看護婦さんが高齢の患者さんに問診しています。
「おばあちゃん、きょうはどうしたの」
「足が痛いの」
「足が痛いの?どの辺が痛いの?」
高齢者に対する言葉と、小さい子どもに対する言葉と、あまり大差ありません。タメ口ではなく、あきらかに年下の、いえ幼児に話しかけるかのよう。
まるで高齢者が孫に接するのと変わらない接し方を、大人である患者さんに対して実践している看護婦さん。
病院に行くと、よくある風景ですが、耳にするたびに違和感を持ってしまいます。
人間は年を取ると子供に戻るといいます。
確かに背も縮み、物覚えも悪くなり、目も耳も機能が低下してきます。
けれど、脳まで子供に戻っているのかどうか。分かりません。
たとえそうだとしても、人生の先輩を子供扱いするような言い方は、相手の尊厳を損なうでしょう。
「高齢者には子供に話しかける口調で安心感を与える」というルールでもあるのでしょうか。
もし自分の親が、看護婦さんに子供扱いされていたら、私は悲しくなります。
本人も同じだろうと思います。
もちろん、患者さんのほうから「何度も通っているのに敬語はよそよそしい」と言われるなら仕方がありません。
が、基本的には、人生の先輩に敬語で話すのは当然です。
安心感を与えたいのなら、ため口や幼児に話す口調で接するのではなく、優しい笑顔や、言葉のテンポ、イントネーション、雰囲気などを工夫するほうがよいでしょう。
■前田めぐる■