「インプロする組織」が思いのほかよかったので、内容を紹介したいと思います。出版社 三省堂さんのサイトでは、目次や本文の一部をPDFで見ることができるようです。

この本自体は、本の紹介文「今、なぜ、組織開発・人材育成に『インプロ=即興演劇』なのか。さまざまな組織・企業で導入され始めたインプロ研修の実際を紹介」にあるように、組織開発・人材育成の側面からインプロやインプロ研修を解説しています。

私は、インプロ(インプロビゼーションの略:Improvisation、即興演劇)を受けたことが2回あって、組織開発・人材育成に活用できるし、創造性開発もできるんじゃないかな、と興味を持っていました。

過去の記事:
企業の中でインプロを活用するには?(イルカの調教ゲーム)
インプロ:「大人の振る舞い」とイノベーション

そういう背景から読むと、この本は既にインプロを知っている人でも、改めてインプロと人材育成との関係が整理できるのでおすすめだと思いました。

インプロを全然知らなくて、「即興演劇?!はあ?何それ?」という人にも、インプロ研修を書き起こした3章があるので、安心して読めると思います。
ただ、逆効果もあります。紙の上であれ一度読んでしまうと、人はとても賢いので想定が頭の中にできてしまい、純粋な初体験の衝撃が得られないかもしれません。だから、紙の上で知るよりも前に体験してみることを強くおすすめします。

で、読んでみて私がいいと思ったところはたくさんありますが、3つに絞りました!

(1)パフォーマティブ・ラーニング
からだのずれから気づく学び。泣いているから自分は悲しいんだと気づくように、からだを使ってみて、自分をもう一度ふりかえることから起きる学びです。

ーーー引用 ここからーーー
からだには主体としての面と、物としての面があります。(中略)主体としてのからだと物としてのからだは、ときに、ずれることがあります。(中略)そのとき、からだはずれを戻し、同一性を回復しようとします。
このずれが、リフレクションやコミュニケーション、創造性の源泉であると私は考えています。(略)ずれているときに人はふりかえって考えます。(略)ずれを統合するために、今までに思いついたことのないことを新たに創造したりもします。
パフォーマンスすることで自分を崩し、そして再びつくっていくこと。それを私は学びととらえたいと思っています。そして、そのような学びを私はパフォーマティブ・ラーニングと名づけたいと思います。
ーーー引用 ここまでーーー


(2)インプロで奇跡を起こしやすくする7か条
高尾先生と中原先生の対談のしめくくりにあたるところです。インプロをよく知っている人、研修に取り入れたいと思っている人はここを改めて読むだけでもこの本の価値があると思います。
1.メンバー構成
2.いい失敗のしかたをする
3.新しいチャレンジをいつも取り入れる
4.常に外部の風を入れる(関係性を固めない)
5.正直でいいフィードバックを与え合う
6.メンバーが笑顔で楽しそうかどうかをみる
7.お客さんとの関係性をつくり変える

私は企業での知識創造をイメージして、「1番目:メンバー構成」を以下に引用しました。

ーーー引用 ここからーーー
インプロで奇跡が起きやすくなるために、第一に考えていることはメンバー構成です。メンバーがあまりに同質的だと触発が起こりませんし、補い合うこともできません。
ーーー引用 ここまでーーー


新しいプロジェクトにどんなメンバーを集めたらよいのでしょうか?何か変化を起こしたいとき、あまりに同質的だと変化は起きにくいです。どんなメンバーを入れたら、チームは揺さぶられ、変化を受けそうですか?いつも忘れないようにしたい大事なことだと思います。

人材育成研修やワークショップをイメージして1つ選んだのは「5番目:正直でいいフィードバックを与え合う」です。

ーーー引用 ここからーーー
公演がおわったあとにはいつもメンバー全員で集まってふりかえりをしていますが、そこには三つのルールがあります。「十五分以内にする」「思ったまま、感じたままを言う」「議論しない」です。
ーーー引用 ここまでーーー


ここに、すごいヒントが隠されていると思いました。
思ったまま、感じたままを言って、議論しないから、正直にフィードバックが出せる。そして、あんまり長く話してしまうと、ふりかえりがつらくなる。いわなくてもいいことまでつくりだして言ってしまう。だから、短時間。


(3)ワークショップの起源は「小さい場所」だった
最近、氾濫するようになったワークショップ。意味をもう一度考えたいなーと思っていたときにちょうど出会ったのが以下の言葉でした。

ーーー引用 ここからーーー
ワーク(work)は仕事です。ショップ(shop)は、語源的には「小さい場所」という意味です。働くための小さな場所。それがもともとの意味のワークショップです。
自分を変え、社会を変えていくことは、私が働くこの小さな場所を変えることからはじまる。これが、ワークショップの起源ではないかと私は思っています。これは実は100年以上前の働く場の見直し(※アーツ・アンド・クラフツ)からはじまっているのです。
ーーー引用 ここまでーーー


私も休みたいときに休める社会をつくるために、自分で創造できる人を増やすべく、小さな場所から活動を続けます!
ワークショップが パーソナルファブリケーションとつながった瞬間でした。