サルコジ大統領の「改革」で誰が得をし、誰が損するのか【4】医療保険 | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

一昨日のアクセス数急増から、元の状態に戻りました(笑)。はてなブックマークと阿修羅の威力には恐れ入ります。

先日からの続きで、サルコジ大統領の「改革」の影響に関する話題です。今回は、医療保険です。サルコジ大統領は、一般会計の赤字を削減するために、医療費の支払いに一定の「免責」を導入しようとしています。日本では余りなじみのない概念ですが、自動車保険に入っている人ならご存知の考え方かもしれません。月10ユーロと決まったら、医療費がそれを超えた分しか保険から給付されない、ということです。


日本の医療費は、対GDP比で先進国中最下位クラスであることは、国家の懸命な情報操作にも関わらず、ようやく知られるようになってきましたが、自己負担が高いために誤解を招きやすいかもしれません。高額医療費が月8万円までは自己負担というような制度になっていますが、外来に関しては高齢者を除いて自己負担の上限は基本的にありません。低医療費で医療機関を締め上げ(ついでに医療機器の、狂っているとしか言いようのない内外価格差でも)、高自己負担で国民を締め上げています。医療機関も国民も生かさず殺さず搾り取る、という現政権の基本的スタンスはここでも見事に貫かれています。


フランスは別に日本に倣ったわけではないでしょうが、自己負担が増えることが良いことであるはずはありません。日本から見たら微々たる増額であっても。

『保健: 社会保障でのメスの一撃』



Santé

Coups de bistouri dans la Sécu



Pour tenter d’endiguer le déficit du régime général, le gouvernement envisage de créer des franchises. Les assurés seront moins remboursés

一般制度の赤字を抑えようとするために、政府は免責を創ろうと目論む。被保険者への払い戻しは減らされるだろう。


「免責額が余りにも高くなったら、人々を治療システム、特に一般医から遠ざける危険がある。」誰がこの疑念を表明しているか?ホームレスを保護する会?いいえ。それは、CSMF(フランス医師組合連合)の会長、ミシェル・シャサンだ。一般医、この組合活動家が?恐らく。しかし彼もまた、サルコジ改革の「誰が負け、誰が勝つか」という賭けにおいて犠牲者は、払い戻しが少なくなり受診が減る危険のある患者であるということを知っている。

 秋に議会に提出されるべき、社会保障の財源に関する法案では、共和国大統領は4つの新しい免責を導入したがっている。医薬品、採血、外来と病院内での医学的診察に対してである。その総額はまだ知られていない。しかし各免責額について、各家庭あたり、10ユーロにまで上がる可能性がある。それは恐らく、共済組合からは払い戻されないだろう。目的は?政府にとって、「支出し過ぎる」フランス国民に「責任を持たせ」なければならない。しかし現実はもっと散文的だ。この政策は社会保障財源、特にその支出が2007年上半期で20億ユーロを超えた、健康保険の国家財源の財政難を救うことを目指している。

 この政策は、払い戻しに一連のメスを入れた後に決定が下される。2005年の初めから、社会保険加入者は医師の診察を受けるか採血されるたびに1ユーロ分の払い戻し額が削減されることを経験している。1年の間、「重大な」医療行為を受けると負担金に18ユーロの違約金が残る。手術、静脈瘤の治療、その他で。明らかに、それでは十分でなかった。その代わりに、次の7月1日には、第1部門の一般医の診察は21から22ユーロになる。1ユーロの新たな値上げは2008年6月に行われるだろう。

 確かに問題は、フランス国民の13%が既に我が国の医療システムに加入していないということだ。そしてフィヨンの政府がこの状況を悪化させる危険があるということだ。それゆえ、組合の全会一致の抗議がある。CGTにとって、「免責額の制定は医療に殆ど助けを求めない人々の払い戻しを奪うことになり、その手段のある者には民間保険に救いを求めさせることになる」。5月22日、組閣の3日後、貧困に対する積極的連帯のための高等弁務官、マルタン・イルシュは、この改革を激しく非難した。「私がこの措置を承認するでしょうか?答えはノンです。」エマユスの元代表は反抗する。勢いに乗って、彼は、声明文を発表していた、保健相、ロズリーヌ・バシュレが面会した。「政府によって発表された免責は、ニコラ・サルコジの約束に応じて、被保険者に責任を持たせるための要因として理解される必要があった。その免責には、非常に困難な社会的状況を完全に考慮に入れるために、必要な免除が伴うだろう」 この文書を読んで、マルタン・イルシュは「安心した」と思った・・・

M. Gn



出典:

MARTINE GILSON

Le nouvel Observateur No.2223 14-20 JUIN 2007

URL: 

http://hebdo.nouvelobs.com/hebdo/parution/p2223/dossier/a347093-coups_de_bistouri_dans_la_sécu.html




日本ほど、医療機関への自由なアクセスが可能な国はありません。フランスも、まず一般医の診察を受けてからでないと専門医の診察を受けられません。日本の誰かさんが「教育改革」のお手本にしようとしている女王陛下の国のように、専門医の診察まで何週間待ち、手術を受けるのに半年あるいは1年待ち、というほどひどくはありませんが。このような状況で自己負担が増えることは、確実に受診抑制につながるでしょう。富裕層への減税のための財源の少なくとも一部を、医療費への支出を減らすことで確保するという考えには賛成できないという左翼の主張はもっともでしょう。


結局、支払能力のある人には負担を増やし、社会的に困難な状況にある人は免除するという、比較的常識的な線で落ち着くことになりそうです。日本のように、保険証を取り上げるという暴挙に出ることはないでしょう。とはいえ、13%もの国民が医療制度に加入していないことは、フランスの抱える厳しい問題の一端を物語っていると言えるでしょう。


次回は、中学校の「学区」の問題です。


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