5作品で分かる! カンフー映画特集 | 文学どうでしょう

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立宮翔太の読書ブログです。
日々読んだ本を紹介しています。

「そうだ、もうブームは過ぎちゃったような気がするけど、なんだかカンフー映画を観てみたいな! なにかおすすめない?」と思った方のために、おすすめの5作品を選んでみましたよ。

◆ 『少林寺三十六房』

◆ 『ドラゴンへの道』

◆ 『酔拳2』

◆ 『マスター・オブ・リアル・カンフー/大地無限』

◆ 『レジェンド・オブ・ヒーロー/中華英雄』

周辺の作品についてもちょこちょこ書いておくので、この記事を読めば、あっという間にみなさんもカンフー映画通になれること請け合い!

番外編として、カンフー映画ではないですが、ウォン・カーウァイ監督とジョニー・トー監督についても少し書いておきました。

少林寺もの


カンフーと言えば少林寺、少林寺と言えばカンフーと言っても過言ではありません。

「少林寺」という名前のついたカンフー映画は何本もあり、リー・リンチェイ主演の『少林寺』も勿論捨てがたいですが、今回おすすめするのは、『少林寺三十六房』です。

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家族を殺され、命からがら少林寺にたどり着いたリュー・チャーフィー演じる主人公は、復讐心を胸に、ひたすらカンフーの修行に励んでいって・・・。

三十六房の「房」とは部屋のことで、それぞれの部屋ごとに異なる修行が待ち構えているんですね。

主人公が延々修行していくだけという非常に地味な物語ながら、いつの間にか拳を握りしめて応援してしまいます。

物語的な面白さはさほどないものの、何故か引き込まれてしまうという、不思議な魅力のある映画です。

見終わった後は、少林寺の修行の真似をして、「はいッ! はいッ! はいッ!」と思わず拳を突き出してしまうはず。

リュー・チャーフィーは、クエンティン・タランティーノ監督の熱烈なオファーを受けて、『キル・ビル』に師匠役で出演していました。

ここで、カンフー映画の黎明期について少し触れておくと、キン・フー監督の作品は外せません。

現在のように細かいカット割り、スピード感あふれるカンフーではないですが、ストーリーがしっかりしていて、独特の雰囲気があります。『大酔侠』がおすすめ。

ジミー・ウォング主演の『片腕カンフー対空とぶギロチン』も、機会があればぜひ観て欲しい作品。

アクションがとにかく大事で、ストーリーはどうでもいいというB級感漂う感じが、逆にもう気持ちいいです。それが香港映画というものですよね。

ブルース・リー


香港が生んだ世界的カンフースターと言えば、まず何と言っても、ブルース・リーです。

ジークンドーを作り上げた格闘家でもあり、その鍛え上げられた肉体による素晴らしいアクションは、今なお多くの人から愛され続けています。

ブルース・リーから一本選ぶとなると、孤島での武術大会に参加し、ある組織の謎に迫ろうとする『燃えよドラゴン』に文句なしで決まりでしょう。

作中にブルース・リーが言う「Don't think.FEEL!(考えるな、感じるんだ!)」は、『機動戦士ガンダム』におけるアムロの「親父にもぶたれたことないのに!」や、『北斗の拳』におけるラオウの「我が生涯に一片の悔いなし!」と並んで、元ネタを知らない人でも思わず使いたくなる名ゼリフ。

ストーリーというよりは場面のインパクトのある映画で、鏡の部屋など、数多くパロディされていることでも有名ですよね。

ただ、ブルース・リーの映画は、シリアスで、本格的すぎて、やや重いという印象をお持ちの方も多いだろうと思うので、そんな方にあえておすすめしたいのは、『ドラゴンへの道』です。

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『ドラゴンへの道』は、イタリアを舞台にした映画で、コロッセオでのチャック・ノリスとの戦いは、ブルース・リーの映画でも屈指の名勝負と言われています。

しかしながら、この映画の大きな魅力は、基本的にはコメディタッチの映画だということです。

勿論ドタバタしたコメディではありませんが、外国での思わぬ失敗など、何だかユーモラスなタッチで進んでいく映画なんです。

いつもは悲痛な顔をして叫んでいるブルース・リーの、新たな一面を見ることの出来る映画ですよ。

同じくイタリアを舞台にしたオードリー・ヘップバーン主演の名画『ローマの休日』とあわせて観たい一本。

ジャッキー・チェン


若くして亡くなったブルース・リーの後を継ぐようにして、香港映画界を大きく変えたのが、みなさんご存じのジャッキー・チェンです。

コミカルなアクションが特徴的なジャッキー・チェンは、過激なスタントを自らこなすことでも有名で、実際に撮影中に何度も大怪我をしています。

ぼくはユン・ピョウが好きなので、ジャッキー・チェン、ユン・ピョウ、サモハン・キンポーがそろって出演している『プロジェクトA』や『スパルタンX』が好きですねえ。

ただ、ジャッキー・チェンで一本選ぶなら、間違いなく『酔拳2』です。

わりとへそ曲がりのぼくは、あえてちょっとマイナーなのを選ぼうかと思って色々考えたんですが、やっぱりこれは変えられませんでした。

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ジャッキー・チェン演じる主人公は、酔えば酔うほど強くなる「酔拳」の使い手なのですが、危険だからと父親から「酔拳」を使うことを禁じられています。

しかし、中国の国宝を奪おうというイギリスの陰謀に巻き込まれて・・・。

コメディもアクションも抜群によくて、何度観ても飽きない、楽しいカンフー映画です。ある種カンフー映画の決定版と言ってもいいのではないでしょうか。

何から観たらいいか迷ったらこれです。万人が楽しめる名作カンフー映画です。

タイトルに「2」とありますが、前作との繋がりは全くないので、あまり気にしないで大丈夫です。

そうそう、ジャッキー・チェンが好きな方は、三大喜劇王の作品をぜひ観てみてください。ほとんどがサイレント(音なし)時代の映画ですが。

三大喜劇王というのは、チャールズ・チャップリン、バスター・キートン、ハロルド・ロイドのこと。

チャップリンはよく知られていますが、キートンとロイドは残念ながら、今ではもうほとんど全く観られていないようです。

無表情でとんでもないアクションをこなすキートンや、ビルを登るなど斬新なアイディアを映画に盛り込んだロイドの作品は、ジャッキー・チェンの映画に大きな影響を与えているんですよ。

特にぼくはロイドが大好きなんです。『ロイドの要心無用』がおすすめ。

ロイドは弱々しくて、でもいざとなったら勇気をふりしぼってがんばるという、『ドラえもん』ののび太のようなキャラクターで、どの作品も、観客に笑顔と勇気を与えてくれるものばかり。

リー・リンチェイ/ジェット・リー


ジャッキー・チェンは、アクション満載の作品の中でも、徹底的に笑いにこだわった作品作りをしていました。

一方、武術大会で何度も優勝をした経験を持つ、本格的なアクションスターがリー・リンチェイです。ハリウッドでは、ジェット・リーの名義で活躍していますよね。

リー・リンチェイの代表作は、伝説的人物の黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)を演じた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズで、とにかくもうかっこいいんですよ。

「無影脚」といって、何度も蹴りを繰り出す必殺技があるんですが、カンフー映画史上ぼくが最も真似をした技です。ババッ! と服を直す仕草もしびれます。

「ワンチャイ」はとにかくシリーズがたくさんあるので、そこからあえて少し外して、リー・リンチェイでおすすめしたいのが、『マスター・オブ・リアル・カンフー/大地無限』なんです。

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カンフーの技というのは、強ければ強いほど、速ければ速いほどいいというのが当たり前なのに、それとは全く逆の技を編み出す物語。そう、その武術こそ、かの太極拳。

少林寺を追い出され、様々な挫折をくり返しながら太極拳を編み出していく主人公の姿に、単なるカンフー映画を越えた感動があります(多少大げさですが・・・)。

シンプルながら、太極拳の持つ壮大なイメージが重なる、とても印象深い映画。

ちなみに、リー・リンチェイファンなら、ハリウッド進出のために悪役を演じた『リーサル・ウエポン4』は見逃せませんよ。

メル・ギブソン演じる刑事と戦うことになるわけですが、悪役なので、まあそれなりの扱いをされるわけです。

「香港なら殺してる」とリー・リンチェイは作中で静かに呟くわけですが、普段は映画鑑賞中、大人しいぼくが、何度も「ほんとだよ!」と興奮して叫んでしまったほど、珍しい役柄を演じています。

CG全盛期


ブルース・リー、ジャッキー・チェン、リー・リンチェイはいずれも本格的にアクションが出来る俳優でしたが、時代の変化に伴って撮影技術が向上し、細かいカット割りや、CGが使えるようになってきました。

そうすると、アイドル的な俳優がアクションもこなすようになり、その中で非常に香港映画的な荒唐無稽さを持つ、とんでもなく面白い作品が生まれていくこととなります。

特に印象に残るのが、馬栄成のマンガを原作にした、『風雲ストームライダーズ』で、イーキン・チェンとアーロン・クォックが対照的なキャラクター、風と雲を演じた映画。

『風雲ストームライダーズ』も、もの凄く奇想天外というか、かなりぶっ飛んだ映画なのでぜひ観てもらいたいですが、その上をいくびっくり仰天の映画があります。

同じく馬栄成のマンガが原作、イーキン・チェン主演の『レジェンド・オブ・ヒーロー/中華英雄』です。

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アメリカに渡ったイーキン・チェン演じる青年に、様々な困難が降りかかるものの、異国の地でついに立ち上がるという物語。

鳥山明の『ドラゴンボール』を、本気で映画化しようとしたらこうなるんじゃないかという感じの、CG満載のどえらいパワーが炸裂する映画です。

初めて観た時は、ど派手な映像、ぶっ飛びの展開に腰抜かしそうになりました。でもとにかく面白いんです。細かいことは気にしねーぜ! という香港映画の魅力がたっぷり詰まった作品。おすすめです。

番外編


香港映画の魅力というのは、カンフー映画だけではなくて、アクションからラブストーリーまで、好きな映画を挙げていくともう切りがないんですが、その中でも、この機会にどうしても紹介したい2人の映画監督がいます。

それは、ウォン・カーウァイとジョニー・トー。

どちらも、香港映画の中ではかなり有名な映画監督ですが、意外とあまり観られていないと思うので、機会があればぜひ観てみてください。

ウォン・カーウァイ


ウォン・カーウァイは、独特の色彩、スタイリッシュな映像、そして難解なストーリーで知られる映画監督です。

香港の映画界というのは、面白いものがあるとすぐ取り入れる風潮があるんですが、主人公が止まっていて、周りの人々だけが動くカットなど、いわゆる「ウォン・カーウァイ風」の場面は、よくネタとして使われるほど(チャウ・シンチーとかに)。

『花様年華』や、日本から木村拓哉が参加したことでも話題になった『2046』など、物語をうまく伝えようというよりは、よく分からないように作られているものが多く、そうした点でスタンリー・キューブリックに似ている感じがあるかも知れません。

そんなウォン・カーウァイ監督作品で、とにかくおすすめの作品が『欲望の翼』です。

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レスリー・チャン、マギー・チャン、ジャッキー・チュン、アンディ・ラウなど豪華俳優が出演している青春群像劇ですが、村上春樹の作品に影響を受けていると言われることもあるくらい、どことなく憂鬱で、文学性豊かな雰囲気の作品になっています。

伝わった感情ではなく、伝わらない感情が描かれるというめずらしい物語。レスリー・チャンとマギー・チャンが共有する一分間など、場面場面がとても印象に残ります。

ジョニー・トー


ジョニー・トーは日本ではあまり知られていませんし、「香港ノワール」といって、いわゆるギャングを描いた作品が多いので、あまり女性受けはしないかも知れませんが、ぼくがとにかく好きな映画監督です。

「香港ノワール」を代表するジョン・ウー監督(『男たちの挽歌』シリーズなど)と比較するとその作風の違いが明確になるのですが、ジョニー・トーは男のロマンが協調された、どこか甘ったるい雰囲気を持っているのが特徴的。

愛嬌あるラウ・チンワンが犯人と知的戦いをくり広げる『暗戦』シリーズはとにかく夢中にさせられますし、レオン・ライ主演の『ヒーロー・ネバー・ダイ』には、ただただ心打たれました。

毎回、観客を興奮と感動の渦に巻き込んでくれるジョニー・トーの作品の中でも、特におすすめなのが、『ザ・ミッション/非情の掟』です。

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香港映画ファンの間ではよく知られている作品で、「おお~、ベタなの来たなあ」という思った方もいるでしょうが、まだ観たことのない方はぜひ観てみてください。とにかく面白い作品です。

5人のプロフェッショナルが、裏社会のボスの護衛というミッションに取り組むという物語。しかし、やがて思わぬ出来事が起こってしまい・・・。

アクション、ストーリーもずば抜けていいですが、何より素晴らしいのはそのキャスティング。

ン・ジャンユー(フランシス・ン)やロイ・チョンなど、数々の香港映画で悪役をつとめている、くせ者俳優が集められているから、もうたまりません。

静かな映像の中に、男の美学が光る名作です。

カンフー映画を5作品、番外編を2作品、その他ちょこちょこ香港映画を紹介してみましたが、いかがだったでしょうか。

今どのくらい香港映画が観られているのか、ぼくは感覚としてはちょっとよく分かりません。

作品の完成度は高くなく、芸術性に乏しいものが多いといえば多いですが、とにかくハチャメチャで面白いものが多いので、機会があればぜひ香港映画を観てみてくださいね。