仕事の現場で第一線を退いた後も、まだまだ働き続けたいという人が増えている。その理由は「老後の生活費を稼ぎたい」というだけではない。改めて自分の人生を振り返り、「今後は人の役に立ちたい」と考える人も多いのだ。
学生時代の夢を追って、医者のいない“へき地”に赴く医師・・・これまでの経験や技術を生かそうという、熟年の企業家・・・そうした人をサポートする取り組みも始まっている。「人の役に立ちたい」という、第二の人生。「新たな働き方」を取材する.。

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第二の医師人生として、へき地に赴く医師たちがいる。静岡県西伊豆町にある田子診療所。この診療所で地元の人たちの診療をしているのが、笹井平さん、60歳だ。笹井さんは大学の医学部を卒業後、企業で医薬品などの研究を行ってきた。50歳を過ぎた時に人生を振り返り、学生時代に「へき地とか医者のいない所へ行くんだ」という志を持っていたことを、ふと思い出したという。そして、医師の再研修を行う地域医療振興協会のプログラムに参加。数か所の病院で診療現場を経験し、総合医療に対応できる力をつけてから、6年前、田子診療所に赴任した。担当する田子地区の住民は約2500人。高齢化率は50%の漁村で、医師は笹井さん1人しかいない。外来だけでなく、寝たきりの患者の往診も行い、携帯電話に連絡があれば夜中でも患者の自宅に駆け付けるという。

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耳が遠くなった高齢者や聴覚障害者などが、家の中でインターホンや電話の呼び出し音を把握できる製品がある。「シルウォッチ」と呼ばれる腕時計型の受信機だ。それを開発したのが、東京信友という企業の社長、斎藤勝さん、84歳。自らも重度の聴覚障害を持つ斎藤さんは、建設会社などで働いてきた。66歳の時、日常生活を支えてくれた妻が亡くなり、生活の不便さを改めて痛感。「同じように苦労している人たちのためにも」と、シルウォッチの開発に乗り出した。3年かけて完成させた商品は多くの人に受け入れられ、「本当に生活が一変しました」などと、使用者から感謝の手紙が殺到したという。実は、「ガイアの夜明け」では、2年前にも斎藤さんを取材。その後、シルウォッチが進化を遂げていると知り、今回、改めて取材することにした。「まだまだ人の役に立つ商品を開発し続けたい」。そう語る84歳のさらなる挑戦を追う。

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学生時代の夢を実現しようと、静岡県西伊豆町の診療所で働くことにした医師の笹井さん(60歳)。決断する際には、妻の和子さん(55歳)が背中を押してくれたと言います。「死ぬ時に後悔したくないもんね」と。夫と一緒に引っ越してきた和子さんは、いま、下田市にある産婦人科で働いています。実は、和子さんはかつて助産師をしていました。20年くらいのブランクがあったものの、復帰したのです。一緒に第二の人生を歩む。素敵なご夫婦です。

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↓医師の笹井平さん

笹井平さん

↓企業家の斉藤勝さん
斉藤勝さん