その老人はひたすら体を鍛えていた。その理由はある戦いに決着をつけるため、

ルイ・ド・ブランジュ博士。彼が挑むのは数学の難問。

最も難しく、最も重要だといわれるのが「リーマン予想」

それは「素数」の謎を解き明かす鍵を握っているからだという。

1と自分自身でしか割り切れない数「素数」、まったく規則性が無いように見えるが、リーマン予想はそれを解き明かすという。

ブライアン・コーリー博士「これが解き明かされれば次の世界にいける。」

素数の謎に戦いを挑んだ数学者達の物語。

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あらゆる数は素数を掛け合わせることで出来上がる。素数は数の天使といわれ、小学生で習う。

数学者達が考えている素数の謎。無限にあるが気まぐれで不規則だ。

この素数の並びにどんな暗号が隠されているのか?リーマン予想はその謎解きの入り口だ。

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フランスのパリ郊外。ルイ・ド・ブランジュ博士が住む。史上最大の難問をなんとしても解き明かしたいと考える。それは宇宙を支配する物理法則が理解できるのでは!と考えるようになった。

何故、素数と宇宙の法則が関係するのか?それを過去の研究から紐解く。

レオハルト・オイラー博士は1749年にオイラーの論文を発表。素数と宇宙には何か関連があるはずだと考えた。

オイラーはある奇妙なものを想像することから始めた。「素数階段」だ。素数が出たときに一段あがるものだ。

しかし素数の位置はてんでんバラバラ。実に72個も素数が表れない’砂漠地帯’があったりで、わからないままだった。周囲は冷たく、’的外れだ。素数は無意味な数に過ぎない’と揶揄された。

ところがオイラーはある数学の問題を解く過程で、素数だけを使った式を作った。誰もが意味の無い数字が出てくると思っていたが、結果はπの2乗を6で割ったものだった。自然数の逆数の2乗の和がこれに収束する。

円を作り上げていることになり、宇宙の最も安定した姿である円、つまり素数と宇宙のつながりを見つけた。

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ベルンハルト・リーマンは、オイラーの見出した式をⅹに置き換えた「ゼータ関数」を見出した。

グラフを考えて「ゼロ点」の位置を捜すことにした。素数の散らばり具合から「ゼロ点」はバラバラに存在すると思われたが、予想に反して4つのゼロ点は1直線状に並んでいた。

素数はランダムなのに、ゼロ点は1直線上に並んでいるはずだと直感したリーマン。これがリーマン予想だ。

画期的だったのは、素数の並びに意味はあるか?という問いが、数学的に’ゼロ点は1直線状にあるか?’に置き換わった。

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20世紀初頭にイギリスにハーディーとリトルウッドという若きコンビが、数学界に君臨。そんな二人がたてたのがリーマン予想を解明するという目標だった。しかしそんな二人が最大の挫折感を味わう。

論文は直線上に無限に多くのゼロ点が存在することを証明した。

しかし直線上以外にゼロ点が無いことを証明しきれていなくて、違う山に登ったようなものだった。

苛立ち始めた二人はリーマン予想そのものに疑いの目を向け始めて、予想が間違いであってくれれば、人生はずっと楽だ!と語ってこの証明から手を引く。

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1950年代に世紀の天才とうたわれたジョン・ナッシュ博士。

映画の主人公にも取り上げられた。プリンストン大学の元教授で現在も存命。

博士は膨れ上がる期待の中で研究を続け、講演会の日を迎えた。

会場は満員となったが、博士の精神のほうが打ち砕かれていた。

それはその後30年以上博士を苦しめる統合失調症の表れだった。

数学の研究には自己の内面を研ぎ澄まされることで、この頃からリーマン予想は神の怒りに触れるのではないかと敬遠されるようになった。

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寄り道

IT関連企業でクレジットカードの暗証番号を保護する。その保管場所にカメラが入る。金庫の奥には「素数」が保管されている。

現代社会の通信の安全性は、一般にはわからない大きな素数で守られている。

巨大な素数が暗証番号を瞬時に暗号化し、伝送される。

したがって巨大な素数の謎が解明されれば、通信の安全性も確保されなくなるのだ。私達の暮らしと無関係ではなくなる。

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77歳の今になっても予想に挑戦するブランジュ博士。

原子や素粒子などのミクロの世界にも通じるという。ミクロの世界の空間に関連があるという。

博士によると、ミクロの空間と、ゼロ点の並びに関連性があるという。

リーマン予想に関しては数々の失敗をしてきた博士は、’狼少年’とのそしりも受けた。

数学界から孤立してもなお、証明にこだわり続けた博士は、それを宇宙法則の謎を解くことが人類にとって重要だと考えていた。

ミクロの空間と、ゼロ点の関連性についてある偶然が起きた。

フリーマン・ダイソン博士。息抜きにやって来た場所で、ヒュー・モンゴメリー博士と話しをする機会があった。

ダイソン博士は、モンゴメリー博士が急にゼロ点の話をしてきて、「ゼロ点の間隔」の式を示したという。ダイソン博士は「原子核のエネルギー間隔」の式と同一だとわかり驚いた。

原子核のエネルギーは一定では無く、何らかの間隔で飛び飛びになることがわかっていた。

その飛び飛びの間隔が素数のゼロ点の間隔と同じということ。いきなり表舞台に飛び出たミクロの世界と素数の世界。

こうして第1回リーマン会議が開催された。それまでタブー視されていたリーマン予想が、研究者達が協同して挑むべき課題とされた。

アラン・コンヌ博士がミクロの空間に関する新たな考え方を非可換幾何学から見出した。この新しい幾何学は大宇宙から原子核までの法則を見出すことが出来る可能性を秘めていた。

この最新の幾何学を使って、コンヌ博士を筆頭に素数に関する論文を次々と発表する。

素数の謎が解明されたときに、万物の理論も証明されるだろうといわれる。

素数は宇宙の創造主の謎が解明されるもとになるかもしれない。

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ド・ブランジュ博士は、現在も挑み続け、「終わった」とペンを置いた。分厚い論文が果たしてこのリーマン予想を証明したものなのかは誰もわからない。

「例え今回の証明が間違いだとわかっても、私は挑み続けるだろう。」

証明が検証されるには、少なくとも2年間、数学者達の検証が必要とされる。

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数式の部分が書き取れていないので、詳しくはこちらを

http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu/246_riemann.htm