2007年。NewLineCinema. "HAIRSPRAY".
アダム・シャンクマン監督・製作・振り付け。
 ジョン・ウォーターズ監督のオリジナル版(見ていない)をブロードウェイ・ミュージカル化したものを、さらに映画化したもので、
 オリジナルにあったブラック・ユーモアや毒気がブロードウェイ版で薄められ、映画化の際にさらに薄められた、といわれている割には、現在のアメリカ社会に対する強い皮肉は十分過ぎるくらいに感じられた。
 最も強烈な皮肉だったのは、"NEGRO DAY"を字幕では「ブラック・デー」とされていたことで、字幕翻訳者にはそういうつもりは全くなく、配慮した結果の表現だったと思われるが、
 それが現在のメディアの人種差別に対する姿勢や、人種差別は過去にはあったが、今は以前よりましになっている、と言いたがる傾向を見事に表現したものになっていて面白かった。
 この映画が描いて見せる希望に満ちた未来は、それ自体が強烈な皮肉になっていると同時に、見ている観客には、皮肉を超えて、本当に希望を与えてくれるという不思議な力があった。

 主演のニッキー・ブロンスキーのキャラクターと、音楽とダンスの素晴らしさが映画の面白さのほとんどの部分を占めている。21世紀の現在でもこんなに楽しいミュージカル映画を作ることができるのだ、ということを証明していたことが一番の驚きで、感動した。
 見どころが多い作品なので、また見に行くことに決めた。
  IMDb           公式サイト(日本)
hair1
 オープニングでニッキー・ブロンスキーが歌う「グッド・モーニング・ボルチモア」から、彼女がテレビで見るジェームス・マースデンが歌う「ザ・ナイセスト・キッズ・イン・タウン」までの流れは、完璧に素晴らしい、と思った。
 その後、所々にだれる場面もあったが、面白くて楽しいシーンが全部帳消しにしてくれた。
hair2
 『ハイスクール・ミュージカル』のザック・エフロンの熱演が高く評価されているが、個人的にはジェームス・マースデン演じるコーニー・コリンズが、シックスティーズにはまり過ぎていて、面白かった。ダンスの動きにもキレがあった。
hair3
 ザック・エフロンの熱演も素晴らしかった。スキャンダルまみれになってしまった『ハイスクール・ミュージカル』の汚点は、この映画で消え去るとも思われる。
hair4
 『アメリカン・ピーチパイ』のアマンダ・バインズが、主人公トレーシー(ニッキー・ブロンスキー)の親友役で、この時代のタブーに挑戦するエピソードも、素晴らしい。
hair5
 ダンスの名手として有名なクリストファー・ウォーケンが出演している割には、目立ちすぎるのを遠慮したのか、ジョン・トラボルタとのダンスをさり気なく見せるだけにおさえたように見えた。
 ミシェル・ファイファーの悪役ぶりもそこそこに良かった。
hair6
 ジョン・トラボルタの特殊メイクにはちょっと不気味さを感じた。クイーン・ラティファが予想以上に歌えることにも感心した。ジョン・ウォーターズも「近所の露出狂のおじさん」役で出演していた。
 今年見た映画の中で一番良かったかも知れない。と思う人が多いと思われるので、リピーターが多数出現するような気がする。
角川エンタテインメント
ヘアスプレー DTSスペシャル★エディション (初回限定生産2枚組)
クイーン・ラティファ, ジョン・トラヴォルタ&ミシェル・ファイファー, ジョン・トラヴォルタ&クリストファー・ウォーケン, アマンダ・バインズ, ジェームズ・マースデン, イライジャ・ケリー, エイミー・アレン, ニッキー・ブロンスキー, ザック・エフロン, ミシェル・ファイファー
映画「ヘアスプレー」オリジナル・サウンドトラック
紀伊國屋書店
ヘアスプレー