『グローバリゼーション・パラドクス』 | くらえもんの気ままに独り言

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 今回はダニ・ロドリック著『グローバリゼーション・パラドクス』を読んだ感想を書かせていただきます。もちろん原著ではなく、最近、柴山桂太先生と大川良文先生が邦訳されたものを読みました(;^_^A


 この本はグローバリゼーションの本質を突いた良書ですね。今回も数回に分けて感想を書いていきます(と言いますのも、まだ読み終わっておりませんので・・・。それと、しばらくブログネタに困らないため・・・。)


 というわけで、今回は各章の注目フレーズを引用しながら、それにコメントする感じで書いて行こうと思います。


序章 グローバリゼーションの物語を練り直す

『私の選択を言わせてもらうと、民主主義と国家主権をハイパーグローバリゼーションより優先すべきだと思う。民主主義は各国の社会の在り方を守るための権利を持っており、グローバリゼーションの実現のためにこの権利を放棄しなければならないのであれば、後者をあきらめるべきなのだ。(18P)』


 これはいわゆる世界経済のトリレンマ(民主主義・国家主権・グローバリゼーションを同時に追及することは出来ない)に対する筆者の考えでございます。いやぁ、まったくもってごもっともです。グローバリゼーションを追求するために民主主義or国家主権を放棄するというのは愚かとしか言いようがないですね。ちなみに民主主義を放棄した例が中国国家主権を放棄した例がEU諸国というわけですな。日本もグローバリゼーションを推進するために国家主権を手放していく気マンマンのようです(民主主義のプロセスもすっ飛ばしているような気もしますが)。


第一章 市場と国家について

『よく機能する市場経済はすべて、国家と市場、自由放任と介入の組み合わせである。その組み合わせは、それぞれの国の選好、国際的な地位、そして歴史的な経路に依存する。しかしどんな国も、公共部門が実質的な責任を負うことなしに発展することはできない。(42P)』


 市場が適切に機能するためには、国家の介入が必要ということですね。そりゃあ、市場に任せていたらまとまりなくなってしまいますから、国家による保障やルールが必要というのもうなずけます。市場と国家というのは対立するものではなく、補完し合うものなんですね。これが、グローバル市場の話になるとおもしろくて、グローバルな市場も市場ですから国家の介入がないと機能しないのですが、なんと貿易をやっていくのには国家が邪魔なんだと(笑)!!グローバリズム詰んでますなぁ(^ε^)♪


第二章 第一次グローバリゼーションの興隆と衰退

『優れた政治学者ロバート・コヘインが記しているように、「市場の論理の追及は、長い目で見れば悲劇的な結果をもたらした。産業も多様化せず、工業化も進まなかった南部の経済に与えたインパクトは致命的だった。綿花王がこうむった社会的、政治的影響はさらに深刻だった。奴隷制はすっかり定着し、南北戦争は避けがたいものになった」。他の経済的影響がなんであれ、十九世紀アメリカの自由貿易は社会的・政治的制度としての奴隷制をますます強化し、強固なものにした。アメリカの政治制度の発展に与えたダメージは推測に頼るしかないが、好ましいものだったとは思えない。(48P)』


 十九世紀のアメリカにおいて北部では工業がメインで、イギリスに追いつくまでは保護貿易を求めていたのに対して、南部ではたばこや綿花の輸出がメインで自由貿易を求めていたわけです。この後、北部が南北戦争に勝利し、保護主義国家となることでアメリカは急成長を遂げていくということですね。自由貿易とは必ずしも良い結果をもたらすものではないということの一例でしょう。第一次グローバリゼーションがなぜ起こって、なぜ衰退したのかについては本書をご覧になってください。


第三章 なぜ自由貿易論は理解されないのか?

『大学の経済学者は、特異な考え方を持っていたり、革新的であったりすることによって報酬を得ている。そのなかには、市場の失敗を様々な方法で証明することや、どのようにすれば政府が経済に介入することで事態を改善することができるのかということに関する新しい議論を作り出すことも含まれている。(85P)』


 つまり、経済学者の方々は市場万能主義ヤッホーっていうのは間違っていると知っている。知っていて自由貿易の正しさを喧伝しているというわけですね(一般人に知られると自分の正当性が失われるかもしれないとかいう理由みたいですが)。まぁ、その際に使うレトリックが某J氏の如く稚拙なこと・・・。自由貿易論の正当性なんてものは曖昧にしか表現できないもんだから、論点をずらしたり、矮小化したりして逃げながら、一般の人々に「自由貿易っていいものなんだ」と思わせなければならないということなのでしょう。経済学者が言う理論の裏には一般人に隠してあるさまざまな前提条件があるわけです。前提条件があることを隠して、自由貿易は正しいとか言うからグローバリゼーションが間違った方向に進んでしまうのでしょう。青木泰樹先生も仰っていましたが、経済学が間違っているのではない、経済学の使い方が間違っているのである!


 とりあえず、今回はここまで(;^_^A


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