「夜より暗き闇」  マイクル・コナリー | 本読みを哀れむ歌

「夜より暗き闇」  マイクル・コナリー

「夜より暗き闇」  マイクル・コナリー
A Darkness More Than Night / Michael Connelly



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心臓病で引退した元FBI心理分析官テリー・マッケイレブは、旧知の女性刑事から捜査協力の依頼を受ける。
殺人の現場に残された言葉から、犯行は連続すると悟ったテリーは、被害者と因縁のあったハリー・ボッシュ刑事を訪ねる。
だが、ボッシュは別の殺しの証人として全米が注視する裁判の渦中にあった―。




「暗く聖なる夜」で私的感想としてボッシュの「快楽の園」についてあれやこれや書いたが、「夜より暗き闇」を読み始めて、うろたえた。
「夜より暗き闇」にはしっかりと「快楽の園」について書いてあるではないか。
ちょっと早とちりだった?
いや、あながち間違いでもないのかもしれない。
書かれた時期、順番からすると、「夜より暗き闇」は「シティ・オブ・ボーンズ」の前のはずだから、私が読む順番を間違えたのか。
「シティ・オブ・ボーンズ」で転換期を迎えたと思っていたボッシュシリーズは、その前の「夜より暗き闇」が引き金だったのか。
結婚して、娘も生まれて、幸せなはずなのに、どうしようもない罪悪感の中で生きているマッケイレブ。
捜査協力として、調べ始めた事件にのめりこんでいく。
だが、マッケイレブは、捜査官であることを捨てきれないことに苦しむ。家族を悲しませても続けることなのか。
一方、ボッシュは全米が注目する裁判の渦中にあった。
この作品のボッシュはマッケイレブから見た、ボッシュだ。
だから、どこかよそよそしく、容易に心を覗かせない。
ボッシュの中に燻る怒りも、外側からははっきりとは見えない。
だが、ボッシュが何を考えているか、今までボッシュシリーズを読んできた読者にはたぶん手に取るように分かるだろう。
ところが、ボッシュが犯人かもしれない、と誰もが一瞬は考えたのではないだろうか。
それは、マッケイレブが調べた事実や、証拠を知ってそう思うのではなく、私たちは彼が抱える闇、生い立ちやトラウマを知っているからだ。
(それにしても、あの証拠はちょっとあざとすぎるだろう。罠だとすぐ気付くと思うんだが)
結末は衝撃的。
友人と袂を分かち(ただの喧嘩別れではない。もっと本質的なことで)「夜より暗き闇」に取り残されたのは、マッケイレブだったのか、ボッシュだったのか。
(ボッシュはまだ、マデリンの存在を知らなかった。彼は娘の瞳を見るたび、この事件のことをきっと後悔したことだろうと思う)
と、ここから、「シティ・オブ・ボーンズ」へ繋がっていくのか・・・。


次はやっと「天使と罪の街」
ポエット登場。楽しみ。