フォーシーズンズでのランチと、カリフォルニア版鶯宿梅—ハチドリの「宿は?」と問はば… | COCOのおいしい話

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突然ですが。「鶯宿梅(おうしゅくばい)」とは…。

村上天皇の頃、清涼殿前の梅が枯れたので紀貫之(きのつらゆき)の娘紀内侍(きのないし)の家の梅を移植させたところ、枝に「勅なればいともかしこしうぐひすの宿はと問はばいかが答へむ」という歌が結んであり、天皇はこれに深く感じて梅の木を返したという、拾遺集・大鏡・十訓抄に見える故事、また、その梅の木のこと。

…です。

また同名の、梅干しの果肉のペーストを茶昆布で味付けした食品もありますね。

が、今回の記事に関係あるのは、故事の方です。


我が家の東隣は隣家の広大な庭になっていました。

背の高い立派な枝振りのアカマツが中央に一本、その周り一帯に丈の短い草が生えた夕暮れの景色はまるでサバンナのようで、そこに寝そべる大きなネコを、ライオンにちなんで「リオ」と勝手に名付けたりもしました。

こちらは我が家のキッチン前の塀でくつろぐ(?)リオ。


COCOのおいしい話-鶯宿梅、リオと小屋


奥に見える小屋風の建物が、牧歌的で気に入っていました。

キッチンから木々越しに見える日の出は、特に霧の朝にはちょっとコロー風になって、大好きな風景でした。

1月のある日の朝焼け。


COCOのおいしい話-鶯宿梅、1月の朝焼け


2月のある日の朝焼け。


COCOのおいしい話-鶯宿梅、2月の朝焼け


ちょっと藤城清治の影絵のようではないですか?

アカマツの他は、アプリコットとおぼしき木が1本と、春と秋に美しい紫色の花をつけるジャカランダの木が1本、他にはブーゲンビリアや名前の知らない木が何本か、ぐるりと植えてありました。

真ん中の原っぱでは、リオとオポッサムの攻防戦を見かけた事もありました(写真は撮れませんでした)。


COCOのおいしい話-鶯宿梅、5月の庭とユーカリ


そして我が家との境の塀越しにずらりと並んだユーカリの大木は、小鳥やリスや、また私たちの目にとっても憩いの場所となっていました。

ユーカリの芳香は、雨上がりにはびっくりする程強くなるものだということも、ここに越して来て初めて知りました。


COCOのおいしい話-鶯宿梅、4月の庭と母屋


4月にはその中の一本にハチドリが巣を作り、雛の誕生からその巣立ちまでの様子を見る事が出来たのは、本当に楽しい経験でした。(ブログでもご紹介しました。→「サーモンの香味蒸しと新しき隣人」


ところが。

先月から隣で建物の解体作業が始まりました。

隣家の持ち主は相当高齢のご婦人だと言う事で、去年越して来た時から早晩売りに出されるだろうと噂には聞いていたのですが。

どうやらとうとう売却され、アパートと家が建つ事になったらしいのです。

そして先週、朝の7時からチェーンソーの音も賑やかに。

木々の切り倒しが始まりました。

19日の金曜日の夕方までには、中央のアカマツと私たちのベッドルームの窓のすぐ外の、例のハチドリのユーカリを残して、全ての木が切り倒されてしまいました。

作業員が去った後の夕暮れの中、切り倒された木の枝に小鳥がとまっていました。私には途方に暮れているように見えました。

土曜日の朝、残った2本の木にもチェーンソーが入りました。

悲しいのなんの! そしてウルサイのなんの!

この二つから逃れようと、夫と私はサンタバーバラまでドライブに出掛けることにしました。

サンタバーバラはロサンジェルスの北西に位置する海岸の町です。私たちの家からだと車で1時間半くらい。

風光明媚な勝景地で、別荘やリゾートホテルが多く、また定年退職後にここに移り住む人も多いそうです。

残念ながらこの日は朝から小雨が降ったり止んだりで、終日晴れ間の見えない一日になりましたが、それでも…。


COCOのおいしい話-鶯宿梅、FSH、海


フォーシーズンズホテルで庭や海を眺めつつ、波のくだける音を聞きながらランチを食べているうちに、少しずつ気分も和らいで来ました。


COCOのおいしい話-鶯宿梅、FSH、植物


シーフードとチキン、ベーコン、ゆで卵、ブルーチーズが入った盛り沢山のサラダと、トマトソースのニョッキを二人でシェアしました。


COCOのおいしい話-鶯宿梅、FSH、ランチ
*Lunch at The Four Seasons Hotel: Seafood Cobb Salad & Ricotta Gnocchi*

このサラダ、これで二分の一人前です。


COCOのおいしい話-鶯宿梅、FSH、サラダ


エビは火の通り加減が絶妙でおいしかったのですが、どうしてアメリカ人はカニをゆでる時、親の仇とばかりに塩をブチこむのでしょうか…?

大きなマシュマロそっくりに見えるリコッタチーズ入りのニョッキは、ドライドトマト入りの、味の濃いトマトソースがおいしかったです。


COCOのおいしい話-鶯宿梅、FSH、ニョッキ


でも、これも半分でもたっぷりの分量で…。

デザートも食べたかったので、このニョッキは残してお持ち帰り用に包んでもらいました。

「アプリコットのハチミツ煮、アマレットアイスクリーム添え」と迷ったのですが、結局夫の意見を容れて…。


COCOのおいしい話-鶯宿梅、FSH、ジェラート
*Tiramisu Coppa Gelato*

「ティラミスジェラート、マルサラ酒風味のサバイヨンソースがけ」を頼んだのですが。

コーヒー風味のアイスクリームは固めで、入っているチョコレート生地のスポンジがちょっと多過ぎて、モソモソする舌触り…。

満腹の身には、喉の通りが悪かったです。

それでもサービスは丁寧だったし眺めはいいし、ゆったりと楽しんで食事が出来ました。

この後はコテージの周りのお庭を軽く散策したり、ミニチュアパターゴルフをしたりして、本当に気持ちのいい気分転換になりました。

今度はお天気のいい日に、是非また来なくっちゃ。


今、お隣はこんな状態です。


COCOのおいしい話-鶯宿梅、荒野の果て


思ったより、ずっと広い敷地だったのですね。

一体どれだけの小鳥や小動物が、住処や餌場を失ったのでしょう。

リスは相変わらずこの辺りで頑張っているようですが、土曜日から、毎日聞こえていた鳥の声が全く聞こえなくなりました。

…と思ったら、今日、火曜の夕方、かすかなさえずりが聞こえました。

きっとみんな、どこかあまり遠くない所に居場所を見つけて、元気でやっているんだと思います。

でも…。


COCOのおいしい話-鶯宿梅、ハチドリ


来年の春に、このハチドリの夫婦やその子供たちが帰って来て、「私の宿は?」と尋ねたら。

私にも答えようがありません。

いつの事になるかは全く分からないけれど、この空き地に、また木や草花でいっぱいの、素敵なお庭のある家が建った時には。

小鳥や動物たちとも再会出来るでしょう。

どうぞきっと、その日が一日も早く来ますように。






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