パッチギ! | にゃ~・しねま・ぱらだいす

にゃ~・しねま・ぱらだいす

ドコにもダレにも媚を売らずに、劇場・DVDなどで鑑賞した映画の勝手な私評を。

ハピネット・ピクチャーズ
パッチギ ! プレミアム・エディション

【監督】井筒和幸

【主演】塩谷瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ、オダギリジョー


歯に衣着せぬ発言で自分の作品以外を容赦なくブッタ斬る井筒監督の意欲作。

その年の映画賞を数多く受賞し、言うだけの結果を残して面目躍如。

沢尻エリカを一躍スターダムにのし上げた先見の明はさすがなのだが。


1968年京都。

普通の高校生・康介は女の子にモテたいがためにマッシュルームカットにしたものの笑われるばかり。

悪いことは続くもので終いには、朝鮮学校の不良アンソン軍団達との喧嘩騒ぎに巻き込まれてしまう。
担任教師は彼と友人の紀男に、両校の騒動を沈静させるべくサッカー親善試合を申し込みに行かせる。

しかし行った傍から更なる騒動が彼らを襲い、話し合いやお願いなどになりはしない。

その時、途方に暮れる康介たちの耳に聞こえてきたのは「イムジン河」の美しいメロディーだった。
音に引き寄せられた康介はそこで、フルートを吹く美少女キョンジャと運命的な出逢いをしてしまう。
しかしキョンジャは、あのアンソンの妹だった。

日本人と朝鮮人の壁を越えるために康介が手にしたのは、1本のアコースティックギターだった-。


最初に言っておきますが、井筒監督のスタイルは嫌いではありません。

以前から言っている様に、門外漢が映画を批評するのは如何なものか、と思うわけですが、

彼は現役バリバリで現場で活躍している一線級の監督ですし、他人を批判することで

自分と自分の作品作りにプレッシャーを与え続けたりプロモーションに転嫁する姿勢は、

とかく閉鎖的な邦画界において非常に希少価値だと思うわけです。


ただ良く言えば少年っぽいというか悪く言えば子供っぽいというか、作品に深みがない。

この作品に関していえば、一昔前の『ビーバップハイスクール』かと思うような喧嘩演出や

『ロミオ&ジュリエット』的古典モチーフなど、少々古臭く感じられて仕方がなかったというのが本音。

それを今っぽく(舞台が舞台だから現代っぽくではなく)アレンジしなければ、その時代を生きた

オッサンたちの郷愁を誘うことはできても、キャストのような若い世代には届きにくいのでは。


キーとなる歌を歌う主人公がラジオ番組にスカウトされる件も歌唱力がお粗末で

その説得力もないし、ロクに練習している気配もなく努力している姿も映し出されないので、

民族や歴史の壁を越えて一途な恋を貫く強固な思いも伝わりにくいし、怒りと悲しみのあまり

大切なギターを叩き壊すシーンも現実感に乏しい。あの頃ギターは超高級品でしょ?


おそらく映画を『究極の娯楽』と考える監督のカラーと合わないのかもしれません。

私個人は娯楽だったら酒や煙草、オンナの方が楽しい、と思っている人間なので、

映画に求めるものが根本的に違うのでしょう、と思わざるを得ない程の低評価。

ま、人には厳しい監督ですから、タマには厳しい評価を下されるのも悪くないでしょ?(笑)



【評価】★☆☆☆☆