貌なし:嶋中潤

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お正月の気分を吹き飛ばすちょっと重たい内容。

「無戸籍」がテーマ。失踪した父親の生い立ちと、父を探す娘の行動が交互に描かれて、様々な謎が解き明かされて真相に迫っていく。

会話文が多く読みやすかった。

娘の香といとこの響子がナイスコンビで行方を捜し始める。父親の行方とともに香自身の秘密も明らかになり父親に隠された謎と無戸籍だった父親の半生が繋がっていく。

法的に存在しないと宣告された男性の過酷で無慈悲な人生、戸籍を買ってもそれは自分ではない氏名と生年月日。無戸籍の問題を改めて考えさせられる読み応えのある内容だった。

総務省のホームページで無戸籍について記載されているので、少しはマシになったのかなと胸をなでおろした。

普通に「住民票」が取れることができない環境におかれる過酷さがヒシヒシ伝わる佳作だった。

★★★★☆

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突然失踪した父。行方を追う娘は、父が25年前の殺人事件の法廷で、被告に有利な証言をしていた事実を知る。真相を求めて父の過去をたどる娘は、「無戸籍」という不条理な境遇に生まれた彼の、あまりにも過酷で無慈悲な人生に向き合う。『代理処罰』で第17回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した著者渾身の書下ろし長編ミステリー!

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一千兆円の身代金:八木圭一

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2017年のレビュー書き込み第1号は、昨年香取慎吾が犯人役で映像化されたもの。終盤には誰がどのようにという状況が読めてしまうし、「感動と慟哭のラスト」では無かったけれど、問題提起作品としては成功しているように思う。章ごとに語り主が変わるので最後まで飽きることはないし、中だるみもないし時系列なので読みやすさは抜群。日本国の負債、アメリカ同盟国としての在り方など誘拐犯の主張に同調できる部分が多いのも良かった。実際にこんな勇気と正義感と行動力のある若者がいたらいいのにと思わせる、スカッとはしないが、よくぞ書いてくれたという内容だった。

★★★★☆

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日本政府に突きつけられた驚愕の要求―。「元副総理の孫を誘拐した。財政赤字と同額の一〇八五兆円を支払うか、さもなくば、巨額財政赤字を招いた責任を公式に謝罪し、速やかに具体的再建案を示せ」。前代未聞の要求にマスコミは騒然。警視庁は捜査一課特殊犯係を直ちに派遣し、国家の威信をかけた大捜査網を展開する。やがて捜査陣は、あるブログの存在に行き着くが…。感動と慟哭のラストが待ち受ける“憂国”誘拐サスペンス巨編!2014年第12回『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作。

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アノニマス・コール:薬丸岳

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今年の最後はコレ。誘拐犯はいったい誰なのかが最後にほうでわかるまで、スリリングな展開が続く。大物政治家が黒幕という話はよくよくある話でそこに新鮮味は無いが、誘拐犯の目的は金ではなく、自分が警察を辞める原因となったであろう、とある情報で、その情報を手に入れるために警察を信用できない朝倉は悪党の岸谷と手を組み、若い職場に知り合い戸田を巻き込みながら満身創痍になりながらも駆けずり回る。GPSとタブレットを駆使して都内をおっかけっこ。犯人・神奈川県警・妻の奈緒美の動きと2重構造に、娘を救うために奔走する。スピード感、緊迫感があり、あっという間に読めた。真犯人は・・・。かも知れないという思いもあったが・・・。

★★★★☆

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3年前に警察を辞め、家族も離れて暮らす真志に、娘を誘拐したと匿名電話がある。自力で誘拐犯を捕まえるため動き出すが、誘拐事件はやがて真志がすべてを失った原因となる過去の事件へとつながり!?    


 

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絞首台の黙示録:神林長平

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冒頭の0章で「なんだかスゴイ」と引き込まれ、1章からすこし辛抱が続き、低体温のまま読み進めることになるがジワジワと引き込まれる。語り手が誰なのかわかっていないと辛くなるが、

人間の肉体と意識の分離の認識に、神学問答が加わった内容なので仕方なし。作家(ぼく)、死刑囚(おれ)、教誨牧師(わたし)、作家の父親(わたし)の語り手が故人の意識を理解する度に入れ替わる。先の語り手が理解を示すと、次の語り手はその反証や前の語り手の思い違いを指摘してきて、箱庭的な時間軸のブレを感じる様になる。科学的な見方にくみしたいのに神学的な見方にも魅力を感じてしまう。 難しかったけど面白かった。

★★★★☆

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長野県松本で暮らす作家のぼくは、連絡がとれない父・伊郷由史の安否を確認するため、新潟の実家へと戻った。
生後三カ月で亡くなった双子の兄とぼくに、それぞれ〈文〉〈工〉と書いて同じタクミと読ませる名付けをした父。
だが、実家で父の不在を確認したぼくは、タクミを名乗る自分そっくりな男の訪問を受ける。
彼は育ての親を殺して死刑になってから、ここへ来たというのだが……
神林長平、三十六年目の最新傑作にして最大の野心作。

黄泉がえり遊戯:雪富千晶紀

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諦めずに「終章」まで読んで意外に感動した。

こういうのホラー小説っていうのかな。スプラッターな部分もかなりあって、死者が蘇って、さらにその蘇った人が次の生贄を探す。町の偉人と殺人鬼が実はこの「蘇り」の人だったという奇想天外な話ではあるが、その原因を郷土史家の書籍から徐々に解き明かしていく風采のあがらない主人公。霊が見える妹。喪失感を共有する高校からの女友達、町おこしのコンサルタントとしてやってきた同じく高校の卒業生など、登場人物はそう多くなく読みやすかった。

いかにもあり得ない話なので逆に安心して読めたがちょっとシンドイところもあり。でもラストがハッピーでそれまでのドンヨリ・モヤモヤが一気に晴れ上がる。

★★★☆☆

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動く屍体、加速する殺戮、そして涙……。
これが、青春ホラーミステリの王道
閉塞感に満ちた田舎町で、大学進学の夢を諦め、父の葬儀社を継いだ遼一。
ある日彼は、遺体が棺から起き上がり、他の遺体をむさぼり喰らうのを目にする。
「死者がよみがえる葬儀社」の噂のせいで客足は激減し、遼一は調査に乗りだすことに。
一方、遼一の妹で高校生の佐紀には、ある秘密があった。それは、霊が見えるということ。
遼一に理解してもらえず、学校でも孤立している佐紀だが、ふと町の変化に気づく。
佐紀は偶然出会った、同じく霊が見える颯太と共に、理由を探り始めるが・・・・・・。

ブルーアウト:鈴木光司

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「リング」が強烈すぎてスリラー作家みたいなイメージがついて回るが。こんなドキュメンタリーっぽいものも読みやすくて良かった。過去の海洋事故、現在の海中での生命の危機、過去と現在、交互に話が展開。現在と過去の時空をつなぐのが香水の瓶でこれを狂言回しに、話が進む。エピローグで、ムスタファが島に打ち上げられてからの話が心に沁みた。島の人たちが困難を押し親身になって救助活動に邁進する。友が犠牲になり生き残ったムスタファの心境など。胸に迫った。優輝の再生がヨットでおじいちゃんの加平との交流がほほえましかった。僕の年齢では加平が第二の人生を夢に向かって邁進していく部分に背中を押された。

★★★★☆

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和歌山県串本町のダイビングショップでガイドとして働く女性ダイバー高畑水輝。そのもとを偶然訪れたトルコ人青年ギュスカン。彼の目的はいまから125年前、祖先ムスタファを乗せた軍艦「エルトゥールル号」の遭難現場に潜り、「あるもの」を捜すことにあった。バディとして潜る水輝が一瞬目を離した隙に突然視界から消えたギュスカン…。1世紀の時を経て、日本とトルコの時空を超えて、絡み合う宿命。それは偶然なのか、必然なのか。海の脅威を知り尽くした作家が「知の腕力」で描いた息を呑む渾身の海洋小説!

ふなふな船橋:吉本ばなな

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今週はこれ。初めての「吉本ばなな」、こんな感じなんだね。なんだか「女子」ならではの柔らかな雰囲気がずーーーと最初から最後まで続いて、事故物件マンションに出る花子さんとの交流などあの世とこの世がリンクすり部分もあって不思議で温かい「お話」だった。

恋する人の喪失からに立ち直るのに、なんとも言えない勇気や元気をもらえる。

「あいた隙間には必ずなにかがこうして入ってくる。いつだってそうだ。悪いことの半分はいいことでできている。見つけることができるかどうかだけだ。」

そう気づくのががもっと若い時だったら良かったと思わされる佳品。

船橋に少しでも土地勘があったらさらにさらに面白く読めそう。

★★★★☆

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書店の店長をしている立石花は、15歳の時に、父親が借金を作って夜逃げし、母親は新しく出会った男性と結婚をすることになり、一家離散を体験する。一緒に暮らそうという母親の説得を断り、千葉県の船橋に住む親戚の奈美おばさんのマンションに身を寄せることになるのだが、大好きなお母さんと船橋の駅で別れるときに買ってもらった「梨の妖精 ふなっしー」のぬいぐるみを15年経った今も大切に持っている。
花が奈美おばさんのマンションで暮らすようになって間もなく、小さな女の子が出てくる不思議な夢を繰り返し見るようになる。その夢の中の女の子もまた、「梨の妖精 ふなっしー」を愛するひとりだった。花はいつも「温かいミルクティーを飲んだ」ような優しい気持ちになって目が覚めるのだった。
悲しい出来事があって泣きながら寝た夜のことだった、いつもの少女が夢に出てきて、花に頼みごとをする。それは「自分が住んでいた庭にある桐の木の下に埋めたものを掘り起こして、お父さんに渡してほしい」というものだった。
夢から覚めた花は、奈美おばさんに、この不思議な夢のことを告白すると、過去にこの部屋でおきた出来事を教えられる。そして、夢の中に出てくる少女との約束を果たそうと決意するのだが……。

誓約:薬丸岳

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全編重たくて陰鬱なんだけど一気に読んだ。登場人物が少ないので「この男が怪しいんじゃない?」ってのが最後に「そういう形できたか!」なんだけど、恩人に恩を仇で返すような主人公向井があまり好きにはなれずに寄り添って読めないのが辛いけど、期限まで約束どおり殺すことが出来るのか、誰が伸子の意思を受け継いで指示しているのかが興味深く、先が気になってしょうがなかった。

内容は新しい人生を手に入れる為に交わした恐ろしい「約束」。その実行を促す手紙に衝撃を受ける主人公向井は大切な家族を守る為にどんどん追いつめられていく。「一度罪を犯した人間は幸せになってはいけませんか。」向井の生い立ちにはやるせないものがある、だがそれは何の関係もない人間に危害を加える理由にはならない。犯罪被害者のありようも考えさせられた。公平がいたことに救われた。

★★☆☆☆

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一度罪を犯したら、人はやり直すことはできないのだろうかーー。罪とは何か、償いとは何かを問いかける究極の長編ミステリー。
捨てたはずの過去から届いた一通の手紙が、
封印した私の記憶を甦らせるーー。十五年前、アルバイト先の客だった落合に誘われ、レストランバーの共同経営者となった向井。信用できる相棒と築き上げた自分の城。愛する妻と娘との、つつましくも穏やかな生活。だが、一通の手紙が、かつて封印した記憶を甦らせようとしていた。「あの男たちは刑務所から出ています」。便箋には、それだけが書かれていた。


 

透明カメレオン:道尾秀介

テーマ:

これはスゴイ!最後の5ページを電車の中で読んではいけない。

うっかり読み進めていくと「あの人、なんか泣いてるみたい」といぶかしがられること間違いなし。序盤は軽いタッチでさくさく進むが、恵の復讐かと思いきや、えっ、DJで話していた内容が実は、結末の異なる実話だったわけ!というように伏線の張り方が最後のほうにわかってきて、さらにさらに最後の種明かしに泣かされた。

奥多摩山中での「後藤」との対峙あたりから徐々に高まる期待感が最後に違う形で爆発する。すごいモノガタリだった。

「たとえ目に見えない透明な世界だったとしても、本気で願えば、人はそれに触れることができる。両足で立つことができる。僕はそう信じていた。」

傷ついた人たちがどう傷から立ち直ることができるのか、楽しく読めて考えさせられもした。

★★★★★

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ラジオのパーソナリティの恭太郎は、冴えない容姿と“特殊”な声の持ち主。今夜も、いきつけのバー「if」で仲間たちと過ごすだけの毎日を、楽しくて面白おかしい話につくり変えてリスナーに届ける。恭太郎が「if」で不審な音を耳にしたある雨の日、びしょ濡れの美女が店に迷い込んできた。ひょんなことから彼女の企てた殺害計画に参加することになる彼らだが―。陽気な物語に隠された、優しい嘘。驚きと感動のラストが心ふるわす―。

チェインドッグ:櫛木理宇

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9人目の犯人は誰なのか?が知りたくてなんだか気味が悪いのに先を読まずにいられない、

連続殺人の罪で収監中の“榛村大和”。彼を知る様々な人物からの聞き取りによってその真の姿が徐々に浮き彫りになり、主人公にもやがてある歪な変化がもたらされてゆく。

歪んだ家庭環境や子供への虐待が将来的に脳や精神に与える影響の恐ろしさや、心の隙に入り込み人の精神を思い通りに操るマインドコントロールの恐怖が、執拗に描かれる。

ラストにホッとしたのに、エピローグでまたまた落とされる。

拠り所を求めすぎる、強く依存するという精神状態が「洗脳」への道なのかもしれない。

みんなが幸せだと思うようなのが宗教で、そうでないなら・・・。

“鎖に繋がれた犬”このタイトルがそういうことだったのかと納得する。 心も体も元気なときに読まないとちょっと影響される怪しげなモノガタリだった。

★★★★☆

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鬱屈した日々を送る大学生、筧井雅也に届いた一通の手紙。それは稀代の連続殺人犯・榛村大和からのものだった。「罪は認めるが、最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」そう訴える大和のため、事件の再調査を決めた雅也。パン屋の店主だった大和の人生に潜む負の連鎖を知るうち、雅也は大和に魅せられ始める。一つ一つの選択が明らかにしていく残酷な真実とは?俊英が描く傑作ミステリ登場。