タイトルに微妙さを感じたものの、むくむくと興味が湧いたものですから、

「シェイクスピア・イン・ラヴ」という演奏会に行ってみました。

有名だけれど、あんまり気にかけたことがなかったエマ・カークビーと

ロンドン・バロックのジョイントです。


エマ・カークビー&ロンドン・バロック


シェイクスピア劇 の上演にあたって、当時(必ずしもシェイクスピアのリアルタイムではないですが)

劇中歌として作曲されたものを中心に組まれたプログラムというわけです。


しかしまあ、エマ・カークビーの生声を初めて聴いたのですけれど、

還暦を迎えたらしいですが(失礼!)、目をつぶって聴けば(これまた失礼!)、

なんとも瑞々しい歌声ではありませんか。


お国びいきがあったにせよ、BBCミュージック・マガジンの「最も偉大なソプラノ20人」の中で、

10位に入ったというのもむべなるかな、ですね。


だいたい、一般的にソプラノというか、クラシック系の声楽家が活躍するオペラ、

それもいかにもという19世紀オペラでは、よく言われるように

「思い切り化粧を施した、ある種テクニカルな美しさも凝らした姿」をイメージするところですが、

ここでのカークビーの歌う世界は、すっぴんの新鮮さと言いましょうか。

(あんまり、いい喩えではないか・・・)


歌唱にはシェイクスピア劇さながらに多少の芝居っぽいふりなども交えて聴かせてくれましたけれど、

いちばん良かったなぁと思いますのは、実はアンコールの最後にあった「アレルヤ」でした。

あれは(曲名が分からないのですけれど)、もしかするとCDの最新盤に収録されているという

新たに発見されたヘンデルの「グローリア」の中の曲でしょうかね。

(だったら、CD買おうかな)


ところで、主役はあくまでエマ・カークビーであったとは思いますが、

伴奏を務め、歌唱の合間に器楽曲を演奏したロンドン・バロックも素晴らしいですね。

最初の一音で、400年ぶんくらいの飛翔をさせてくれるのですから。

(「レッド・プリースト 」みたいなのも面白いですけれど・・・)


それにしても、ひとくちにバロックと言ってしまうものの、

そこにはざっくり17世紀、18世紀の200年ほどの音楽が詰まっているわけですから、

「ずいぶんと雰囲気に違いがあるもんだ」

とあらためて思ったわけです、考えてみれば当たり前なんですけどね。


演奏会の最初に奏でられた器楽曲を書いたウィリアム・ローズが17世紀前半の人。

この古雅な響きで、一気にタイムスリップするわけですが、

パーセル の「妖精の女王」からの曲を中心とした歌曲ののち、

休憩を挟んでJ.S.バッハ (1685-1750)のトリオ・ソナタになると趣きが全く違う。

なんかシャレてるんですよね。


ローズの時代はまだまだ素朴で、ヴァイオリン2本でフレーズの受け渡しの妙を、

聴いている(見ている)側も、そして演奏している側も楽しんでいるところがあります。

バッハともなると、2つのヴァイオリンの協奏的な側面が濃厚に出てくるのでして、

このあたりは大きな違いではないかと。


たったそれだけの気付きではありますが、

またまた少々のバロック探究もいいかなと思ったりしてしまったのでありました。