バンジャマン・コンスタン『アドルフ』 | 文学どうでしょう

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アドルフ (岩波文庫)/コンスタン

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バンジャマン・コンスタン(大塚幸男訳)『アドルフ』(岩波文庫)を読みました。

150ページほどの短い作品ですが、この中に小説として大切なことがぎゅっとつまっている感じです。

岩波文庫の表紙には、「近代心理小説の先駆をなす作」と書かれています。心理がいかに書かれているかはまあともかく、設定はベタながら面白いです。

『アドルフ』は、アドルフという男の手記になっています。〈私〉は、22歳。いいところの出で、父の期待を背負っている。

そんな〈私〉が恋してしまった相手はエレノールという女性。うら若き乙女ではなく、ある伯爵の愛人であり、〈私〉よりも年上の女性。

2人は愛し合うようになりますが、周りはそれを許しません。そして〈私〉のエレノールに対する気持ちも徐々に変わっていきます。

そんな話です。単に愛が描かれるのではなく、身分の差や年齢の差など、現在でも変わらない愛の障害が描かれるのが特徴的です。

恋愛をしていながら、どことなく冷静な部分があったり、ものすごく盛り上がった気持ちが一気に下がるなど、いくつかフランス文学の特徴とも言えるものがあります。

ラブラブな小説を読みたい人にはむきませんが、ちょっとフランスの心理小説を読んでみたい人は読んでみるとよいです。

もし気に入ったら、スタンダールの『赤と黒』をおすすめします。こちらもかなり面白いですよ。