人材育成においては、「健全な競争」・・・すなわち、自分自身との競争を推奨しています!
人と比べるのではなく自分と比べるのですね。

小さなところでは、研修の前と後です。
研修前に知らなかったこと、わからなかったこと、できなかったことが変化していれば、ある程度研修の効果はあったのです!
そして、あなたは過去のあなたとの競争に勝ったのです。

では、もっと前の過去の自分と現在の自分を比べるにはどうしたらいいでしょう?

(1)日々の記録を読み返そう
日記や日誌、週報や月報を書いている人はそれが役に立ちますね。読み返してみると、過去の自分がどんなだったかよくわかるでしょう。

(2)自分の歴史をまとめよう
定期的に履歴書や職務経歴書、ポートフォリオをアップデートするのもよいですね。見直すと過去の自分だけでなく、将来やりたい方向が見つかることもあります。

えー書くのは苦手だし、何も残してこなかった・・・という人も、使えるやり方があります。
それは、過去読んだ本をもう一度読んでみることです。

(3)再読しよう
過去に読んだ本をもう一度読むと、過去気づかなかったことに気づいたり、そのときは知らなかった背景知識が増えていたりすることに気づきます。それは、あなたが成長したしるしです。

新人のときに読んだあの本をもう一度引っ張り出してみませんか?
再読したら、もちろん、新人に貸し出し or 推薦しましょう!


人が創造するとき、創造が次々生まれる瞬間を左右する要素はなんでしょうか?
創造が生まれやすくなる環境や条件というものはあるのでしょうか?

いろんなことを試してみる中で、これは面白い、可能性があると感じたことは、からだを動かすこととものづくりです。

からだを動かすことーからだのずれから気づく
私はこれまで身体をあまり使ってきませんでした。インプロビゼーションをやってみて、からだと言葉のズレや即興舞台で思いがけないことが起きるのが面白かったのです。
U理論の話を聴いたときも、ダンスセラピーの話がとても面白いなと思いました。からだを動かして表現してみることで、自分の気づかなかった面に気づくからです。

手でものをつくるー思い通りにならないことから気づく
もう一つ、自分の手を動かしてものをつくることが、やってみると、思っていたよりもずっと楽しく、面白かったのです。ものづくりは案外思い通りには進みません。やる前に書いた設計図通りにはいかないのです。けれども、思い通りにいかなくて偶然できた形が面白かったり、別のものと結びついたりするのです。

この「思い通りにいかない」→「試行錯誤する」→「偶然の面白さに気づく」をより促進する要素は何でしょうか? 私は今、それって、ユニット(Unit)の足し算ではないかと思っています。

Pekoneワークショップ
いつもフレッシュな場をつくりたい-Pekoneつなぎ方
例えば、Pekoneワークショップ。Pekone(ペコネ)は、紙でできた玩具で、三角形~六角形のユニットです。ユニットを組み合わせていくと、簡単に立体がつくれます。ところが、自分でこういう形を作ろうと頭で思い浮かべて組んでも、なかなか思い通りにはなりません。それは、Pekoneを組む操作に慣れていないこともあるし、組み合わせからできる立体を予測し辛いこともあります。

いつもフレッシュな場をつくりたい
どうして自分にとって思いがけないものができるのでしょうか?
それは、Pekoneというユニットを足し算で組み合わせていくからではないでしょうか。ボトムアップでと言い換えてもいいでしょう。

アイデア出しワークショップで、言葉をいろいろ組み合わせることがありますよね。あれも、言葉がひとつひとつユニットとなって、掛け合わされて、そこから思いがけない組み合わせが生まれ、創造につながるのだと思います。

パターンランゲージもそうです。ある作法の言葉となっており、ある単位でまとまっているからこそ、組み合わせたり、応用したりできるのではないでしょうか。




「インプロする組織」が思いのほかよかったので、内容を紹介したいと思います。出版社 三省堂さんのサイトでは、目次や本文の一部をPDFで見ることができるようです。

この本自体は、本の紹介文「今、なぜ、組織開発・人材育成に『インプロ=即興演劇』なのか。さまざまな組織・企業で導入され始めたインプロ研修の実際を紹介」にあるように、組織開発・人材育成の側面からインプロやインプロ研修を解説しています。

私は、インプロ(インプロビゼーションの略:Improvisation、即興演劇)を受けたことが2回あって、組織開発・人材育成に活用できるし、創造性開発もできるんじゃないかな、と興味を持っていました。

過去の記事:
企業の中でインプロを活用するには?(イルカの調教ゲーム)
インプロ:「大人の振る舞い」とイノベーション

そういう背景から読むと、この本は既にインプロを知っている人でも、改めてインプロと人材育成との関係が整理できるのでおすすめだと思いました。

インプロを全然知らなくて、「即興演劇?!はあ?何それ?」という人にも、インプロ研修を書き起こした3章があるので、安心して読めると思います。
ただ、逆効果もあります。紙の上であれ一度読んでしまうと、人はとても賢いので想定が頭の中にできてしまい、純粋な初体験の衝撃が得られないかもしれません。だから、紙の上で知るよりも前に体験してみることを強くおすすめします。

で、読んでみて私がいいと思ったところはたくさんありますが、3つに絞りました!

(1)パフォーマティブ・ラーニング
からだのずれから気づく学び。泣いているから自分は悲しいんだと気づくように、からだを使ってみて、自分をもう一度ふりかえることから起きる学びです。

ーーー引用 ここからーーー
からだには主体としての面と、物としての面があります。(中略)主体としてのからだと物としてのからだは、ときに、ずれることがあります。(中略)そのとき、からだはずれを戻し、同一性を回復しようとします。
このずれが、リフレクションやコミュニケーション、創造性の源泉であると私は考えています。(略)ずれているときに人はふりかえって考えます。(略)ずれを統合するために、今までに思いついたことのないことを新たに創造したりもします。
パフォーマンスすることで自分を崩し、そして再びつくっていくこと。それを私は学びととらえたいと思っています。そして、そのような学びを私はパフォーマティブ・ラーニングと名づけたいと思います。
ーーー引用 ここまでーーー


(2)インプロで奇跡を起こしやすくする7か条
高尾先生と中原先生の対談のしめくくりにあたるところです。インプロをよく知っている人、研修に取り入れたいと思っている人はここを改めて読むだけでもこの本の価値があると思います。
1.メンバー構成
2.いい失敗のしかたをする
3.新しいチャレンジをいつも取り入れる
4.常に外部の風を入れる(関係性を固めない)
5.正直でいいフィードバックを与え合う
6.メンバーが笑顔で楽しそうかどうかをみる
7.お客さんとの関係性をつくり変える

私は企業での知識創造をイメージして、「1番目:メンバー構成」を以下に引用しました。

ーーー引用 ここからーーー
インプロで奇跡が起きやすくなるために、第一に考えていることはメンバー構成です。メンバーがあまりに同質的だと触発が起こりませんし、補い合うこともできません。
ーーー引用 ここまでーーー


新しいプロジェクトにどんなメンバーを集めたらよいのでしょうか?何か変化を起こしたいとき、あまりに同質的だと変化は起きにくいです。どんなメンバーを入れたら、チームは揺さぶられ、変化を受けそうですか?いつも忘れないようにしたい大事なことだと思います。

人材育成研修やワークショップをイメージして1つ選んだのは「5番目:正直でいいフィードバックを与え合う」です。

ーーー引用 ここからーーー
公演がおわったあとにはいつもメンバー全員で集まってふりかえりをしていますが、そこには三つのルールがあります。「十五分以内にする」「思ったまま、感じたままを言う」「議論しない」です。
ーーー引用 ここまでーーー


ここに、すごいヒントが隠されていると思いました。
思ったまま、感じたままを言って、議論しないから、正直にフィードバックが出せる。そして、あんまり長く話してしまうと、ふりかえりがつらくなる。いわなくてもいいことまでつくりだして言ってしまう。だから、短時間。


(3)ワークショップの起源は「小さい場所」だった
最近、氾濫するようになったワークショップ。意味をもう一度考えたいなーと思っていたときにちょうど出会ったのが以下の言葉でした。

ーーー引用 ここからーーー
ワーク(work)は仕事です。ショップ(shop)は、語源的には「小さい場所」という意味です。働くための小さな場所。それがもともとの意味のワークショップです。
自分を変え、社会を変えていくことは、私が働くこの小さな場所を変えることからはじまる。これが、ワークショップの起源ではないかと私は思っています。これは実は100年以上前の働く場の見直し(※アーツ・アンド・クラフツ)からはじまっているのです。
ーーー引用 ここまでーーー


私も休みたいときに休める社会をつくるために、自分で創造できる人を増やすべく、小さな場所から活動を続けます!
ワークショップが パーソナルファブリケーションとつながった瞬間でした。


成長仮説(0)自分の気づかなかった自分に気づいたとき
人はどんなときに成長するのでしょうか。
成長曲線を描くとしたら、それが急カーブになるときはどんなときでしょう?

私の仮説は、「自分で、自分の気づかなかった自分に気づいたとき、人は最も成長する」でした。ここで、「自分で気づく」というのがポイントです。きっかけは人からの指摘でもよいのですが、ああそうだなぁと自分で改めて思うプロセスが大事だと思います。

だから、私がつくるワークショップのコンセプトは「自分の気づかなかった自分に気づく」でした。これまで生きてきて気づいていないことに気づこうというのですから、いろんなことを試してみるワークショップでもありました。

パフォーマティブ・ラーニング:からだのズレから気づく学び
最近出た本に「インプロする組織」というのがあります。

ちょっと引用してみます。

ーーー引用 ここからーーー
からだには主体としての面と、物としての面があります。(中略)主体としてのからだと物としてのからだは、ときに、ずれることがあります。(中略)そのとき、からだはずれを戻し、同一性を回復しようとします。
このずれが、リフレクションやコミュニケーション、創造性の源泉であると私は考えています。(略)ずれているときに人はふりかえって考えます。(略)ずれを統合するために、今までに思いついたことのないことを新たに創造したりもします。
パフォーマンスすることで自分を崩し、そして再びつくっていくこと。それを私は学びととらえたいと思っています。そして、そのような学びを私はパフォーマティブ・ラーニングと名づけたいと思います。
ーーー引用 ここまでーーー


自分の気づかなかった自分に気づくためには、いろいろな方法があります。
言葉を使ったやり方、からだを使ったやり方、両方を使ったやり方。

からだを使うことから入るやり方は、これまで言葉を使うやり方に慣れていた人にとても効果があるのではないか、そう思うこの頃です。



いきなりですが、今日の記事はワークショップやセミナーで講師をする方にお届けします。

NPO 法人EDUCE TECHNOLOGIES主催の【fʌ'n】(ファン)「写真撮影講座!"学び"の魅力を伝えよう!」に参加して、ワークショップ講師はみんなカメラマンを一度はやってみた方がいいんじゃないか、と思い始めたのです。

こんなタイトルの記事を書くようになるとは、行く前は想像もしませんでした。

ワークショップでもセミナーでも研修でもよいですが、やる側の人間になると、心配事がつきません。
次はこれをやらなくちゃ、グループワークであのグループは調子よく進んでいるけれど、こちらのグループは心配だなー、もう少し待って声をかけようか、あ、○○さんがまた携帯で呼び出されて席を外しているみたいだ、声をかけてみようか、お菓子がもうないね、そろそろ追加を頼まなくちゃ、もう1回習ったことをリビジット!リビジット!

意識は常に、前へ前へ、未来へと進んでいきます。だから、「いま、ここ」に集中することがとても大事であったりします。
カメラマンになると、視点は一転します。心配事よりもいま、ここでしか写せない素晴らしい瞬間に着目するようになるからです。
それは、真剣な表情で話を聴いている参加者の表情であったり、ふっとほぐれたりして楽しく学ぶ笑顔であったりします。熱く語る講師の様子も欠かせませんね。

カメラマンになってはじめて、どれくらい自分が人の表情、特に美しい表情に注意を払っているようでいないかがよくわかりました。
人のアップをファインダーを通してみれば、顔、表情がよくわかります。どんなアンケート結果よりも、いま、ここに表れている人の表情は、ワークショップの失敗・成功をよくうつしだしています。

カメラマンにならなくても、わかっているよ、普段、自分はよく人の表情を気をつけてみているんだという講師の方はいらっしゃるでしょう。もちろんです!
でも、カメラマンのように、上からのぞきこんだり、下から見上げたり、前後左右に動きながら人に近づいたり、はしにくいのではありませんか?

プロの写真家 見木先生の名言「撮影はスポーツだ」の通り、カメラマンはじっと立って写真を撮っているだけではありませんでした。ありとあらゆるアングルを探して、歩き回り、姿勢を変えまくっていたのです。思いもかけないアングルに美しい表情が出たり、この人を綺麗に写そうと思って、何度も姿勢を変えるうち、このグループっていいな、と思ったりします。

一瞬、一瞬をカメラで切り取ることは、そのワークショップで何が行われたかを記録に留めることでもあります。
この記録は、ワークショップを開催した側の振り返りにも、参加者の振り返りにも役立ちます。

ぜひ、一度はカメラマンになってみてください。
それが難しければ、一度カメラマンにワークショップを撮影してもらって、そのときの写真を後から見ると、たくさん気づきが得られると思います。