ナイトクルージング体験
こんにちは。複雑系自営業者のコンプレクソロジストです。ごきげんいかが?
先日「高いリスクを取る人だけが見ることを許されたものが存在している」 というお話をさせていただきました。
家の中で登山を楽しむことは出来ません。
どうしてもヘビやクマや娘さんの心のように激しく変化する天気が存在する危険な山に出かける必要があるのです。
しかし私は危険な要素が満載の場所に行く時は尻込みをしてしまう。これはもう性分みたいなもんです。
私は20才のときに上京し、年商60億円(!)の会社の経理部に配属されました。
いろんな経緯がありましたが、最終的に私は社長の鞄持ちのようなことをやらせていただき、その時の経験は今でもとっても役に立っていると思います。
とにかく社長に密着していますから、とってもかわいがってもらいましたし、いろんな所に連れて行ってもらいました。
銀座のものすごいクラブとか・・・私は隣に座った女性に聞かずにはおれませんでした。
「すみません、このお店って座っただけでだいたいどのくらいお取りになるんでしょうか?」
「8まんえん」
へーーへーーへーーみたいな (`Θ´)
こういう世界を見せて頂いたこと、今でも本当にすごく感謝しています。
なんというか、まるで時間が止まったような不思議なふわふわした感覚を覚える世界でした。
社長は友人達(これまた濃い面々)と連名で船を一隻所有していました。
船といってもそんなに巨大なものではなくて、8人くらいで操縦するヨット。
つまり帆に風を受けて進む船です。
それでも家一件分くらいのお金がかかるらしいし、維持費がとにかくすごいんだって経理部長がボヤいていましたが(笑
私はレースの際にヨットに乗せてもらうことになりました。
皆さん道楽でやっているわけですからレースの成績はたいしたことありませんが、それでも船を前に進めるのってものすごく大変なことなんだなと感じ入ります。
船ってのはギザギザに進むもののようで、そのたびにメインマストを左右に移動させる大変な作業が必要だったり、船首にあるサブの帆を出したり・・ひっこめたり・・そりゃもう見ているだけで疲れるくらいの重労働です。
舵を握る人は船舶免許が必要ですが、社長はこの免許を持っていたのでそんなに大変じゃない(笑
船尾で舵を操作する人がマストの担当者にビシバシ命令を繰り出すのです。
それでもみなさん本当に楽しそう。
船を操作すること自体が楽しいんだろうなと思いました。
私はなにも出来ませんので、船が傾いたときにオモリになるために左右に移動していただけ(笑
ちなみに私は海洋民族の血を引いているため、船で酔うということがまずありません。
(母が沖縄で生まれ育ちました)
多分、これまで一度も船酔いはしたことがないと思います。
しかし、バスでは簡単に酔います(笑
とても天気が良くて、風もきもちいいし、私もとっても楽しい思いをさせていただきました。
レースが終了してプチ宴会のようなものがはじまりました。
(ちなみに社長は人間とは思えないほど酒が強い・笑)
アルコールが入ったクルーのメンバーは突然・・
「ナイトクルージングをしよう」
っていうノリになってしまったんですね。
私はなにも作業していないけど、慣れない環境で相当にクタクタです。
私は正直言って気がすすまないものの、完全に「おまけ」ですから選択に関与することはできません。
そんなわけで真っ黒な海に向かってGO!!(`Θ´)ヨーーーソローー
ところでプチ宴会の際に、社長達はとっても有名なボートの選手と知り合って仲良くなっていました。
この方は日本で5本の指に入るくらいのテクニシャンらしいんですが、ここでは仮にこの方を「橋本さん」とさせていただきます。
実は敢行されたナイトクルージングも、このテクニシャン橋本の
「みなさん筋がいいですよ!もしチャンスがあれば私、教えてさしあげます」
っていう余計なお世話から発展したものです。
だったら今教えてもらおうぜ!みたいなノリね。
多分、これって余裕で定員オーバーなんですけど、海の男たちにとっては些細なこと。
しかもきっと飲酒運転ってのもダメですよね。だけどやっぱり海の男にとっては些細なこと。
夜の海は神秘的でした。
とにかく真っ黒なんですが、夜光虫(海ほたるってやつ)が船にぶつかってきらきらと光る様子がとっても美しいんです。
自分がどこにいるのかさえよく分からない。スピード感も全くありません。
そしてなにより、星が美しい。
「船乗りはね、ラム酒だよ!!」
とかっていうわけのわからないリクツで、いつもなら一切口にしないくせに全員がラム酒のボトルを手に持っています。
社長がモーターボードじゃなくって、ヨットを選んだ理由がわかるなぁ・・・
ただ海が好きなんじゃなくって、そこにロマンを求めているんですね。
全員がかなり酔っぱらった状態ながらも、テクニシャン橋本は全員にびしびしコツを教えていました。
「もっと風が孕めるはずだよ!そうそう、その張りが大事なの!」
私はそれを見ながらなるほどーって思いましたね。確かに昼見た帆の張りと全然違う。
そんなこんなでいったいどこまで行ったのやらさっぱり分かりませんが、とにかく3時間くらい船は進み続け、引き返すことになりました。
テクニシャン橋本は私の目の前を千鳥足でうろうろしています。この人も相当飲んでますよ(笑
そして船が傾いた刹那・・・
どばっしゃあああああ!!!
うああああ橋本が落ちた!!!!(`Θ´;)
私から1メートルの距離で、テクニシャン橋本が海に転落!!!
社長 「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
私は後にも先にもあんなに焦る社長を見たことがありません。やばい職業の人がおしかけてきても、子会社の社長が夜逃げしても常に冷静だったかっこいい社長。
しかしこの時ばかりはなんとも意味の分からない叫び声を上げていました。
テクニシャン橋本はさすがテクニシャンだけあって、転落する直前に船のロープを掴んでいたんです。とりあえずすげぇや!!
そんでですね、真っ暗だから今まで全く気づきませんでしたが、この船、どえらいスピードで進んでいたらしくて・・・
ロープを掴んでいるテクニシャン橋本は、船に対して完全に平行な状態で引きずられているではありませんか。
足は海面に届いていて、ものすごい水しぶきをあげています。
そう、つまり真横に・・・一文字の状態でシュババババババって・・・
社長 「うおおお!!!うおおおおお!!!うおおお!!」
相変わらず意味が分かりません。
そして1メートルの距離で・・・目の前で体育座りしていた私は・・・・
(゜Θ゜) ポケーーー
放心!!!心を解き放った!!!
まぁ現実味がなかったっていうことなのかもしれませんね。
とにかく私は微動だにしませんでした(笑
ごめん、テクニシャン橋本!!
今考えると私が手出ししなくて正解ですが・・・
私は体育座りのまま、そして恐らく極めて無表情なままテクニシャン橋本が自力ではい上がる様子を眺めていました。
あーたいへんだなー (゜Θ゜) ポヘェー
そんなこんなで恐怖のナイトクルージングが終了し、帰りの車の中で私は社長に質問をせずにはいられませんでした。
「あの方って、すごい人なんですよね。」
「まぁ・・・そうなんだけどねぇ・・・」
「あれって、あのまま落ちてたらどうなってたんですか?」
「まぁほぼ間違いなく死んでたと思う・・・」
おいおい・・(`Θ´)
酔っぱらって定員オーバーでクルーズするような連中ですので、当然のごとく格好悪い救命胴衣なんて着用してません。
ヨットで引き返すってのは難しいらしくて、夜のクルーズで落ちたらまず助からないのだそうです。
「だけど、落水なんてのは本当、めったにないんだよ。またレースするときは連れてってあげるから。」
誰が行くか!!
というわけで私のヨット初体験はそのままトラウマとなり、二度とお誘いに応じることはありませんでした。
私が考える遊びのリスク・・・それは死です。
操縦を体験させてもらったら私はまた行っていたかもしれません。きっとそのくらいの魅力があるスポーツなんだろうな・・・
だけど、私はもう二度と帆船には乗らないと思う (`Θ´)ムリ