神奈川県湘南、湘南鎌倉総合病院。ここに“神の手”と呼ばれるドクターがいる。心臓治療の第一人者・齋藤滋医師だ。

篠原さんも頼ってやってきた患者だ。狭心症や心筋梗塞などの患者にカテーテルを使った心臓治療を行うのだが、太ももからではなく手首からカテーテルを挿入し、20分ほどで治療を終える。

この手首から入れる手法が斉藤さんが開発。従来は足首から入れていた。圧力をかけて血管を太くする。

これまで何度もカテーテルの治療経験がある患者も思わず「もう終わったんですか?・・・はやい」と驚きを隠せない。しかも、自分の足で歩いて病室に戻るほど負担が無い。

そのスゴい技術を支えているのが医療機器メーカーのテルモだ。

患者の負担を軽減する“やさしい”医療で、テルモの社員たちが心臓病大国と言われるメキシコに売り込む。メキシコは肥満大国で心臓病大国でもあるのだ。

ほかに「予防医療」で喫煙・飲酒大国ロシアにも売り込む。

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ニッポンの医療が世界へ打って出るシリーズ第2弾。今回は“患者にやさしい医療”がテーマ。

【沸騰ナビゲーター】
山口聡(あきら)(日本経済新聞社 編集委員)
1987年京都大学文学部卒、日本経済新聞社入社。経済部などを経て2004年から生活経済部(現・生活情報部)編集委員。 20年近くにわたって年金や医療・介護など社会保障問題を担当。

山口「①患者の負担が少ない、②予防治療 がやさしい医療」

山口「足首からカテーテルを入れると何日か入院が必要だった。」

ここで「痛くない注射針」がスタジオで紹介された。

山口「健康診断や人間ドッグが予防医療。」

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心臓血管治療で、スーパードクターと称えられる湘南鎌倉総合病院の齋藤滋医師。胸を切開手術せず、手首からカテーテルを挿入することで、狭心症や心筋梗塞などの患者を救ってきた。患者の負担を大幅に軽減するこの手術方法を支えるのが、医療機器メーカーのテルモ。

細長いワイヤー0.3mmの細さでしなやかだ。このガードワーヤーを入れた後にカテーテルを入れる。

ガードワーヤーは外側が特殊加工してあり、スムーズに出し入れができる。

日本では70%普及したこの手法。世界ではまだまだ普及していない。

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3月6日、湘南病院にメキシコの医師たちが到着。テルモが招いた。

そして実際に斉藤さんの手術現場に立ち会う。手術後も質問が止まらない。実はメキシコは心臓病患者が多い。

首都メキシコシティは人口過密都市。体格の大きい人が多い。油でコッテリ揚げたものが食生活の中心。

フランシスコさん62歳。弟が心臓病で急死した。本人も心臓病の薬が手放せない。政府は事態を深刻に受けとめ始めてきた。

テルモの千葉太郎さん。メキシコで手首からカテーテルを入れる手法の普及に力を入れている。研修医に狙いをつけて、シミュレーションできるPCや器具を手にしてもらい、体験してもらっている。

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医療機器と医療技術をパッケージして輸出する。

山口「ただし、今は貿易収支としては赤字で輸入超過している。」

山口「パッケージ型輸出は今、10カ国くらいで検討・進出している。」

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もうひとつ、日本が最先端とされるのが「検診」をはじめとする予防医療。

大病になる前に手を打つ、これは日本が一番進んでいる。CT・MRIの台数は日本がダントツで多い。

日本は65歳以上の割合が世界一。それも予防医療が進んでいる理由だ。

北海道・帯広市の北斗病院。この病院では「予防医療」に力を入れている。最新のPET-CT検査などを含むがん検診が6万5千円で受けられるとあって、全国から患者が訪れる。

横浜からがん検診に定期的に来ている田中夫婦。ここで68項目にわたって検査する。最大の目玉がPET-CT検査。

ブドウ糖が集まっているところにがん細胞が見つかる。田中さん夫婦は特に異常なし。観光して帰るという。

通常PET-CT検査だけで12万円もするが、ここでは他も含めて6万5千円だ。

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鎌田理事長は、そんな「予防医療」を日本だけでなくロシアでも広めたいと6月、ウラジオストクに検診施設をオープンした。

日本との関係が古いウラジオストク。パブレンコさん一家。共働きで比較的裕福な家庭だが、次男のセミョーン君、体にアザができた。

日本で診断した結果「血小板が少ない」ことがわかり、2週間で治療が済んだ。

ロシアの医療悪化はソビエト崩壊にあった。1991年の崩壊は医療崩壊でもあった。もともとウォッカなど度数の高いアルコール飲料を飲む国民。実はロシアは飲酒率・喫煙率ともに高く、平均寿命は60代なのだ。

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5月28日、ウラジオストクに人だかりが。北海道北斗病院の鎌田理事長も出席して、予防医療の施設がオープンした。

セレモニーはロシアのメディアも多数取材。

北斗病院は検査技師の岡田さんを1ヶ月前から派遣し、医師の教育を行なった。

岡田さん、実際の患者さんを検査するところまで立会い、指導する。うまくいかないと交代して指導。

そしていよいよ一般受付開始。100KMも遠くから来た人など次々と検査室に入っていく。部位ごとに検査も可能で値段も決まっている。

帯広の北斗病院に画像を送ってもらうことも可能で、患者の受け入れもするという。

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山口「ミャンマーは乳がんの発生率が高い。日本の医療パッケージは受け入れられている。」

未来予測・・・日本が世界標準を奪取・・・

その国の医療に対する考え方も変えていく。意識の変革ごと外に持っていく。「医療の海外進出は投資である。」

↓齋藤滋医師

生誕半世紀からの存在証明-未来世紀