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第十話 権天その二十三

「この青い炎は氷の炎」
「氷の炎だと」
「そうだ。全てを凍らせる魔性の炎だ」
 こう言うのであった。
「だからだ。今の貴様では勝てはしない」
「貴様の言いたいことはわかった」
 彼の今の言葉から察した髑髏天使だった。その髑髏の奥の目が強く光った。
「つまりだ。その青い炎を打ち破ってみせろということか」
「できるか?貴様に」
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「できなければ最初から言いはしない」
 その強い光の目での言葉であった。
「ならば。ここは」
「むっ!?」
「見せてやろう」
 応えながら今その全身を赤く染めた。炎の天使、権天使になったのだった。
 その赤くなった髑髏で以って。彼は着地しそのうえでポルトーに対してまた告げるのである。
「これでいいのだな」
「そうだ」
 ポルトーはその赤い身体を見て不敵に笑うのだった。
「そうでなくては面白くはない」
「それ程この力と闘いたいというのか」
「俺のこの青い炎と貴様のその赤い炎」
 彼は言う。
「どちらがより強いか勝負だ」
「わかった。それではだ」
 着地した髑髏天使はあらためて構えに入った。そのうえでまた言うのである。
「その青い炎。全て溶かしてやる」
 そう言い右手の剣を横に振るった。そうすることによってその剣から炎を放ちポルトーに対してぶつけんとしたのである。まずはそれからだった。
「来たか」
「さあ。これはどうする?」
「こうしようぞ」
 その不敵な笑みをそのままにまた口から青い炎を放ってきたのであった。それで髑髏天使が放ったその赤い炎に対さんというのだった。
 赤い炎と青い炎は空中でぶつかり合いそのまま何かが激しく溶ける音を立てて空中で四散して果てた。後には何も残らなかった。
「まずは引き分けというところか」
「ふん」
 髑髏天使はポルトーの今の言葉に不快気に声をあげた。
「この程度は何ということはないか」
「まさか今のが最大の技というわけではあるまい」
 ポルトーは今度は髑髏天使に対して鋭い視線を向けてきていた。
「それはどうだ?」
「その通りだ」
 そして彼もそれを否定しないのだった。
「生憎だが俺はこの程度ではない」
「そうか。やはりな」
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 また攻撃態勢に入った。
「今ここでな」
「むうっ!?」 
 今度は周りに炎の柱を出してきた。全部で八本あった。
「この炎の柱でだ」
「柱か」
「そうだ。これはかわせるか」
 その八本の柱を全てポルトーに向けてきたのだった。柱達は唸り声をあげつつそれぞれ複雑な曲線を描いてポルトーに向かって来た。 
 これはかわせないかと思われた。ところがであった。
「しゃらくさいものだ」
「何っ!?」
「そう来たならばこうするだけだ」
 こう言いつつ己のその蜥蜴の身体を炎に包んだのだった。その青い炎が彼の全身を包み込むとそれで髑髏天使の柱をあえて受けて全て無効化したのであった。またあの激しく溶け合う音が響いてその中で炎達が消え失せてなくなってしまったのであった。
「こうな」
「己の身体からも炎を出したというのか」
「如何にも」
 髑髏天使に対して静かに答えてみせた。
「その通りだ」
「口から放てるだけではないのか」
「俺は青い炎、氷の化身」
 自分自身での言葉である。