生物の中には、体を再生できる力を持っているものがいる。イモリは足を再生する。今まで特別な生物だけが持っていると思われたこの能力が人間にもあることがわかってきた。

幹細胞がその主役だ。眠っている幹細胞を働かせれば、イモリのように再生できるという。

再生医療は今、美容の世界では一般的になってきている。

また人間の細胞を動物に移植し、ヒトの臓器を造らせることも自治医科大学の小林教授が進めている。

英国では免疫型の合う弟をつくって兄に移植するということが国をあげての大議論になった。

作家の海堂さんがナビゲーター「禁断の扉を次々と開けている。」というその状況に迫る。

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アメリカ・オハイオ州シンシナティ発信、切れた指が元に戻ったというニュースが流れた。プロペラ機で指を切断したピーバック氏が「妖精の粉」と言われるパウダーを付けて指が再生したという。「カタチは前と同じだが、爪の伸びが速い」と氏は話す。その粉は「細胞外マトリックス」という。まだ普及はしていないが、これに目をつけたのは米軍だ。230億円の投資をしてマトリックスの効果確認をしている。

シャイロ・ハリス軍曹は爆弾処理で全身火傷を負い、3本の指を付け根から切断した。それを細胞外マトリックスで治療する試みがなされ、3ヶ月で指の付け根が盛り上げってきて、今ではコップを落とさずに持てるようになった。

細胞外マトリックスは豚の膀胱、まず細胞を全て取り除く、残った皮膜を粉上に粉砕したものがだ。これが幹細胞を呼び寄せるのではないかと推測されている。

受精卵が分割して、いろんな器官になていくが、受精卵と器官を橋渡しするのが「幹細胞」で、特に骨髄の幹細胞はいろんな組織器官になっていく。

アメリカ軍は、この粉で筋肉を作ることも研究し、ベルナルド伍長は太ももを損傷したが、この治療で再生した。

軍の再生医療責任者は「あと3年で確立したい。」と語る。

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海堂さん「私の気持ちも振り子のように揺れる。」と医師で作家でもある胸のうちを語る。医師としての先端医療を目指す方を「チームバチスタの栄光」の白鳥医師、市民の不安を「医者のたまご」の薫君に語らせるアニメが登場。薫君「そんなに急いで大丈夫?」、白鳥医師「おなかの中に幹細胞はたくさんある。若さや健康を得られんだ。」

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北九州中央病院の北村薫医師は、患者本人のお腹から幹細胞を取り出して、乳房の凹みに注入する手術を行なった。すると幹細胞が周囲の細胞を増殖させて、乳房の凹みが蘇った。シリコンを使った治療では、しぼむことが難点だが、これはしぼむこともない。治療を受けた患者も満足していた。

今は臨床試験の段階で、今のところ目だった副作用は出ていないが、後3年は臨床が必要だという。

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この治療が、イギリスでは一人歩きしている。アーメル・カーン医師は、乳房が再生することをみて、美容豊胸手術に踏み切った。

エミリーさんは20歳のモデルだが、乳房が小さいことを気にしていた。この手術で自然な大きさの乳房を手にして、自信を持ち、今はミュジカルスターを夢見ている。

カーン医師のクリニックでは顔の美容にも利用し、皮膚の若返りを自分自身の幹細胞を利用して行なう。幹細胞と脂肪を混ぜたものを顔の皮膚に注入し、張りのある頬を造った。費用は100万円だそうだ。

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動物にヒトの臓器を作らせる研究も進んでいる。

子豚に特殊なライトを当てると光るもの。緑の光を発するネズミなどを利用して、日本の自治医科大学の小林英司医師が、研究の先頭に立っている。ヒトの肝臓を豚に作らせることが進んでいる。

ヒトの幹細胞を豚の胎児に注入。幹細胞は豚の中でヒトの肝臓を造り育てる。成長した肝臓を取り出して移植するのだ。

ラットとマウスを使った研究では、ラットに蛍の遺伝子を組み込んで光らせて、その幹細胞をマウスに注入、するとマウスの臓器が光ってきた。

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将来を見据えて、幹細胞を保存する動きもある。アメリカでは幹細胞バンクが立ち上がり、なるべく若いうちに幹細胞を採取し冷凍保存し、将来弱ってきたときに使う。50年間保存できて費用は180万円だ。

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海堂さん「医療の目的とは別に、医師と患者の願いが一致したら、どんどん突き進んでいってしまうのではないか。」「顔を若返らせて、臓器を豚に作らせて、取り替えることが出来る。さらに親の愛情が次の扉も開いていく」

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必要な部品を作るために子供を作る。

アメリカのトレビング夫妻、長女のケイティが難病のダイヤモンドブラックハンという病気にかかり、赤血球がうまく作れない。三歳まで毎週輸血に頼ってきた。血液を造る幹細胞を移植するしかないが、HLAが合わないと移植は出来ない。医師は「もうひとりHLAの合う子供を作ってはどうか」と提案した。その幹細胞を移植するのである。

23個もの受精卵を造り、8個に分裂したところで型を調べていく。1個調べるために取り出しても、残り7個があれば細胞が作られていくことは確認されている。

2個が一致することが確認されて、妻は妊娠し「救世主兄弟」が誕生した。

1歳になってときに、この弟から幹細胞が取り出されて、姉に移植され、狙い通りに赤血球が造られるようになり、姉のケイティは元気になった。弟クリストファーにもこの話を徐々に伝えている。果たして大きくなった時どう考えるかは今後の成り行きだ。

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救世主兄弟は英国では大きな社会問題となっていた。

病気の子供を救うために兄弟を儲けた夫妻はイギリスにもいた。ジェイソン・パーカーさん夫妻だが、英国では議会でも激論となった。特に問題とされたのは臓器移植のためにつくられた兄弟だ。臓器をどんどんと提供するために生まれる兄弟。英国では厳しい条件が付けられた。

血液の障害に限定されて、臓器移植の目的は禁じられた。

一方米国では、法的な問題は無い。アメリカ生殖医学会は、「行動に責任を持つ。という自主規制でコントロールされる。」としている。

アメリカ・デトロイトに救世主兄弟を最も多くつくっている医師がいる。

マーク・ヒューズ医師だ。病気を持つ親から懇願されたのがきっかけだ。

最初は断ったが、自問自答した末に、親の願いを叶える方法を選んだ。

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海堂医師、 曽根崎薫は「お兄ちゃんのためのスペアじゃないか。」と嘆く。

米国は出来るだけ早く治療をとベクトル、英国では社会的コンセンサスを重視。翻って日本は議論も遠まわしだと指摘。

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英国ではヒトの精子を幹細胞から作り出すことも成功したと発表された。

つまり女性からも精子が造れるのだ。クローン人間作りがそこまできている。

アラブでは禁止されていないため、米国の医師がそちらで研究している。

新しい技術を受け入れるのか、受け入れないのか、私達はひとつひとつ議論をしながら決めていかなければならない。