中国環境汚染を制するものが世界を制する。

日本も技術立国の威信をかけて中国に挑む。ライバル韓国は大臣自らが営業に乗り出す。中国のグリーンビジネスは日本・韓国・中国の企業がしのぎを削る三つ巴の戦い。

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四川省成都の廃棄物処理場。その埋立地を行く韓国企業のトップ。メタンガスの出る池に「あれはカネになる。」大気汚染や水質汚濁など環境汚染の克服は中国政府が掲げる大きな施策だ。年間20兆円を投入している。この超巨大市場のビジネスに日本やドイツを凌いで契約トップになったのが韓国。

韓国のソウル環境保護省と中国ペキン環境省を結ぶ環境情報ネットで、移動式小型汚泥装置、土壌からの重金属除去薬品などが契約され、技術協力が進む。たとえ技術が流出しても市場そのものを押さえてしまおうという戦略だ。

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韓国は低炭素・緑色環境を国を挙げて推進。環境省の環境産業チームでは1社ごとの営業戦略を立てて支援している。クム・ハンスンPT長は定期的に中国に足を運ぶ。今回はジェイ・テックのジャン社長と同道し、集塵機をセールス。金属の粉塵を除去する装置を売り込む。その設置状況を視察。集塵機が入ってから健康被害を訴える従業員が減ったという。

サムスン、LGに続く企業を育成する会社群のなかにあるジェイ・テック。世界環境技術の雌雄を決すると中国に乗り出している。

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日本は中国市場を攻めあぐねてきた。

先陣を切ったのは中小企業だ。自慢の技術を武器に売り込む。

廃液から有害物質を除去し真水にする技術を持つ会社。大和化学工業の土井社長はタダでテストを行うという。

来日した中国の社長達を前に実演販売を行う。1台1300万円する。

韓国が営業力なら日本は技術力!とばかりアピールする。

山東省チンタオ郊外のリサイクル工場。土井社長はここを訪問。肝心の処理場所は見せてもらえない。浸出水の処理場は地下にあるという。ここも見せてもらえない。土井社長は頭を抱える。

ところが韓国の環境保護省と韓国企業がくると一変。もうすでに韓国企業の機械が導入されていたのだ。土井さんの入り込む余地は無かった。

韓国の磐石の営業に圧倒された。別な日も土井社長は、各社を回って廃液を分けてもらう。まだ契約は1社も無い。

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方や韓国のジェイ・テックには新たなオファーがあった。

古い設備の更新を計画した中国企業に、その契約の申し出があった。集塵機がうまく機能しないという。石造りの集塵機はジェイ・テックの10分の1の能力だった。7台あるうちまず2台を契約。緑色戦争は韓国企業が優勢で、その勢いをかって日本にも進出する動きがある。えりすぐりの14社が日本開拓に乗り出している。韓国は技術開発を官民一体で行い、日本企業もその技術力に舌を巻く。韓国技術がもう日本の技術を凌駕している部分もあるという。

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土井社長は北京大学に足場を築き、そこから環境エネルギー事業へ乗り出そうと考えて、まず実地で見せるが、なによりコストがかかりすぎると次第に醒めた反応になっていった。優れた技術もコストの壁に当たる。

中国企業も日本と比べ圧倒的に安いコストで、技術や品質の高いものを製造してきている。

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韓国ジェイ・テックのチャン社長は、2台の集塵機の契約について、韓国語と中国語の契約書を見比べる。「利潤を追求せず」という文言にも顔色を変えずに、次の5台全部を取る覚悟で、市場を制覇することを優先した。

2015年までに36兆円を投入しようという中国。

土井潤一社長は、方針を変えて再び中国を訪問。

’知的財産を無償で提供する’という方針で、中国の技術者にノウハウを提供し、中国で安く製造することにしたのだ。

土井社長「中国リスクは認識しているが、そこで足を止めるといいうことではなく、全力でやるということ。」

土井さんの中国訪問のさなか、尖閣列島問題で中国の反日感情が高まった。それでも後戻りはしない。

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韓国では緑色戦争、緑色ビジネスにおける表彰が行われた。

ジェイ・テックは環境大臣賞を受賞。功績が高く評価された。

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北京大学では土井社長の会社大和化学工業の廃液処理装置が導入されることになった。契約は技術は無償、今後の研究は共同で行うというもの。土井社長の大きな決断だった。勝負に出た土井さんに早速、各方面からのオファーがあった。孤軍奮闘の末、中国市場を掴み取る糸口が見つかった。

日本政府もようやく動き始めた。北京大学との調印が改めて行われ、日本政府が追認する形となった。

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巨大な環境プロジェクトに、韓国は政府と企業が連携して緑色ビジネスに乗り出し、日本は土井さんが北京大学を味方につけてその緑色ビジネスに乗り出した。中国の環境大国を目指す動きとともに三つ巴の戦いが続く。