カリフォルニアの巨大農場で作られるアキタコマチ。中国黒龍江省で作られるコシヒカリ。自給率39%の現実に日本の米農家も経営改革を迫られる。国の改革は自給率向上に繋がるのかを考える。というのが今夜のテーマ

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秋田県美郷町からレポート。新たな国の政策が自給率向上に寄与するかを半年以上取材を続けた。

5月51軒の農家がアキタコマチを植える。しかしコメの価格が下がり、収入が激変し、コメ農家も減り、かつての水田が草茫々になってしまっている。後継者不足も深刻だ。

6月大規模化に向けた整理計画を協議。20haを上回る田んぼを集団農場とし、大型機械導入により6000万円の経費を20%削減できると試算。しかし田んぼの中に家や墓が点在している現状、代々受け継いできた家や田んぼを動かすのは容易ではない。

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国は5年以内に集落を会社組織にするよう求めている。まずは水路の確保に関する共同作業も賃金をもらう作業に変わる。今までは手弁当でやっていたもの。何故か例年の2倍の人が参加したという。

画面は水路に飛ぶかう蛍。こうした風景もやがて見られなくなるのだろうか。

農家の作業を分担し、大型機械が入る部分は全て任せる方針が出るが、大型機械所有者は全てやることは困難と断る。集落全体の効率化と個人の事情の対立。

リーダーの細井さんは、水路の拡張を提案するが、そのために移動する田んぼの所有者からの反対、水路拡張費用負担の問題もあり、修正を余儀なくされる。

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一方、同じ美郷町にある山間の田んぼでコメを作っている小野寺さん。大規模化の国の政策からはずれているため補助は受けられなくなる。

しかし、コメ作りを止める気はない。山からの水を引き、大規模化とは無縁の土地で味の良いコメを作り続けていこうとする。コメ作りだけでは食べていけないため、田んぼをつぶしリンゴを栽培し、販売も自分自身で行う。貴重な現金収入だ。

補助金の査定は当然厳しいものとなり、小野寺さんも困惑。

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8月、大規模化を進める大畑地区に、コメの価格が大幅に下がる情報が入る。集落営農離れ、農業離れを心配する細井さん。大規模化への不安が集落全体に拡がる。新型コンバイン3台は届き、既に1000万円の借金。

前に進まなければ、借金返済も覚束ない。

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東京大学教授の本間正義さん。価格競争・市場メカニズムの中で「調整」される。

経済評論家の内橋克人さん。幅広い農業文化を失ってしまう。職業と食糧を作っていくのが農業。

政府は、こういった事情を踏まえて「大規模化」を進める必要がある。としている。

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40年以上前から大規模化を進めてきた大潟村の現状レポート。

広さ16haで大規模にコメ作りをする坂本さんを取材。コメの価格がどんどん下がり続け、経営経費ギリギリになり大型機械の借金返済にもままならない。消費者直接販売なども手がけたが、借金は7000万円に膨れ上がっていた。農協からは借金返済を迫る督促状。農協からの借り入れは限度額2500万円になっており、これ以上の融資継続は見送られた。

大規模化のモデル農家の1割が経営危機に瀕している。

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カリフォルニアのサクラメントバレー。ここでの生産コストは日本の3分の一。120haの規模である。

大潟村の農家涌井さん。コメの販売も手がけ、低農薬で安全性を高めたアキタコマチを通信販売。無洗米なども手がけ、売り上げを伸ばしてきたが、最近その売り上げに翳りが見えてきた。消費者のコメ離れと安いコメが市場に出回ってきたのが影響している。

そこで通信販売のみから、店頭販売へとうってでるが、他との差別化ではなかなか手を打てない。それでも涌井さんは農家に16000円という農協より高い価格で買い入れることを明言。

農家の人は「モデル農村で、やっていけないようになったらつぶれるしかない」涌井さんは必死の売込みを続ける。

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大規模化に対する専門家の意見。

東京大学鈴木教授・・・大規模化を進めても、アメリカやオーストラリアの規模にはかなわない。市場の常識では考えられない。

東京大学本間教授・・・コメは野菜のひとつという考え、コメは作りさえすれば売れるという時代は終わった。

経済評論家内橋さん・・・農業の社会的意義を見直していかなければならない。いつまでも他国に頼ることは危険。

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日本でしか作れないと思われたブランド米が各国で作られ、グローバル化は否応なしに押し寄せてきている。日本の農業を守り育てるべきなのか、輸入に任せるべきなのか、国の今後のありかたを問うことに。

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今夜の感想・・・こりゃ難しい問題だなあ。ただ現実としては、グローバル化の中で日本でコメだけで(保存が利いて運搬輸送が容易)農家が生計をたてていくことは難しい。後継者不足もあるから、市場に任せたらこのまんまではきっと近い将来、コメ作り農家は数えるほどしかいなくなるだろうなあ。水田がどのような生態系を維持していたかとか、日本の里の風景保存とかは全く無視した形でね。市場経済ってそういうもんだと思うけど、生き残るにはよほどブランドを確率するか、販路を工夫するかなどしかないけど、その途は厳しい。