「でね、脳に転移してたの」。

一瞬、耳を疑った。
左目の後ろに2センチ大…。
念願の退院からわずか1ヵ月ちょっとで病院へ戻ってしまった純ちゃん。
2012年12月9日、わたしも、こんなに早くこの病院を再び訪れることになるなんて、
と思いながら向かった矢先、一番聞きたくなかったことを知らされた。

入院先の病院ではガンマナイフ治療は対応できないため、
翌週末に2泊3日で別の病院へ治療のため入院するという。
治療をすれば大丈夫だと、あまり大したことがないように
淡々と病状報告をした(らしい)主治医にわたしの怒りは頂点に達した。
抗がん剤治療に切り替えることになったために、脳のMRI検査をした。
もしザーコリを続けていたら、発見はもっと遅れていたことになる。
純ちゃんが最も恐れていて、一番避けたかったことが脳転移。

「転移した部位ってね、記憶がなくなっていくんだって」
そうつぶやいた純ちゃんに「大丈夫、大丈夫」と、
なんの根拠もない言葉を返すのが精一杯だった。
でもその兆候を、その頃のわたしはすでに感じていた。