmith, 2006)

(1)他人(準拠集団)からの影響の受け易さ

革新度とはネガティブな関係がある。つまり、他人(準拠集団)からの影響の受け易さが高まるほど、革新度(新技術の受け入れやすさ)が低下するという関係があります。

(2)他人と比較する程度

革新度とはネガティブな関係がある。つまり、他人と比較する程度が高まるほど、革新度(新技術の受け入れやすさ)が低下するという関係があります。

(3)製品の実用的な側面を重視する程度

革新度とはポジティブな関係がある。つまり、製品の実用的な側面を重視する程度が高まるほど、革新度(新技術の受け入れやすさ)が増加するという関係があります。

4.応用

(1)最先端技術を使用した製品の口コミマーケティングを仕掛ける場合どのような戦術が考えられますか?

オピニオンリーダーとイノベーターは異なる概念ですが最先端技術を使用した製品のケースではイノベーターがオピニオンリーダーとなることも充分考えられます。その際、イノベーターとアーリーアダプターやマジョリティとのプロファイルの違いを踏まえて異なる戦術を選択すべきです

具体的にはイノベーターは自分の判断・感性を重視して製品の実用性を重視するのに対して、マジョリティ他人が持っているものが欲しく、他人の影響も受け易い。しかも製品の実用性よりファッション性などをより重視する傾向があります。

(メーカー側から見た)製品ライフサイクルの議論を思い出すと分かり易いと思います。(新製品の)導入期製品内容に競争の焦点が当たります。競合があっても技術的な違いが大きくどのメーカーのブランドを選択するかで機能も異なってきます。そのためイノベーターは製品の実用性を重視した意思決定をすると思われます。一方、成長期に入ると参入企業数が増えて来てどの製品も似たようなものになってきます。ここでの競争の焦点は製品機能以外の要素(ファッション性、アフターサービスなど)となります。そのためマジョリティはより製品機能以外の要素でファッション性などを重視した意思決定になるとも言えます。

以上の議論を踏まえて口コミマーケティング戦略を考えると、新製品の導入期にはイノベーターをターゲットにした徹底した技術情報の提供に焦点を当てるべきです。特に競合との比較表やその他イノベーターの欲しがる情報を専門雑誌・ウェブ・ブログなどの媒体を通じて提供すべきです。一方、製品が成長期に入った場合は、アーリーアダプターやマジョリティをそれぞれの時期に応じてターゲットとしてファッション性など製品機能以外の要素に焦点を当て戦略を立てるべきです。これらの層は技術的に優れているから欲しいのではなくて周囲が持っているから欲しいと思っています。そのため専門雑誌などを媒体にするのではなく、有名人をオピニオンリーダーとする戦略(例、商品の無料提供)、既存顧客(イノベーター:オピニオンリーダー)の徹底したサポートなど、如何にしてオピニオンリーダーから好意的な情報がフォローワーに流れるかに焦点を当てた戦術を打つべきです

注意;この欄(4.応用)は私の個人的見解(仮説)で過去のリサーチなどに基づくものではありません。

《お願い》

皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

次回からは消費者の意思決定スタイルを取り扱います。

主な参考論文

Clark,R.A., & Goldsmith,R.E. (2006). Interpersonal influence and consumer innovativeness. International Journal of Consumer Studies, 30, 34-43.

Kahl,L.R. (1995a). Observation: Role-related consumers: a trend of the nineties. Journal of Advertising Research, 35, 66-71.

Kahl,L.R. (1995b). Observation: Role-related consumers: empirical evidence. Journal of Advertising Research, 35, 59-62.

Solomon,M., Bamossy,G., & Askegaard,S. (1999). Consumer behaviour a European perspective. Essex: Person Education Limited.

消費者心理とマーケティング-口コミNo5-

消費者心理とマーケティング-口コミNo5-を取り扱います。

今回はオピニオンリーダーを取り上げます。

1.オピニオンリーダー

皆さんの周囲にも、優れた製品知識を持ち、周囲の人にアドバイスを良く受け入れられるタイプの人がいると思われます。そのような人をオピニオンリーダーと呼びます(Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999

口コミとの関係ではオピニオンリーダーは口コミ情報の発信源になる傾向が高いと言えます。

2.特徴

Gilly, Graham, Wolfinbarger, Yaleのレビュー(1998)によると下記の特徴が挙がられています。

(1)優れた製品知識と(製品使用)経験を持っている

(2)個人(口コミ)以外からの情報源(特にマスメディア)から多くの情報を入手している(e.g., Bayus, Carroll & Rao, 1985, sited in Gilly et al. 1998

(3)製品に長期間関与している(長期間興味を持ち続けている)(Richins & Shaffer, 1988

3.オピニオンリーダーの信用Gilly et al. 1998

(1)知識により専門性があると周囲にあると思われるほど、オピニオンリーダーと見なされる傾向がある。

(2)知識により専門性があると周囲にあると思われるほど、周囲(フォローワー)に信用される傾向がある。

(3)オピニオンリーダーとフォローワーに同質性(共通点)があるほどオピニオンリーダーに影響力がある。

4.全製品にわたるオピニオンリーダー vs 製品ごとのオピニオンリーダー

従来は全ての商品にわたるオピニオンリーダーが各コミュニティーにいると言う考えが優勢でしたが、近年は、専門性はいくつかの製品にわたって重複する傾向がありますが、全ての製品にわたるオピニオンリーダーは存在しないという考えが優勢になっています(Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999。つまり専門性によって製品(群)ごとにオピニオンリーダーになる人とフォローワーが変わるということです。

5.応用

(1)過去のリサーチ(1985)ではオピニオンリーダーの情報源としてマスメディアが挙げられていました、現在の状況と照らし合わせるとどのような情報源が考えられますか?

各種ウェブサイト、ブログなども含まれると思います。テレビCMの重要性は低いと思われます。

(2)口コミマーケティングの進め方

今回の議論との関係のみに限定すると、オピニオンリーダーに商品・サービスを気に入ってもらって、それからフォローワーがオピニオンリーダーに追随するように進めるべきです。オピニオンリーダーの割合はフォローワーとよりも低いと言われます。その低い割合の層(オピニオンリーダー)のみを当初のターゲットにする口コミマーケティングの方法は当初からマスマーケットをターゲットにするマスマーケティングの方法とはまったく異なることを理解すべきです。ゲリラマーケティングの専門家はマスマーケティングのように企業が価値観を声高々に売り込むのではなく、消費者(特にオピニオンリーダー)と組んでブランドを一緒に作り上げるべきと述べています(Wipperfürth, 2005)。つまり、メーカーの役割はオピニオンリーダーがブランドを解釈する手助けをすること、オピニオンリーダーの意見を基にブランドを構築することなどと思われます。

(3)オピニオンリーダーの見つけ方Solomon et al. 1999

A職業的専門家

医者・税理士などの職業的専門家は自信の専門分野においてオピニオンリーダーと成りうる要素(専門的知識、他者からの信頼)を持っています。

B影響力のあるグループ

有名人や影響力のある人々(例、経営幹部、マスコミ)もオピニオンリーダーと成りうる要素を持っています。またファッションパネルという形で一部の若い女性を囲い込んで(例、優先的に自社ブランドを提供)オピニオンリーダーを育てている企業もあります。

C調査

質問表調査などで自社ブランドに関するオピニオンリーダーのプロファイルを調査し、そのプロファイルに適合する顧客に優先的に働きかけるケースもあります。

注意;この欄(5.応用)は私の個人的見解(仮説)で過去のリサーチなどに基づくものではありません。

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皆さんの実例があると、わかりやすく内容も発展しますので、皆さんの実例やコメントをどんどんお待ちしています!!下記コメント欄からお気軽に書き込んでください。

主な参考論文

Gilly,M.C., Graham,J.L., Wolfinbarger,M.F., & Yale,L.J. (1998). A dyadic study of interpersonal information search. Journal of the Academy of Marketing Science, 26, 83-100.

Richins,M., & Shaffer,T.R. (1988). The role of involvement and opinion leadership in consumer word-of-mouth explicit. Advances in Consumer Research, 15, 32-36.

Solomon,M., Bamossy,G., & Askegaard,S. (1999). Consumer behaviour a European perspective. Essex: Person Education Limited.

Wipperfürth,A. (2005). Brand Hijack: Marketing Without Marketing: Portfolio Hardcover.

消費者心理とマーケティング-口コミNo4-

消費者心理とマーケティング-口コミNo4-を取り扱います。

1. 口コミ効果の個人差

口コミによる影響の受け易さには個人差があると言われています(e.g., Bearden, Netemeyer, & Teel, 1989)。

2.口コミの有効なケース:個人的要因

Mourali Laroche Pons 2005)によると下記の4点によって口コミの有効度が影響を受けるとされています。

(1)他人(準拠集団)からの影響の受け易さInformational susceptibility to interpersonal influence(e.g., Bearden & Netemeyer & Teel, 1989)

他者から情報を欲しいという観点(情報的影響 )での(重要な)他人(準拠集団)からの影響の受け易さが高いほど口コミの影響を受け易い。つまり(不確かな情報下で)他人から情報を求める傾向がある人ほど口コミの影響を受け易いということです。例えば、技術的な違いがまだ確かでない液晶テレビの購入にあたって液晶テレビに詳しい友人から情報を得ることを好むタイプの人と好まないタイプの人がいます。情報を得ることを好む人ほど口コミの影響を受け易いということです。

(2)自分に対する自信Self-confidence

自分に対して自信を持っている人は口コミをより使用する傾向にあります。ただし、Mourali et al 2005)も認めているようにリサーチ自体の数は少なく結果も一致していませんArndt, 1967; Kiel & Layton, 1981)ので注意が必要です。

(3)Need for cognition(Cacioppo, & Petty, 1982, sited in Mourali et al, 2005)

情報を収集(処理)したりする傾向には個人差があります。人によっては口コミを含めて情報収集(処理)が好きな人もいますが、人によってはそのような情報収集はせずに過去の経験等に頼った意思決定を行う人もいます。

(4)製品知識

製品知識が乏しい人ほど口コミに頼る傾向があります(Beatty, & Smith, 1987; Kiel, & Layton, 1981)。ただし、まったく他人に聞くことさえできないような乏しい知識の際は口コミを含めた情報検索の程度は減ると思われます(Beatty, & Smith, 1987)(詳細はこちら )。

3.口コミの有効なケース:状況的要因

(1)知覚されるリスク(perceived riskArndt, 1967

知覚リスクとは購買に伴って生じうるロスのこと(Peter & Ryan, 1976)。具体的には、金銭的リスク(例、値段の高い商品)、機能的リスク(例、ハイテクで複雑な商品)、物理的なリスク(例、薬、医療)、社会的リスク(例、服、宝飾品、車、家)、心理的リスク(例、高価な贅沢品)などがあげられています(Solomon, Bamossy & Askegaard, 1999)。(詳細はこちら

4.応用

(1)口コミの効用と情報探索の程度との関係

以前取り上げた情報探索の程度の議論(詳細はこちら )と今回の要因は重複している部分があります。情報探索の程度の議論は、過去の消費経験など記憶からの情報の探索である内部探索Internal search)を使用するか、マスメディア(テレビCMなど)や口コミなど記憶以外の情報源からの情報の探索である外部探索External search)を使用するかの議論でした。

上記のNeed for cognition、製品知識、知覚されるリスクは内部探索(Internal search)を使用する際の要因と一致しています。内部探索は口コミ以外にテレビCMなども含む概念です。それでは口コミの使用とテレビCMの使用を分ける要因は何でしょうか?今回の議論の枠組みでは(重要な)他人(準拠集団)からの影響の受け易さということになります。

《注意》テレビCMと口コミの効果に関してはより深い議論が必要なので他人(準拠集団)からの影響の受け易さが全ての要因と思わないように注意してください。

(2)マーケティングへの応用

今回の目的は前回までに取り上げた以外の要素(Need for cognition製品知識知覚されるリスクなど)を紹介することでした。特に知覚されるリスク度によって情報探索の程度が変わるという概念は非常に重要だと思われます。そこで最近、口コミが重要な商品で知覚されるリスクに関連するものを考えて下さい。私の思いついたものは下記の通りです。

A)女子高生のファッション

(一部の)女子高生にとってファッションは(知覚されるリスクの)社会的リスクが高いものだと思います。つまり、前回取り上げた価値表現的影響(こちら とも関連すると思われますが、(一部の)女子高生にとってファッションは仲間との結びつきを表すものであると考えられます。よって仲間内でファッションに関する(口コミによる)情報交換が密接に行われていると思われます。女子高生以外にも同一のサブカルチャーに属しているメンバーが同じファッションをするグループには同様のことが当てはまると思います。

B)薬

薬とは効果は分かりにくく、しかも誤った薬の飲んだ時のリスク(物理的なリスク)も高い商品です。その為、なかなかプライベートブランドは定着しにくいと言われている商品でもあります。風邪薬などで良く利く薬などが会社や学校の仲間内で広まっていることはありませんか?私の場合は大学時・社会人時ともありました。多くの人が充分な製品知識も持っている訳でもありませんので、他人の話(実体験)を聞き入れ易い傾向のある商品と言えると思います。

注意;この欄(4.応用)は私の個人的見解(仮説)で過去のリサーチなどに基づくものではありません。

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主な参考論文

Arndt,J. (1967). Role of product-related conversations in the diffusion of a new product. Journal of Marketing Research, 4, 149-157.

Bearden,W.O., & Netemeyer,R.G., & Teel,J.E. (1989). Measurement of consumer susceptibility to interpersonal influence. Journal of Consumer Research, 15, 473-481.

Beatty,S.E., & Smith,S.M. (1987). External search effort: An investigation across several product categories. Journal of Consumer Research, 14, 83-91.

Kiel,G.C., & Layton,R.A. (1981). Dimensions of consumer information seeking behavior. Journal of Marketing Research, 233-239.

Peter,J.P., & Ryan,M.J. (1976). An investigation of perceived risk at the brand level. Journal of Marketing Research, 13, 184-188.

Solomon,M., Bamossy,G., & Askegaard,S. (1999). Consumer behaviour a European perspective. Essex: Person Education Limited.

消費者心理とマーケティング-口コミNo3-

消費者心理とマーケティング-口コミNo3-を取り扱います。

1.準拠集団 (Reference group)とは

準拠集団とは個人の行動に大きな影響を与える個人またはグループですBearden & Etzel, 1982)。つまり、個人の判断の拠り所となる集団であり、口コミ情報の発信先になりやすいと言えます。

2.準拠集団(Reference group)の商品・ブランド選択への影響

(1)準拠集団の与える影響Park & Lessig, 1977

前回取り上げた内容の復習です(詳細はこちら をご覧下さい)



A)情報的影響(Informational influence

情報を求めるために準拠集団の影響を受ける(口コミを信じるなど)

B)実用的影響(Utilitarian influence

他者の期待に応えるために準拠集団の影響を受ける(他者(親など)の言うことを聞くなど)

C)価値表現的影響(Value-expressive influence

他者の価値観の影響を受けることで準拠集団の影響を受ける(口コミを信じるなど)

(2)上記のPark Lessigの議論 (1977)の意味Bearden & Etzel, 1982

上記の3概念は何らかの社会的相互作用Social interaction)か公衆による吟味Public scrutiny)を伴うと言うことです。分かり易く言うと、何らかのコミュニケーション他者の観察を伴うことによって準拠集団は影響を与えることができると言うことです。

ここから言えるのは、コミュニケーションされやすい・他者から観察されやすい商品・ブランドであるか否かというのが準拠集団の商品・ブランド選択へ与える影響の程度を決めるということです。

(3)Bearden Etzelのリサーチ(1982

製品が人前で公開されるパブリックと公開されないプライベートの軸と必需品贅沢品という軸で製品群を下記の4つに分け、それぞれ商品選択への影響及び(商品の中の)ブランドの選択への影響を調査しました。

A)パブリック+必需品(例、時計、(女性用)カバン、値段の高いコーヒー:スターバックスなど)

製品選択;準拠集団の影響は弱い、ブランド選択;準拠集団の影響は強い



B)パブリック+贅沢品(例、高級車、ヨット)

製品選択;準拠集団の影響は強い、ブランド選択;準拠集団の影響は強い

C)プライベート+必需品(例、マットレス、まな板)

製品選択;準拠集団の影響は弱い、ブランド選択;準拠集団の影響は弱い

D)プライベート+贅沢品(例、高級家具、食器洗い機)

製品選択;準拠集団の影響は強い、ブランド選択;準拠集団の影響は弱い

《注意》

具体例は私の主観によって変えました。

(4)Bearden Etzelのリサーチ(1982)の解釈

A)パブリックとプライベート

人に観察されるパブリックの場合はブランド選択に関して他人の意見に影響され易いが、人に見られる可能性が低いプライベートの場合はブランド選択に関して他人の意見に影響されにくい。

B)必需品と贅沢品

必需品に関しては商品選択に関して他人の意見には左右されにくいが、贅沢品に関しては商品選択に関して他人の意見には左右されやすい。

2.応用

商品と特徴と準拠集団の影響を受け易さの関係を取り上げました。それでは口コミマーケティングを仕掛ける際にどのような手段が考えられると思いますか?

(1)選択する戦術(口コミなど)の決定

自社の製品がパブリック/プライベート、必需品/贅沢品のいずれかを考慮することで準拠集団を利用した口コミマーケティングの効果が出やすいかを事前に判断し選択する戦術(口コミなど)を決定に利用することが可能だと思います。

(2)必需品である商品の高級化したカテゴリーを売り出した場合は口コミが有効に変わる

スターバックスはテレビCMを利用しない代表的な例です。スターバックスはアメリカや日本においてどこで飲んだ(買った)かについて他人に誇示することのない(プライベートかつ必需品)コーヒーを金銭的に手に抱えているコーヒーカップを他人に見せると嬉しい気がするパブリックかつ必需品)コーヒーに変えたと思います。

従来の伝統的なコーヒーチェーン店において口コミ戦術は有効ではなかった(一部の本当に美味しい店は別)が、パブリックな商品と言うようにカテゴリーが変わった瞬間、口コミが非常に有効な商品になったと思います。スターバックスのロゴ入りのコーヒーカップを手に颯爽と銀座や新宿を歩く女性の心理はクールなイメージの自分を他人に見せたいという気持ちが働いているケースも少なくないと思います。スターバックスの現在の世界中での展開を見ると明らかにスターバックスのマーケティング戦略の成功だと思います。

(3)スターバックスと競合の違い

同程度の値段の高品質のコーヒーを売り出す競合ブランド(店舗)が都内を中心に最近は出てきましたがスターバックスほどの影響力は未だ持てていないと思います。具体的には口コミは有効な業態(パブリックかつ必需品)だが成功し切れていないということだと思います。スターバックとの違いはどこにあるのでしょうか?

店作りの違い(例、パーソナルスペースの考え方)もあると思いますが、最大の原因は一番手とその他の違いだと思います。次回に取り上げる予定ですが、商品知識は口コミの有効性を決める大きな要因の一つです。

スターバックスが一番手としてアメリカや日本に登場した時は、ほとんどの人にとって初めて見る形態のコーヒーショップだったと思います。そのためどのようなタイプの店かも分からず自分より良く知っている人(先に飲んだ人)の(自慢)話を聞きたくなったり、並んでいる顧客を見て興味を引かれ易くなります。一方、先にスターバックでコーヒーを飲んだ人は当然、他人に話したくなると思います。

一方、二番手以降のブランドはスターバックスによってどのようなタイプの店か分かっているため、スターバックスほどの新鮮な驚きを与えるのは非常に困難となってしまい、口コミの広がりも限定的となっていると思われます。

注意;この欄(2.応用)は私の個人的見解(仮説)で過去のリサーチなどに基づくものではありません。

主な参考論文

Bearden,W.O., & Etzel,M.J. (1982). Reference group influence on product and brand purchase decisions. Journal of Consumer Research, 9, 183-194.

Park,C.W., & Lessig,V.P. (1977). Students and housewives: Differences in susceptibility to reference group influence, Journal of Consumer Research, 4, 102-110.