シェイクスピアの「真夏の夜の夢」は、ご覧になったことのおありの方ならおわかりのように

とっても楽しい!芝居なわけです。


メンデルスゾーンがこの芝居の劇音楽(今でいえば、サウンドトラックのようなものでしょうね)を書いていて、

先日の演奏会で序曲を聴いたところ、「え?これでおしまい」という感覚をおぼえたものですから、

CDでこのメンデルスゾーンのつけた曲を聴いてみたのでした。

メンデルスゾーン「真夏の夜の夢」

序曲は、芝居への興味をかき立てるという点で、

実に見事といって良いように思うのですね。

なにしろ、聴いているうちに、さぁ~と幕が上がって、

芝居の始まる様子がはっきり浮かぶのですから。


神秘的な弱音の和音で始まり、

森の精のざわめきといった感の、弦のさざめきが続きます。

そして、トゥッティで立派なメロディが高らかに歌われると、

1オクターブの音階をたっぷりと降りてくる下降音形が聴こえてきます。

これが、良い!のですね。


この序曲は、1826年、メンデルスゾーン17歳の時の作品なのですから、

38年の生涯を太く短く(モーツァルトのように?)生きたメンデルスゾーンにはもはや若書きではなかったのかもしれません。


ところが、序曲以外の劇付随音楽は、1843年、メンデルスゾーン34歳の時に書かれるのですね。

これは、時にライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者であったメンデルスゾーンに

プロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム四世が依頼をしたことによるのだそうです。

一度、このメンデルスゾーンの劇伴をふんだんに使った「真夏の夜の夢」の芝居を見たことがありますが、

相当にピタリとくるものだなと思ったのですね。実に見事なものなのです。


そして、このクレンペラー盤は実に立派な演奏です。

おまけとして、ワーグナーに「音による風景画家」と言わしめたメンデルスゾーンの面目躍如というべき

序曲「フィンガルの洞窟」もカップリングされていて、言うことなし!です。