行列の作り方、教えます!のキャプ。XXIの新規オープンに並ぶ人達。その仕掛け人が伊藤さん。職業「広報・PR」デザイナーとしての華々しいキャリア、しかし倒産で莫大な借金が残った。華やかなファッション業界の舞台裏、情熱と信念の伊藤に密着。

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東京恵比寿のオフィス。出勤するとメールに目を通す。といってもパソコンではなくプリントされた紙に目を通す。

国内外20社と契約しているため、世界からメールが入る。ファッションのみならず、酒造メーカーなども顧客。腕の見せ所は、メディアへの露出の仕方。しかし結果を出さないと次の契約は無い。

この日は、ヴィヴィアンの新聞の文化部だけを読んでの記者会見。

大手新聞に環境問題への言及とともにヴィヴィアンのファッションが掲載された。

アタッシュ・ド・プレスといわれる欧州では確立した職業であるが、伊藤はその日本でのパイオニアだ。

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大切にしている流儀は「隠れた宝を掘り起こす」、通販雑誌を担当したときは、それまで価格の安さをウリにしていたのを、組み合わせることの楽しさ、種類の多さをアピールして大きく変わった。

そして渋谷、ファストファッションメーカーがひしめく激戦区。

伊藤は「感情を伝染させる」というのを広報戦略のテーマにしている。

今の時代、携帯メールやツィイッターで瞬時に感情が伝わっていく。

伊藤は「行列」ができることが人々の興味を惹くと考えて、ライブなどを取り入れることにした。しかしまだ足りない。そこで生身のモデルをショウィンドウに立たせることにした。これが大きな話題を呼ぶとふんだ。

当日はホンモノのマネキンに見えるよう、化粧も指示し、肌の質感から人形っぽくしていく。

オープンした。西野カナもライブ。店内はごった返した。モデルも動く、つぎ次と人が集まり、マネキンだと思ったらホンモノのモデルだとわかり、ツィイッターでも大きな話題となった。

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自身の服装は黒が多い。自分ではあまり目立ってはいけないけど、クライアントさんが誇らしげに紹介できるだけのことは心がけているという。

そして気持ちを伝えることが大事で、前のめりになって情熱を持って話す。

今、広報の仕事の意義を伝える仕事もしている。

長野県佐久市に依頼されて、地域おこしに関心のある人達を前に話をした。

広報とはオカネをかけて情報を大量発信することではない。情報を熱くしっかり伝えることが大事。佐久の会議は熱を帯びてきた。

信じてきたことは、「仕事は思いを伝えること。熱を広げていくこと。」

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落ち込むことはないんですか?の問いに

クヨクヨすることはありますよ。行きたくない朝もあるけど、ガーと発散して出て行く。

弟の高橋幸宏さん夫婦と、家族で一緒に伊豆の別荘で過ごす。

東京目黒の中小企業の社長の長女(5人兄弟の)として生まれ、裕福な生活だった。

それが父の失職で生活が一変した。ブティックを立ち上げて、一躍人気ブランドになった。川久保玲やイトウヨウジらの時代でファッションブランドがもてはやされてきた時代だった。

しかし33歳のときに、連鎖倒産の憂き目にあい、債権者が押しかけた。ヨウジヤマモトは海外に進出し、センセーションを巻き起こしていた。一方の伊藤は債権者の対応に追われていた。辛く悔しい思いをした。

それでもくじけずに、裏方の仕事についた。借金を返すために無我夢中で働いた。

48歳になったとき、ヨウジヤマモトの仕事を手伝うことになった。

いままでのとんがったメンズのスーツから、着られるスーツを出すことにした。しかし前衛的な広告が、セールスに結びつかなかった。品質もいいのに売れないのは何故と考えて、広告・広報を替えることにした。これが当たった。時に伊藤さん50歳。ブランドの魅力を消費者に伝えるにはどうしたらいいかを徹底的に考えるようになった。

大きく当たるときもあれば契約を打ち切られるときも合った。

そして今、66歳。広報の講座も始めた。若い人にその仕事を知ってもらうために。

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この冬、ベルギーの老舗ファッションブランドの周年記念イベントの話が舞い込んだ。

真価が問われる仕事だった。女性向けアイテムを中心にデパートなどに展開しているブランドだが、さらに幅広い世代にアピールしたいというのがクライアントの要望。今までのターゲット世代を崩すことなく更に広げるというもの。

伊藤は、このブランドの良さを見つける。おしつけがましさが無く、靴などでいろんな組み合わせが可能だと思った。そこで伊藤はクライアントに提案。

同じ服でありながら、20代・40代・50代で着こなしかたを替えて映像を見せるというもの。新たな試みであり、クライアントも驚くが伊藤の提案に賭けた。

1月半ば、モデルが参加、クライアントも参加した。モデルは若いが、メイクなどで40代・50代の状況を出す。

伊藤は内部のクライアントがまずは自信を持ってもらうことが大事だと考えている。

伊藤の契約はイベントが終るまでで、それで終るのだが、伊藤はその後も拘る。売り上げがその結果だからだ。

40代では成熟した美しさ、ところが50代ではやはりモデルの若さ・かわいらしさが出るあまり50代の美しさが出ていない。そこでメイクを替え、髪の毛も替えてマダムの雰囲気を出す。

最後は20代、モデルたちも乗ってきた。

こうして撮影開始から9時間。全力を尽くした。あとは思いが通じるかどうか。

3週間後クライアントがやってきて、その映像を見て、確認する。

ひとつの服を3つの世代の女性が着こなす。クライアントは何度も映像を見直した。

そしてつぶやいた「いいですね。」「見ればみるほど良くなりますね。」

役員「今日ビデオを見て自信を深めましたね。」

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プロフェッショナルとは「人に影響を与えることができる人、人間として魅力のある人と思ってます。」