バードマン~あるいは無知がもたらす予期せぬ奇跡~(’15年4月TOHOシネマズ梅田) | Que amor con amor se paga

Que amor con amor se paga

映画・本などのネタバレメインのブログです
日常で気になったコトや動画も載せてます。


原題名:BIRDMAN:Or (The Unexpected Virtue of Ignorance)

今年のオスカー受賞作、公開第一週

・・・のハズなんすが


メッタクソ空いてましたwwwww

行った時間帯が時間帯+今からあらすじ+ネタバレ全部書くのだけど


何も考えないで映画観るなら

ポール・ウォーカーの遺作+弟緊急代役になった
『ワイルド・スピード・スカイミッション』が今週末に公開になるので、あっちをオススメ・・・する。

が、個人的には、こっちの方が

今の世の中の問題意識に深く触れていて
よかったと思うぞ。芸事なり何かを人に伝えるお仕事してたり、人気商売に携わってる人なら、
良薬口に苦し、お勧め。

主演の二人のインタブー+監督の言い分が、そうだなぁ~と思う




『ミリオン・ダラー・ベイビー』と一緒で

アカデミー賞じゃなかったら、この映画、シネコンでは公開されなかったと思うのだ。

部類はドラマにいれたけど、一種のファンタジー要素やフシギちゃん要素もあると思う


んなワケで、予告編はこちら、あらすじいってみる





スーパーヒーロー映画『バードマン』の主人公としてハリウッドセレブの名を欲しいままにしていた
リーガン(マイケル・キートン)は、シリーズ4作目を断った20年前から代表作がなく、
役者としての方向転換にもしくじっていた。


街を歩けば、今だに人々は彼を『バードマン』と呼びサインを強請り、一緒に写真に
映ることを強要する。


実生活での彼は、女優との浮気がばれ、妻・シルヴィア(エイミー・ライアン)と離婚。

娘のサム(エマ・ストーン)はドラック中毒になり、この間ようやくリハビリ施設から出てきたばかり。

仕事がないサムに、リーガンは自分の付き人をさせているが、サムは父を軽蔑し、やりがいのない
仕事に飽き飽きしている。


『バードマン』に出演していた頃に稼いだ、何十億という金が、底をつく寸前となったリーガンは、
最後の賭けとして、レイモンド・カーヴァー原作の
『愛について語るときに我々が語ること』を脚色・演出・主演してブロードウェイに進出しようと
していた。


そんな彼に対し、世間の目は冷たい。

何の舞台下積み経験も持たない。

運だけでハリウッドコミックヒーローシリーズの座を掴んで、
俳優気取りの落ち目の遅れてきた俳優が今更と批評家たちは、公開初日に叩き潰そうと
虎視眈々と狙っている。


ベテラン批評家のタビサ(リンゼイ・ダンカン)も、その一人。

下積みから努力した舞台俳優は認めても、リーガンの様な遅れてきたセレブが俳優を名乗ることすら
彼女は許さない。


リーガンの舞台は、ブロードウェイで公開するには予算ギリギリで、いい俳優も雇えず、
セットもちゃちなものだった。


彼を除く出演者は、ブロードウェイ女優志望のレズリー(ナオミ・ワッツ)、リーガンの恋人
ローラ(アンドレア・ライズブロー)、そしてラルフ(ジェレミー・シャモス)だった。

予算の関係上、舞台を多く経験していて、名前だけで呼べる俳優は使えない。

しかもラルフの俳優としてのできばえの悪さは、他の二人の足を引っ張っているのは明らかだった。


リーガンはすっかりやる気をなくし、親友でプロデューサー兼弁護士のジェイク(ザック・
ガリフィーナキス)に、八つ当たりしてしまう。


するとその時、ラルフの上に照明器具が落ち、彼は大怪我を負ってしまう。

明日はプレビューで、チケットは完売、払い戻す程の予算もない。


代役を立てられないと気を揉んでいたその時、レズリーがルームシェアしているという
名の知れた舞台俳優・マイク(エドワード・ノートン)を連れてくる。

出演予定の舞台のスケジュールがズレたので、代役が出来るというのだ。


リーガンは早速マイクに、脚本(ホン)読みに付き合わせるが、マイクは
レズリーのホン読みに付き合ってたので、セリフを全て暗記している上、
脚本や、舞台構成の改善策まで提案してきた。

リーガンは、今までにない手ごたえに満足し、マイクを代役に決める。


マイクは批評家のウケもよく、彼の名前だけで客が呼べる上に、舞台も生かす。
演技力も申し分なかったが、人間性は最悪だった。


リーガンが再起をかけて臨む舞台だとわかっていながら、プレビューの初日に、
セットに置かれた酒が偽者だと気づくと激情し

ここにあるセットは冷蔵庫のチキンを除いて全部ニセモノだ!と
セットも芝居も壊す始末。


リーガンのプロダクションに予算がないがわかっていて、自分のギャラは
ラルフの4倍も請求した上に、自分のエゴで日焼けマシンを勝手に購入して
プロダクションに請求書を回していた。


芝居の出来と、客の入りが心配なジェイクは、マイクの素行が悪くても、
お構いなしだった。

しかし芝居で関わるものは違う。


彼とルームシェアしているレズリーは、マイクの軽率さに辟易していた。

サムがリーガンの娘だと知りながら手を出そうとする姿を目の当たりに
しただけでなく、芝居の最中にバカなマネをしようとしたマイクに
レズリーはブチきれる。


同じ頃ローラも、煮え切らない態度をとり続けるリーガンに愛想をつかしていた。


サムは、今頃こんな古典芝居をやったとしても誰もパパの名前なんて覚えてくれはしない、
と哀れな賭けに出る父親を嘆く。


本番を前にして、関係者の本音が吐き出され、散り散りになろうとしていた。

リーガンは舞台を成功させる事ができるのだろうか・・・


以下ネタバレです


鏡の中に映る自分のエゴや、もう一人の自分と格闘する話

・・・というのは他の映画でもあるんすが

女性なら『ノーマ・ジーンとマリリン』が、この映画みたいな感じだったと思う。

マリリンが鏡を見る度に、いつも鏡には黒髪で無愛想なノーマ・ジーンが
映っていて『本当のアンタってそんな人じゃないんでしょ?』という

そして最後は黒髪のノーマ・ジーンが金髪のマリリンを

『神様ならわかってくれるから』と連れて行く。

この映画では主人公リーガンのエゴや、本当は自分はこうありたいのに出来ない、
どうすればいい?という思いが『バードマン』になって出てくる…という設定が
似ている。

リーガンの周りにまとわり付きながら周囲には見えない『バードマン』は
主人公の願望であり『心の叫び』と取れると思う。


カメラが主人公目線、ステディカムの長回しで

あまり画面の切れ目がないので余計そう取れる。

まちぎゃーても、シネコン向けの判りよい映画じゃないな~ってのが丸判り


リーガンが、世間がレッテルを貼った『コミックアクター』なり
『遅れたセレブ』というモノから脱却し『俳優』になる為に

周囲の殆どの人間は、どうなるだろうと見守るのだけどマイクは
『今こそリーガンが変わるラストチャンス』と見込んで、どんどん仕掛けていく。

マイクはサムに『どこでもアンタはどうして憎まれ役をするわけ?』と聞かれるけれど
のらりくらりとかわす。


リーガンが手がける『愛について~』のラストは、主役の男が最後に拳銃自殺をするシーンで
幕となるのに

マイクはリーガンに

『他の演技はいいが、あの箇所だけリアリズムがない』と実弾が入った拳銃を渡す。
そこまでリーガンを追い詰める。マイクからしてみれば芝居は命。


リーガンは、俳優をめざしたきっかけは
レイモンド・カーヴァーがサインをくれたからだという事を話したのに

タイムズ紙のインタビューでマイクは

リーガンの話をあたかも自分の話のように喋ってしまうのはナンだなとも思う。


マイクのインタビューがタイムズ紙の一面を飾り、リーガンがブロードウェイで再起を賭けた
プロジェクトについては三面記事扱いに

激昂したリーガンは、暢気に日焼けマシンで本読んでるマイクに殴りかかる。



マイクもリーガンも似ているのは



仕事でのおべんちゃらや持ち上げ+都合のいい人間
=愛と勘違いしている事


仕事さえがんばって金さえ稼げば、地位さえ築けばそれでいいと思っている面がある。

リーガンは『バードマン』3作目を意気揚々と契約した時に妻に、いつまでこんな俳優とも
思えないコミックヒーローを引き受けるの?レイモンド・カーヴァーに憧れていたのに?

・・・といわれ刃物をむけた事とリーガンの浮気が引き金となり離婚。


マイクはプレビュー最後の日に、舞台でレズリーとベットシーンを演じる

観客に見られているというだけで、仕事魂が『そこっ』に付くのか、
マイクは長年『男性にとって恥ずかしい理由』でご無沙汰だったのに、○ってしまった上に
『芝居のリアリズムを出す為に、客の前で○るぞ!』とレズリーの上に被さり、決定的に嫌われる。


仕事しか頭になく、仕事で認めてもらう事が全てで、利害目的で擦り寄ってくる人間を
愛情があると勘違いしているマイクの哀れさは、かつてのリーガンそのもの。


リーガンはそれで妻を、愛娘を失った。


リーガンは、開演前に何故自分が妻をそして愛娘を失ったのかに気づき、
再起を賭ける。


が、初日に思わぬアクシデントが

二幕目が終わり、残るはラスト。リーガンがふとマイクとサムが話しているのを目の当たりにし、イラついて、タバコ吸いに表に出ると、舞台袖のドアが内側から閉まってしまう。

オマヌケにもリーガンは素肌にガウンを着た姿のままで、ドアにガウンは挟まったままで、抜けない。


リーガンは諦めて、予告に出てる通り


ブリーフ一枚で、ドカドカドカとブロードウェイの表通りを歩いて
劇場正面から戻っていく


周りの人間は

『あ!バードマンだ!』

ってので、次々インタグラムに投稿して、あっという間にツイッターのつぶやかれ度が
トンデモな数になる

リーガンは

FBもバカッターもブログも何にもしない、アナログ人間として描かれているのに。


劇場入口には、プレビュー前に、頭に照明器具が落ちて車椅子になったラルフが
訴訟を起こしてやると、弁護士と共に待ち構えていた、が


それどころじゃないリーガンは


うるせぇっ(ゴルア)のきやがれい!


・・・モノで、客席後方からブリーフ一枚で、登場

舞台の最後、リーガンは引き金を引くと・・・


会場はスタンディングオベーションの嵐、だったのだが・・・


数日後

リーガンは病室で目覚める。

彼の傍らにはサムと弁護士のジェイク


どうやら銃に入っていた実弾は、彼の



を、かすめたらしく、命に別状はなし。


メディアは劇場でバードマンが自殺未遂を起こしたとギャーギャーわめいている上に、
病室のすぐそばまで、パパラッチが来ていた。


昔は、自分の乗ってた飛行機が墜落しそうになって、
同じ機にジョージ・クルーニーが乗っていたというだけで

翌日の新聞にはジョジクルは乗ってたのに、自分の名前なんて何にもなかった。

これってファラ・フォーセットが死んだ日は、マイケル・ジャクソンと同じ日なのに
忘れられてるぐらい不幸じゃねーか、と、ついこの間まで
シルヴィアに、嘆いたのが、ウソの様。

サムが勝手につくったリーガンのツイッターアカウントは、バカウケ状態


楽屋にはバラの花まみれでうんざりしていた父の為に、
サムは、ライラックの花束を持ってくる。

『・・・今は香りがしなくて残念だな・・・』とほくそえむリーガン


初日が終わったらメッタ切りにしてやるといっていた
批評家タビサは、リーガンの芝居を新聞の第一面に


『無知がもたらす予期せぬ奇跡』

とホメたたえていた


タビサも、マイクとリーガン、二人にやりこめられて、
何か自分なりの方法でやりかえさないと仕方なかったのだろうと思う。


マイクとリーガンがタビサに言いたかったのは、
ベテランという名前や有名という名前に、乗っかってるだけで、
彼女の批評は実は面白くないという事。

でも彼女の批評は世間様に影響力を持つので、大きな声で言えない。


マイクはタビサに遠まわしに、こういう

『芸術家になれないものは批評家になるし、兵士になれないものは密告者になるよな。』

マイクは自分が生きたい道でメシを喰い、どうやって生きていけば、スキルを出せばいいのか、
心得ている。でもその目の上のタンコブともいえるのが彼女の様な存在なワケで。


が、リーガンは、そんなもん知らないから、素直に

なんだよ、アンタの批評って言葉が悪いし超つまんねーわ

・・・といっちゃう。

裸の王様における、子供みたいに


ここまで書けばあんたたちだって文句いえないでしょ、というタビサの批評家としての意地が、
リーガンの初日の批評のキャッチコピーに出たと思う。


ジェイクは、この芝居は大当たりしたから、ブロードウェイから凱旋もあるぞ、怪我が治ったら
考えろ、と意気揚々。


リーガンの周囲の歯車はようやく回り始め、彼の前から『バードマン』の幻影は消える。

そしてラストは明らかにはかかれない・・・という所で映画は終わる。


映画は、リーガンという

世間的にみて『終わったセレブリティであり俳優とはいえない男が、再起をかけた
がむしゃらに立ち上がる』話なのだけど


そこに繋がっていく人々も、技量の差があったり人格に差があるとはいえ、全員なんらかの
形で心に傷や物足りなさを感じているわけありなんじゃないかなぁと思う。


主人公が再起をかけて望んだ題目として選んだのはレイモンド・カーヴァー

これは監督のお気に入りで、今回の映画の題材と似ている+
遅れてきたセレブが挑むにはタイヘンな題材だと思ったから選んだのだそうで。



何よりも、映画の冒頭部分

レイモンド・カーヴァーの遺作である『滝への新たな小径』に書かれている文が、
登場人物が抱えている心の闇、そして果たしたかったものをあらわしているのだと思う


And did you get what you wanted from this life,even so?

(この人生で望みを果たせたか?)

I did.(果たせたさ)

And what did you want?(お前は何を望んだ?)

To call myself, beloved,to fell myself beloved on the earth.

(愛されるものと呼ばれ、愛されていると感じること)






















バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) [Blu-ray]/マイケル・キートン,ザック・ガリフィアナキス,エドワード・ノートン

¥5,132
Amazon.co.jp

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡) [DVD]/マイケル・キートン,ザック・ガリフィアナキス,エドワード・ノートン

¥4,104
Amazon.co.jp