あるオフィス。ペン立てにスプーン、机の中にもスプーン。

「毎朝’検証’する」という。企画開発部の人たちが’検証’するのはお菓子。20年前、売上げ20億円だったのが、いまや10倍以上の250億円に。その会社は、「小さな洋菓子店」シリーズなどで知られているモンテールだ。
コンビニやスーパーで売られている、小さなシュークリームやエクレア、クレープと言ったほうがわかりやすいかもしれない。以前は、饅頭やバームクーヘンなどといった”袋菓子”を作っていたモンテールだが、冷蔵で保存する“チルド菓子”の分野に進出し、大躍進している。

モンテールでは、商品開発を行う企画開発部、広報部の面々が、毎朝、製品の味を一部試食してチェックする。

商品は現在60種類。「手ごろでおいしい。」と評判。

強さと美味しさの秘密を社長の鈴木徹哉氏に聞く。三代目の43歳。社長室は玄関に近いところにあった。

社員とも顧客とも近い位置にという社長の考えからだ。

人気の秘密はこだわりと安全にあった!

モンテールの工場は、都道府県別で見た農業産出額1位の北海道、2位の茨城県、そして酪農が盛んで飛騨天然水が流れる岐阜県と、高品質素材が集まる場所にある。保存料などを一切使わないため、素材の近くで製造を行っている。素材がよくなければ、美味しいものは作れないと考えるからだ。
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工場の中を取材。「ワッフル」「エクレア」などが作られていた。

クリームの材料は牛乳。その精製も自社内で行なう。殺菌時間も長くこだわりのクリームが出来る。

「ドラ焼き」は機械だが、ロールケーキは人間が手で巻いている。

またモンテールは、保存料などを使用しないこともあり、衛生管理も徹底。そのため、日々、品質保証部の社員が、工場内で製品の抜き取り検査を行い、研究室で、細菌チェックを行う。また、工場に入るのに30分も時間を要する徹底ぶり。サーモグラフィーによる体温チェックにはじまり、最期には眉毛やまつ毛をオリジナルの機械で吸引する。

体温が高ければ中に入れない。一般生菌も基準の250分の1だ。

他にも粘着ローラーで60秒埃を取り、さらにエアーを噴きかけ埃を飛ばす。

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スタジオに34種類の商品が並ぶ。龍さんと小池が試食。小池「クリーム絶品ですよね。」

エクレアをおいしく食べる方法。→チョコを下にして食べる。下にチョコが乗っておいしいらしい。

小池「検証するのは?」

社長「味が変わらないことを確かめる。」

社長「嗜好品とはいえ、安全・安心が一番。おいしさも必要。」

小池「まつげとり機械の発想は?」

社長「もともとはコロコロローラーでやっていたが、全部まつげが取れてしまいそうだったので」

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新入社員は49人。自分達で商品開発し発表する。実際に商品化に結びつくものも出る。社長は「自分で本当に食べたいものを、奇をてらわずに。」と釘をさす。

これは代々のモンテールのDNA

足立区の鈴木製菓店からスタート。半生菓子で基礎を築き中生菓子へと転換。飛躍し、2代目がさらにチルド菓子で今の地位を築いた。

2008年病に倒れた社長を引き継いだのが鈴木。ちょうどそこにリーマンショックが襲った。影響は1年後に出るとふんで、1極集注し荒波を乗り切った。

社長「新入社員はもっともお客様目線に近い。自分が食べたいものを提案するのが一番。」

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ここでモンテールの歩みがフリップで。チルドは1991年にスタート。

社長「われわれが後発でデパートとかに入っても勝てる見込みは少ない。」

社長「夏になると草むしりするほど暇になった。季節ごとの浮き沈みが激しかった。」

社長「父が66歳で亡くなり、岐阜に工場を建てている真っ最中だったので、託されたという気持ちが強い。」

ここで社長は感極まり涙。

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毎週金曜には、現在市場に投入されている商品を全て机に並べ試食!味の品質が保たれているか?ブラッシュアップが必要か?を議論。さらに、毎月1回は、鈴木社長も交え、70人以上の社員で、全食品を食べ、アンケート調査を行う。
また、アンケートでは、各製品の点数評価を行い、改善点などを記入する。これがまた、次の商品開発へと活かされていくことになるのだ。
そこにあるのは「モアベター精神」。味・品質・社内の環境、全てにおいて「さらに良くならないか?」常に問いただす。ベストだと思った時成長は停止する、という創業時からの教えがそこにはあった。

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ヒットメーカーが次に狙うのは「チーズケーキのドラ焼き」

入社3年目のパティシエ菊地さんとタッグを組んで開発。試食会ではストレートな意見が飛び交う。「生地が硬い」「おいしくない」などなど

そこで菊地さんは再挑戦。材料は同じだが、混ぜ合わせるスピードを遅くして気泡を多くし、練りこみに倍の時間をかけた。

パサツキ感の解消には焼き時間を短縮。再び企画の上総さんが試食。そして①ベーグドチーズケーキ、②ラズベリーチーズケーキ、③レアチーズケーキの3種類を作り、試食会へ。結果は・・・。

3種類のうち一番人気は3番の2層のレアチーズケーキドラ焼きだった。

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龍さん「社員の皆さん、甘いものがすきなんですか?」

社長「’大好き’と’好き’の違いはあるけど、みんな自社の製品が好きで、可愛いし良くしたいと思っている。」

社長「結局、自分が食べたいもの、おいしいものを商品にしたほうが愛着がある。」

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編集後記・・・甘い幸福感と厳しい決断
生誕半世紀からの存在証明-カンブリア