ネタバレです。OKの方のみどーぞ。(前回
)
Chapter2 ちょっと可愛いかも1~10
1
今日はひとりで登校。
先輩がバイトの時は、たまにある。
そして、こういう時は絶対といっていいほど先輩は遅刻する。
「先輩、間に合うといいけど」
???
「おはよう、○○ちゃん。心配ありがとう」
「!!」
彩人
「おはよう。間に合ったよ。」
「あはは・・・。おはようございます。良かったです」
聞かれちゃった・・・・・。
まあでも、遅刻しないで来てくれて良かったかも。
今日は須賀くんが門の前に立ってたから。
彩人
「校舎まで一緒に行こうか」
「はい!」
先輩の誘いに元気よく答えた直後。
秋夜
「あれ、あやさんだ」
隆
「ホントだ!○○先輩もいるーー!」
私たちに声をかけてきたのは桜庭くんと結城くん。
ふたりで一緒に登校してきたのかな?
2
彩人
「おはよう、転校生くん。元気くん」
隆
「もう、結城ですってば!」
彩人
「ああ、そうだったね。おはよう、結城くん」
隆
「へへっ。おはようございます」
なんていうか、このやりとりって、もう挨拶みたいなものに
なってるのかな。
秋夜
「・・・・・・・・・・・・・」
秋夜
「・・・・・俺の名前も転校生じゃないんだけど」
そのやりとりを見ていた、桜庭くんがボソッと呟く。だけど。
彩人
「なにかな?なにか言ったかい?転校生くん」
転校生と強調したような言い方に、桜庭くんの表情が変わった。
秋夜
「怖」
彩人
「なにかなー?」
秋夜
「なにもないよ」
「あははは」
そういえば最近、先輩は結城くんを名前で呼ぶようになった。
それってきっと先輩の中で、結城くんが認められたってことなのかな?
3
だって前に先輩は・・・・。
彩人
『僕は気に入った人間や自分が認めた人間じゃないと名前で
呼ばないんだよ』
ーーっていってたから。
きっと、結城くんのとこを認めたんだろうなあ。
・・・・・・・ということは、桜庭くんと須賀くんはまだってことなのかな?
・・・・・・・・・・・・・。
このこと、ふたりには言わないでおこう。
隆
「じゃあみんなで校舎まで行こうー!」
結城くんの元気な声にハッとする。
私が色々と考えている間に話が進んでいたみたい。
そうして校舎まで歩こうと、全員が校舎へと足を向けたと同時。
秋夜
「そういえばさ」
桜庭くんが話し出した。
秋夜
「伊勢がまた、面白い企画を提案したってさ」
秋夜
「内容、聞いた?あやさん」
彩人
「・・・・・・・・・・」
その言葉に彩人先輩の足がピタっと止まる。
そしてこれ以上ないほど、優しく笑みを浮かべ、
桜庭くんに問い返した。
4
彩人
「知らないなあ。君は知っているのかい?」
!!!!
微笑だけならまだしも、声色まで優しくて・・・・・。
ちょっと私もビックリしてしまった。
秋夜
「あ・・・・知ってるんじゃ・・・」
彩人
「・・・・・・・・さあ」
・・・・・・・きっと知ってるんだろうけど。
言いたくない、考えたくないんだろうと察した。
どうも先輩は副会長の伊勢くんのことになると機嫌が
悪くなるらしい。
彩人
「さあ、言ってごらん。秋夜、聞いてあげるから」
「!?」
隆
「わっ」
秋夜
「ちょ・・・あやさん!痛っ、痛いって!」
彩人先輩は秋夜くんのあごの下に手を入れてグッと
力を入れた。
5
そして持ち上げるようにして、彼に優しく声をかけた。
彩人
「おおげさな子だなあ。そんなに力は入れてないよ?」
先輩にとってはそうかもしれないけど、
これ・・・・はたからみたら首をしめてるように見えてるような気がする。
いや、見えてる。
私からはそう見える。
手の位置はのどではなく、耳の下に指は入ってるんだけど。
隆
「綾瀬川先輩ー!秋夜先輩が死んじゃう~」
彩人
「大丈夫大丈夫。僕も犯罪者にはなりたくないから、
それは大丈夫」
結城くんが彩人先輩の腕にすがりつくように下ろしてと頼むけど、
先輩は笑って結城くんの訴えをスルーしていた。
当事者の桜庭くんはすごく痛がっていて、先輩の腕を叩いている。
「先輩、あの、そろそろ離してあげた方が・・・・」
彩人
「ん?」
「予鈴も鳴っちゃうし」
彩人
「ああ、そうだね。じゃあ君は先に教室に行ってて」
彩人
「秋夜はあとで届けるから」
「・・・・・・・・・!」
届ける・・・・・?
6
秋夜
「ちょ!モノみたいに言うのやめてよ!」
彩人
「うるさいよ」
秋夜
「あ、ちょ・・・・痛っ!」
どうしよう・・・・、私では止められないかも。
誰か・・・この事態を解決できる人は・・・・。
「あ・・・・」
少し離れた門の前、須賀くんを見つける。
須賀くんは私が視線を送ると、手のひらをこちらに見せて、
頭を振った。
そして私に背を向け、門の外へと出てしまった。
無理、ってことかな。
はあ・・・・・・。
隆
「うわーん、綾瀬川先輩、ストップー!」
秋夜
「あやさん、ごめんって!悪かったよ。伊勢のことは
もう言わないから!」
彩人
「あはははは。なにを言ってるのかな?伊勢がどうかしたかな?」
どうしよう、これ。
絶対チャイムが鳴っても続くような気がする。
須賀くんも無理そうだし、ここは・・・・・・・。
ダメもとで止めるしか!
7
「彩人先輩っ」
そして先輩に近付いて、その腕に手をかけた時。
皐
「いい加減にしてくださいよ、彩人さん」
千歳
「そうですよ。彩人くん。もう授業始まっちゃいますよ」
咲坂くんとおにいちゃんが校舎から出てきてくれた。
彩人
「・・・・・・・・・・・・」
彩人
「・・・・・・・・・・・」
彩人
「仕方ないね」
ふたりが出てきてくれたおかげで、桜庭くんは解放されて
事なきを得た。
だけどーー
彩人
「転校生くんはあとで話があるからね」
秋夜
「え」
まだ事はおさまっていなかったらしく、先輩は桜庭くんの
腕をがっちり掴んでいた。
8
とある日の昼休み。
屋上で先輩とお昼ご飯中。
先輩と一緒というのも嬉しいけれど、それ以上に今日は
嬉しいことがあった。それはーー
「先輩、聞いてください!午後の授業、全て自習なんです!」
彩人
「へえ、珍しいね。ああ・・・だから浮かれてたんだね」
「はい!なにしようかと」
彩人
「自習なんだから、勉強だよね?」
「あははは」
そう、どういうわけか午後担当の先生はみんなお休みで
自習になった。
代わりの授業を、とどうにかしようとしていたみたいだけど
結局空いている先生が見つからずに自習ということになった。
彩人
「ああ、ごめん。そんな時に悪いんだけど」
「?なんですか?」
彩人
「今日、進路指導があるんだ」
彩人
「だから今日は先に帰ってくれる?」
「あ、でも進路指導だけなら待ってます。
そんなに時間かからないですよね?」
どれだけかかっても1時間くらいだろう。
そのくらいならーーと思っていると。
9
彩人
「うん。でも今日はちょっともめそうだからね」
彩人
「先に帰ってくれるかな」
「でも・・・・」
彩人
「ほら、遅くなるといけないからね」
彩人
「その方が僕としては安心だから嬉しいんだけど」
「・・・・わかりました。それなら今日は先に帰ります!」
心配かけるくらいならと、先輩の言うことを受け入れる。
だけど・・・ちょっと残念だったりする。
休みの日もそういつも会えるわけじゃなし、毎日一緒に
登下校できるわけじゃないから・・・・。
それでなくても先輩とは学年が違うからあまり一緒には
いられないし。
そんなことを思って、うつむいてると。
彩人
「そんなに僕と一緒にいられないのが寂しい?」
彩人
「それなら、君の自習の時間ーー一緒にいようか?」
「え?」
10
先輩の声に、言葉に、顔を上げた。
すごく嬉しい提案が聞こえたから。
彩人
「OK、みたいだね」
「あの・・・・」
そりゃ・・・先輩と一緒にいられるなら、嬉しいけど。
でも・・・・自習時間一緒にいるってどういう・・・。
彩人
「ふふ。不思議そうな顔をしてるね、可愛い」
「!?」
私の顔を見てそう微笑み、先輩は立ち上がる。
そしてーー
彩人
「じゃあ行こう」
私の手を引っ張った。
「え、あ、あの、行くってどこに??」
図書館、とかかな?
自習だし・・・・。
あ、でも確か教室から出ちゃダメだったはずだけど。
彩人
「デート」
「デー・・・・」
デート!?
彩人
「ふふ。街にデート、だよ」
「ええー!?」