国民投票法成立:海外の記事から、その他 | PAGES D'ECRITURE

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フランス語の勉強のために、フランスの雑誌 Le Nouvel Observateur や新聞の記事を日本語に訳して掲載していました。たまには、フランス語の記事と関係ないことも書きます。

参議院ではまともに審議されないまま、とうとう国民投票法が成立してしまいました。同法によると、2010年までは憲法改正の発議はできないことになっていますが、まさか現首相は、それまで首相の座に居られると思っているのでしょうか。


参考までに、海外での報道を引用します。Lemonde.fr から。

『日本が平和主義的な憲法の改正への道を開く』

Le Japon ouvre la voie à une révision de sa Constitution pacifiste

LEMONDE.FR avec AFP et Reuters | 14.05.07 | 17h42 • Mis à jour le 14.05.07 | 18h24


Les parlementaires japonais ont ouvert la voie à une révision de la Constitution pacifiste adoptée à la fin de la guerre, en entérinant, lundi 14 mai, la législation nécessaire à l'organisation d'un référendum national sur ce sujet controversé.
日本の国会議員は、5月14日月曜日、議論の多いこの主題についての国民投票を組織するのに必要な法制を採決し、終戦時に採択された平和主義的な憲法の改正への道を開いた。

Chantier prioritaire du premier ministre Shinzo Abe, la loi de référendum a été adoptée par la majorité de droite au Sénat, après avoir été approuvée, en avril, par la Chambre des députés. Selon M. Abe, la Constitution actuelle, rédigée par les forces d'occupation américaines en 1947 et jamais modifiée depuis, "ne répond plus aux changements importants survenus dans la politique étrangère et de défense" du Japon.
安部晋三首相の優先課題として、国民投票法は、4月に衆議院で可決された後、参議院において右派の多数決により採決された。安部首相によると、1947年にアメリカ占領軍によって書かれた現行憲法は日本の「外交と防衛政策に出現した重大な変化にはもはや対応できない」。

Par le biais de ce référendum, qui ne peut avoir lieu avant au moins trois ans, Shinzo Abe souhaite notamment modifier l'article 9, par lequel le Japon "renonce à jamais à la guerre (...) ainsi qu'à la menace ou à l'usage de la force comme moyen de règlement des conflits internationaux". Il veut ainsi réaffirmer la place de son pays dans les affaires internationales.
少なくとも3年以内には行われない国民投票という手段によって、安部晋三は特に憲法第九条を改変することを望んでいる。この条項によって日本は「(・・・)戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」。首相はまた、国際問題における日本の地位の再確認することも望んでいる。


49 % DES JAPONAIS CONTRE L'ABANDON DU PACIFISME
日本人の49%は平和主義の放棄に反対している

Yasuhisa Shiozaki, secrétaire général du gouvernement, s'est félicité de ce vote sans précédent, soulignant que jusqu'à présent le Japon "n'avait jamais fixé les modalités d'une révision constitutionnelle". En l'absence de consensus au sein de la classe politique, la coalition de droite au pouvoir a dû imposer cette loi de référendum, qui abaisse notamment à 18 ans le droit de vote pour ce scrutin, alors qu'il est normalement fixé à 20 ans.
塩崎恭久官房長官は、日本が「憲法改正の方法を定めていなかった」ことを強調し、今回の前例のない採決を喜んだ。政界内での同意に欠けるため、与党の右派連合は、現在は通常20歳以上に定められている投票権を18歳以上に引き下げる、この投票法を強要しなければならなかった。

Ce passage en force a été vivement critiqué par les partis de l'opposition. Le premier d'entre eux, le Parti démocrate du Japon (PDJ), qui n'est pas, a priori, hostile à une révision constitutionnelle, a déploré le "refus de dialogue" de M. Abe. Les sociaux-démocrates et les communistes rejettent pour leur part toute modification de la loi fondamentale.
この力ずくの通過は野党に強く批判されている。野党第一党の民主党は、本来は憲法改正に反対ではないが、安部首相の「審議の拒否」を嘆いた。社会民主党と共産党は党の立場として基本法のあらゆる改変を拒否している。

D'après un récent sondage publié par le quotidien Asahi, 58 % des Japonais seraient favorables à une modification de la Constitution, mais 49 % des personnes interrogées ne veulent cependant pas toucher à l'article 9, clé de voûte du pacifisme nippon, et 33 % souhaitent qu'il soit révisé.
朝日新聞が発表した最近の世論調査によると、58%の日本人が憲法の修正に賛成しているが、しかし質問を受けた人の49%は平和主義の市中である第九条に及ぶことを望んでいない。33%は第九条が改正されるべきだと思っている。

参考までに。
ところで、最初にAFPが配信したニュースは以下のようなものでした。

lundi 14 mai 2007, 13h04
Japon: premier pas vers une révision historique de la Constitution pacifiste
Par Mié KOHIYAMA

TOKYO (AFP) - Pour la première fois depuis la fin de la guerre, le Japon a ouvert la voie à une révision historique de la Constitution pacifiste du pays, en entérinant lundi la législation nécessaire à l'organisation d'un référendum national sur ce sujet controversé.

Chantier prioritaire du Premier ministre conservateur Shinzo Abe, la loi de référendum a été adoptée par la majorité de droite au Sénat. Elle avait déjà été approuvée par la Chambre des députés le mois dernier.


Selon M. Abe, la Constitution actuelle, qui a juste 60 ans, "ne répond plus aux changements importants survenus dans la politique étrangère et de défense" du Japon depuis 1945.

(以下略)



本文の二段落目、Chantier prioritaire du premier ministre Shinzo Abe,... が、下の記事では Chantier prioritaire du Premier ministre conservateur Shinzo Abe となっています。細かい話ですが、ここしばらく、政治関係のフランス語の色々な記事を読んでいて、conservateur (保守的な、または保守主義者)という単語を文章の中で目にしたのは初めてです。日本語の記事では、例えばフランスの右翼を「保守派」などと表現していることがありますが、現地の記事でconservateur (conservatrice) という単語を見たことはありませんでした。と思っていたら、この記事を書いたのは日本人の記者のようです。


逆に、日本の国会で「右翼」「左翼」だのという言葉が使われることは滅多にありません。むしろ国会の外にいる両極端に対して半ば侮蔑的に使われる言葉になってしまっています(特に「右翼}はほとんど海外での「極右」に相当する)。フランスでは、droite、gauche という言葉が普通に使われていて、極端な方には extrême という言葉が頭につくわけです。「保守主義者」に相当する単語が辞書に載っていて、そのまま訳しても文法的に間違いはなくても、実際のフランス語では殆ど使われていないことがある、ということも外国語の難しさの一つでしょう。



追記:そう思っていた矢先、conservateur (conservatrice)という言葉が実際に出てくる記事がありました。Japon : la colombe a du plomb dans l’aile という記事です。やっぱり外国語は難しい。


それはさておき、日本の国会内には国際的には「極右」に相当する連中まで、「保守」と自称して居座っています。恐ろしいことに、そうした勢力がついに「保守本流」を僭称するに至り、首相の座にまで上り詰めてしまっています。



『毎日新聞』東京版5月14日夕刊11面には、『届かぬ「おじいさまの声」』と題して、戦後の保守本流の一人であった、故三木武夫元首相の妻、三木睦子さんの声が紹介されています。


安倍晋三には、本人が何かというと引き合いに出す元A級戦犯の祖父のほかに、父方の安倍寛という祖父がいたことは、聞いたことがあるような気がしますが、詳しくは知りませんでした。1942年に、翼賛政治体制協議会の推薦を受けずに当選し、同じく非推薦で当選した三木武夫元首相とともに、軍部主導の国会を批判した人です。わらじ履きで、戦争回避などを訴える街頭演説に出かけ、特高警察の監視が絶えなかったそうです。寛氏は、1946年1月、新憲法の公布を見ることなく51歳で病死しました。


「(安倍晋三の)天国のおじいさまが、何とおっしゃるかしらね」

「力及ばず、改憲への道のりが作られてしまった。安倍首相には2人(安倍寛氏と三木元首相)の声が聞こえなかったようね・・・」

2人の遺志を継承するために、2004年に「九条の会」の呼びかけ人となった、睦子夫人の嘆きです。


「天国のおじいさま」(安倍寛氏)はさぞお嘆きでしょうが、もしかしたら地獄にいらっしゃるかもしれない「おじいさま」の方は、きっとお慶びのことでしょう。(私は天国も地獄も信じていませんが)


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追記:Japon : la colombe a du plomb dans l’aile という記事は、村野瀬玲奈さん が日本語訳されています。TBを戴きありがとうございました。こちらも是非ご覧ください。