監督:サム・テイラー=ウッド
ジョン・レノン: アーロン・ジョンソン
ミミ・スミス: クリスティン・スコット・トーマス
ジュリア・レノン: アンヌ=マリー・ダフ
ポール・マッカートニー: トーマス・サングスター
お勧め度 ★★★★★ 星4.8w ビートルズファンはもちろん、ロックを目指す若者たちに是非見てほしいです。もしかしたら名作かもしれませんよ!!
<ストーリー>
若き日のジョン・レノンと彼の2人の母親の交流を描いた青春ドラマ。1950年代のリバプール。厳格な伯母ミミに育てられているジョンは、近所に実の母親ジュリアが住んでいることを知り、ミミに内緒で会いに行く。自由奔放なジュリアからロックミュージックを聞かされたジョンは音楽活動にのめりこんでいくが、17歳の誕生日にある事件が起こり……。英国の人気芸術家サム=テイラー・ウッドの長編映画デビュー作。ジョン役には「キック・アス」のアーロン・ジョンソン。共演にクリスティン・スコット・トーマス。<映画comより>
ネタばれあり・・・・・見終わってから読んでね!!
「みんな!タイムマシンに乗ってジョンの若いころを見に行こうよ!」半兵衛
この作品はジョンがビートルズを結成する前までの物語です。そこにはミミ叔母さんや母親のジュリアンがとても重要に関わってきます。
二人の姉妹の織りなすコントラストは凄く、こうも違う姉妹がいるものかと関心するほどです。
そして反抗期の真っただ中、二人の母親の間に挟まれて、二人の母を愛し、翻弄されるジョンの姿が、描かれています。
しかし、こんなに正反対に思える姉妹でも、ジョンに対する深い愛情は同じでした。

<ミミ叔母さん>
気丈で厳格を絵に描いたような叔母のミミは、母ジュリアと父アルフレッドの間で翻弄される幼いジョンを見かねて、引き取り、わが子同然に育てました。
自分の旦那が死んでしまったばかりなのに、涙一つも見せず、何もなかったように洗い物をはじめ、泣きじゃくるにジョンに「しっかりしなさい、これからは二人っきりなのよ」となだめるシーンに彼女の気丈さが描かれます。
※若いころは、看護婦や秘書をしており、夫Georgeが1955年6月5日に亡くなった後は、学生を下宿させるなどして家計を切り盛りしました。

<ジュリア>
自由奔放を絵に書いたような母ジュリア
ジョンは16歳になって、母親が歩いて15分足らずの所に住んでいるのを知り、急速にジュリアに近づいていきます。
本来ジョンに会いたくて仕方なかったジュリアはまるで恋人のようにジョンに接していきます。
バンジョーを教えたり、エルビスの映画を見せたり、どんどん音楽の世界に引き込んでいきます。
そして、ジュリアに感化されエルビスのようになりたいと思ったジョンは、クオリーバンク中学校から名前をとった、クオリーメンというバンドを結成するのです。
ジュリアとの再会がジョンを音楽に目覚めさせたのです。その再会がなければ、ビートルズは生まれていなかったと思うと感慨深いですね。

<ポールとの出会い>
クォリーメンの初演やポールとの出会いも、ビートルズファンを熱くします。
歴史的な名場面に立ち会う事が出来ます。
セント・ピーターズ教会で共通の友達アイバン・ボーンを通じて紹介されたポールはエディ・コクランの新曲「 Twenty Flight Rock’」を正しいコード進行と歌詞でジョンに披露しました。当時、コードも歌詞もお構いなしに演奏していたジョンは、ポールに感服させられ、ポールは1週間後にはクオリーメンに参加していました。
早くに母親を癌で亡くしたポールに対して、少なからず、共感する部分があったジョンが、意気投合していく姿が、よく描かれています。
「人生のうちで2回、すばらしい選択をした。ポールとヨーコだ。それはとてもよい選択だった。」

<問題児ジョン>
ジョンの問題児ぶりの少年時代も良く描かれています。
特にごろつき風になっているところがいいですね
先生のお説教に始まり、
バスの屋根に乗ったり、
レコードの万引き
下半身丸出し
停学処分やその手紙の隠滅工作
しかし、ここまで不良しているのに、子分も沢山いましたね。
根っからの親分肌なのですね、
先生にお説教され、「このままでは落ちこぼれて行き場が無くなる」と説教されますがジョンがすかさず、「それは天才の溜まり場?」と切り返すシーンがありますが、ジョンは自分の事を天才かキチガイだと思っていましたが、シュールリアリズムを知ると、やはり自分は天才であると自覚して、何故周りの人は理解してくれないのだろう?と思っていたそうです。
<フィクション?>
事実は小説より奇なりとよく言いますが
人が考えてつくられたようなフィクションではなく、紛れもなく、ジョンの少年時代を元にしています。
真実のストーリーに沿って作られたからこそ、リアリティーがあり、そこには素晴らしい感動があるのだと思います。
しかしながら、ジョンを題材にした完成度の高い青春映画として見たほうがよいかもしれませんね。
全てが真実ではありません。
・ジョンが初めてギターをミミに買ってもらうシーンがありますが、実際には通信販売でミミに買って もらったそうです。
・母ジュリアの死亡シーンは横断中に車に跳ねられていますが、実際にはバス停でバスを待っている時 に、非番の酔っ払いの警察官の運転する車に跳ねられたそうです。
・ジュリアの葬式でポールがジョンに殴られるシーンで、ポール自身がこの映画を見て、「殴られた記 憶なんて無い」と言っています。
<演技>
俳優陣も、素晴らしいですね、
演技の下手な人気アイドルを使うなんて何処かの国みたいなことはしませんからね、ちゃんとオーディションで、役を決めています。特に二人の母親の演技は本当に素晴らしいと思いました。主役のアーロン・ジョンソンも結構ジョンに似ていて、リバプール訛りも習得して頑張ってます。
観客は彼にジョンを重ね合わせるわけですから、彼の演技によってお客さんのこの作品に対する入り込み方が違ってくるのですが、私はすんなりジョンと重ね合わせる事が出来ました。それだけ素晴らしい演技をしていたのだと思います。
<ジョンのコメント>
「僕には家庭があったんだ。叔父と叔母がいて、郊外の家があった。とても感謝しているよ、叔母さん。ぼくの言うことを聞いてよ。ポールが最近、ぼくがショーンと家の中に引きこもってるのは、家庭生活といいうものを持ったことがないのが原因だと言ったことで、叔母は傷ついているんだ。あれは、とんでもないたわ言さ。ぼくにとっての家族だった、5人の、強くて頭の良い女性がいたんだ。5人姉妹さ。そのうちのひとりが、たまたま僕の母親だった。ぼくの母親は末っ子だったんだ。母は自分の人生にうまく対処出来なかっただけなんだ。夫は海へ出てしまうし、戦争が始まっていたし、息子の僕を扱いかねていたんだ。それで、4歳半の時、ぼくは母の姉と住むことになったんだよ。母の姉たちはすばらしい女性たちでね。いつか、この人たちだけについて『フォサイト家物語』を書くつもりなんだ。ぼくにとっては、女性を尊敬することを教えられた最初の機会だったな。」<プレイボーイインタビューより>
<感想>
どうしてもジョンに思い入れがあって見てしまいますが、恐らくジョンを全く知らない人が見ても素晴らしい作品だと思います。
戦争が終わって間もない1950年代に、ある若者が、近くに住む生みの母親を見つけ、友達のように親しくすることができるようになりますが、生みの母親には新しい家族があり、次第に遠ざけられ、愛するあまり、生みの母と育ての母の間に翻弄され、自分の立場がつかめず、その中で揺れる少年の心が見事に描かれています。何故こんなに優しいお母さんと一緒に暮らすことができなかったのか?何故、僕はお母さんに捨てられたのか?やっと母と友達のように親しくする事が出来た矢先に突然襲う母親の死。
やがて、若者は母親の死の悲しみを乗り越え、手探りのうち、同じような境遇の友、生涯の盟友(ポール)を得て育ての母親の元から離れ、自立する決心をします。
ドイツに行くためにパスポートに必要な出生証明書をミミに要求します
ミミ 「どの欄にサインするの?」
ジョン「確か親か保護者の欄」
ミミ 「私はどの欄にサインするの?」
ジョン「両方だよ」
言葉にこそ出しませんでしたが、ジョンはミミにあなたは私の母であり、保護者であるとさりげなく、感謝の心をうちあけたのです。
ミミにとっては最高の喜びだったのではないでしょうか
そして不良で落ちこぼれの若者がロックという世界に挑戦しようと旅立つ姿はとても感動的です。
その決意こそがビートルズを世界一に押し上げた決意なのです。
気になるのは、恋人シンシアが全く出てこなかった事ですが、時系列で見ればジュリアンの交通事故の約3ヶ月後がシンシアとの出会いとなります。
The Quarrymen - In Spite Of All The Danger
Paul McCartney "In Spite Of All The Danger" & "20 Flight Rock" (Live)