井波律子訳『三国志演義』(ちくま文庫、全7巻) | 文学どうでしょう

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井波律子訳『三国志演義』(ちくま文庫、全7巻)を読みました。Amazonのリンクは1巻だけを貼っておきます。

今回は長くなりそうだったので、記事を3つに分けました。このページでは、『三国志演義』そのものについて、小説やマンガ、映画などに触れながら紹介していきます。

あらすじで1ページ、それから、みなさんに好きな登場人物についてコメントしてもらおうと思って、また別に1ページ作ったので、じゃんじゃんコメントを残していってくださいな。

◆ 『三国志演義』のあらすじ

◆ 『三国志演義』で好きな登場人物は?

『三国志演義』の時代背景


紀元前221年、始皇帝が建国した秦によって、中国は初めて統一されました。今残っているものは後の時代に増設されたもののようですが、みなさんご存知の「万里の長城」を作ったことでも有名ですね。

秦の末期の混乱期にぶつかり合ったのが、項羽の楚と劉邦の漢という国で、激しい戦いをくり広げた結果、劉邦が勝利し、漢という統一王朝が作られました。

ちなみに、「背水の陣」「国士無双」「四面楚歌」などの有名な故事成語や、「虞美人草」という名前は、この辺りの出来事が元になっているんですよ。

漢は一度は滅んだのですが、再び再興したので、それぞれ前漢、後漢と呼ばれます。『三国志演義』は、この後漢の末期から始まります。

『三国志演義』の中で、劉邦の軍師である張良や大元帥(総大将)韓信について、よく話題になります。

また、それぞれが漢の正統な後継であることを謳ったりもするので、『史記』に記された項羽と劉邦の争いについての知識があると、『三国志演義』は、より一層楽しめるかも知れません。

また、小説で読みたいなら、司馬遼太郎に『項羽と劉邦』という作品があります。

やがて後漢が滅び、三つの国が出来ました。魏、呉、蜀の三国です。

後漢の皇帝を排して新たな王朝を打ち立てた魏、江南を支配していた呉、四川を支配し漢の血筋を引くと称する劉備によって建国された蜀。

それぞれが勿論、天下統一を目指して戦いをくり広げるわけですが、あちらと戦えばこちらが攻めてくるといった形なので、まさに三竦みの状態(にらみ合って動けない)です。

はたして、三国時代は一体誰が、いかにして統一することになるのでしょうか。

様々な英雄豪傑たちが登場し、後漢の末期から三国時代の終焉までが描かれる『三国志演義』。

小説やマンガ、映画、ゲームなど、色んな形で今でも愛され続けていますよね。登場人物は共通しているので、その内のどれを知っていても話が盛り上がるのが、『三国志演義』のいいところです。

『三国志』と『三国志演義』


日本では『三国志』自体が物語を指すこともありますが、元々『三国志』は歴史書です。ぼくもまだ読んだことはありませんが、ちくま学芸文庫から全8巻で翻訳が出ています。

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皇帝が命じて書かれたものではなく、蜀に仕えていた陳寿によって編纂されたものですが、後に評価が高まり、正史としての扱いを受けるようになったようです。

この『三国志』の中に、邪馬台国から魏に訪ねて来た倭人の記録があります。いわゆる「魏志倭人伝」ですね。この記録によって、邪馬台国の存在が分かりました。

歴史書である『三国志』をベースにして、『三国志』は明代に物語として作り直されます。それが『三国志演義』です。作者は羅貫中とも言われていますが、よく分かっていません。

小説というよりは、講談などの形で民衆に愛されて来たものがまとめられたという感じです。

また、白話小説(話し言葉で書かれたもの)であるというのも大きな特徴で、日本にも江戸時代に入って来て、江戸の戯作などに、大きな影響を与えました。

そして後には、『三国志演義』自体を、さらに日本の読者に分かりやすくアレンジした小説が出るようになり、日本でも定着していくこととなります。

その時に、タイトルとしてそのまま『三国志』とつけられることが多く、日本では『三国志』と言えば、歴史書ではなく、そのまま物語を指すようにもなっていきました。

『三国志演技』の小説、マンガ、映画について


『三国志演義』をちゃんとした翻訳で読みたいなら、今回紹介する井波律子訳のちくま文庫が、注も解説も丁寧なので、一番いいだろうと思います。

翻訳ではなく、日本人向けにアレンジされた、読みやすいものがよいなら、ある種の決定版であり、今なお一番おすすめなのが、吉川英治の小説、『三国志』です。

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全8巻と結構長いですし、オリジナルの要素も多いですが、蜀が中心となるスタンダードな構成をしており、テンポがよく、読みやすく面白い作品です。

吉川英治版でキャラクターとストーリーの流れを把握したら、より大胆なアレンジが加えられている柴田錬三郎版や北方謙三版の『三国志』に進んでいくとよいかと思います。

また、蜀ではなく魏や呉を中心にした作品や、『三国志演義』を物語の背景において展開する小説など、『三国志演義』に関連した作品はたくさんあるので、色々と探してみて下さい。

小説でもちょっときついという方は、マンガで楽しむという手もあります。

やはり決定版なのは、横山光輝の『三国志』でしょう。コミックスは全60巻、文庫版だと、全30巻。学校の図書室などにも、多分置いてあるんじゃないかと思います。

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このマンガを読んで、『三国志』のファンになったという方も多いのではないでしょうか。シンプルな絵柄ながら、ドラマチックな物語が再現されていて、病みつきになります。

原作のクレジットはありませんが、吉川英治のオリジナルエピソードなども組み込まれているので、ある程度、吉川英治の『三国志』がベースになっているのだろうと思います。

なので、横山光輝のマンガが好きな方は、吉川英治の小説も楽しめるはずです。ぜひ次は小説を読んでみてください。

マンガは他にも、悪役とされることの多い曹操を主役にした王欣太の『蒼天航路』や、高校生の男女が『三国志』の時代にタイムスリップする山原義人の『龍狼伝』などもおすすめです。

横山光輝のマンガは面白そうだけど、ちょっと長いなあという方は、映画で楽しむという手もあります。

原作自体が非常に長い作品なので、決定版と言えるものがなかなかなかったのですが、今や一つの決定版とも言えるのが、ジョン・ウー監督の『レッド・クリフ』でしょう。

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『レッド・クリフ』は劉備(後の蜀の皇帝)と孫権(後の呉の皇帝)の連合軍が曹操(後の魏の礎を作った人物)に立ち向かう「赤壁の戦い」を描いた映画。

トニー・レオン演じる孫権軍の都督(司令官)周瑜が主人公です。金城武演じる劉備の軍師、諸葛亮孔明と共に、様々な軍略を立て、巨大すぎる曹操軍に立ち向かっていくこととなります。

ぼくは諸葛亮へのコンプレックスを抱える周瑜の、屈折した感じが元々好きなので、爽やかすぎる周瑜に色々思うことがなくはなかったです。

『三国志』ファンからすると、キャラクターや話の展開など、色々ツッコミどころ満載の映画ではあります。

ただ、恋愛的な要素が前面に押し出されているので分かりやすいですし、戦闘場面などの迫力はもうかなりすごいです。さすがアクションに定評のあるジョン・ウー監督作品ですね。

『三国志』入門にはとてもよいと思うので、興味を持った方は、ぜひ観てみてください。

小説、マンガ、映画と、それぞれのおすすめを紹介しました。その他にも数々のゲームになったり、またドラマなどもあります。

色んな入口がありますので、まだよく『三国志』を知らないという方は、入りやすそうな所を見つけて、『三国志』の世界に触れてみてください。

登場する英雄豪傑たちは、それぞれとても魅力的な人物ばかりなので、すぐに物語に夢中にさせられてしまうはずですよ。

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