F1本 三題 | ほぼ週刊チョロQ通信

F1本 三題

 昨年末から正月にかけて、F1関連の本を三冊読んだ。



【鈴木亜久里の挫折―F1チーム破綻の真実 (文春文庫)/赤井 邦彦】

 

 丸ビルの5階に青山ブックセンターが入っていて、なかなか面白い陳列をしている。

 自動車雑誌を立ち読みしていて、ふと視線を上げると、そこにクルマ関係の書籍が、『雑誌も面白いけど、こんな本も面白いですと』と言うかのように並べてあって、ついつい手に取ってしまうのだ。

 この本もそんな具合に買ってしまったもの。


 ベテランモータースポーツジャーナリスト、赤井邦彦による鈴木亜久里、スーパーアグリF1チームのインサイドレポート。

 ジャーナリストの冷静な視線でスーパーアグリの立ち上げから破綻までを描いている。

 最初から最後まで鈴木を苦しめた資金調達。

 苦しいが故に怪しげな人物にもすがり、振り回される。そして破綻。

 金融の世界の片隅に身を置くものとして、その危うさ、不自然さは火を見るより明らかなのだが、追い詰められた当事者とはこういうものなのかと思うと胸が痛んだ。








【F1ビジネス―もう一つの自動車戦争 (角川oneテーマ21)/田中 詔一】


 ホンダ・レーシング・デベロップメント(HRD)初代社長、田中詔一氏の著作。

 F1のエントラント、HONDA F1チームの当事者として、FIA、FOM、F1の世界のドロドロを見事にあぶり出している。

 本の冒頭、『この本はF1の暴露本ではない』と著者自ら書いているが、私に言わせれば完全に暴露本。

 冷静な視線で、エクレストン、モズレーなどF1を運営するごく一握りの人々に敬意を表しつつも、極めて限られたグループに利益が集中する現在のF1の仕組みに疑問を呈している。


 ホンダは本田宗一郎の下、1962年に初めてF1参戦した。

 バーニー・エクレストン(元ブラバム・チームオーナー)、マックス・モズレー(元マーチ・チームオーナー)よりもF1に関わった歴史は古い。

 そういった誇り、大企業として厳然と存在し遵守すべき商道徳、そういうものにそぐわない、不透明な世界。

 今回HONDAがF1から撤退した複線が、この本から読み取れるよな気がする。






【世界最速のF1タイヤ―ブリヂストン・エンジニアの闘い (新潮新書)/浜島 裕英】


 ブリジストンの浜島さんと言えば、国内のレースの世界では知らないものはいない有名人だが、失礼ながら読むまではただの技術屋さんの解説本かと思っていた。


 あにはからんや、ブリジストンの社員教育から工場の”職人さん”との遣り取り、はてはミハエル・シューマッハの人となりまで、一息に読んでしまった。

 この人のブリジストンの社員としての経歴は、ブリジストンという会社が国内のカートレースへのタイヤ供給から始まって、世界のモータースポーツに打って出てた歴史にそのまま重なる。

 そして、この人は常にその第一線にいた。

 こういうスターはどこの会社にも一人か二人必ずいるものだ。もちろん実力があってのことだが、それに加えて強い運がなければこうは行かない。

 まったく羨ましい話だ、なにが運が良いって、好きな仕事に巡り会ってその仕事に携わり続けられると言うことは早々出来ることではない、特に浜島氏のような大企業のサラリーマンならなお更だ。

 全く羨ましい。 


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