2012年8月13日。
全6クールの抗がん剤治療を終えた純ちゃんは、いよいよ新薬「ザーコリ」による治療を開始した。
点滴(抗がん剤)より、経口(飲み薬)のほうが、ずっと楽だろうと思っていたから、翌日届いた彼女からのメールに驚いた。


『昨日の朝から新薬を始めたんだけど(1日2回)、お腹に激痛が。検査の結果、腸閉塞だった。
腸閉塞とは腸が動かなくなることなので、今後、飲食禁止、薬も経口中止して、点滴や貼り薬に変更。
つまりこの時点で新薬による治療も中止せざるを得ず。
というより、この腸閉塞こそが新薬の副作用ではないか? 
ってことで、製薬会社に電話してみるってさ。』



開始わずか3錠目で中止。これが新しい薬のデメリットか。医者にすら予想できないことが起きる。
ザーコリは分子標的薬でイレッサと同じ。
イレッサの時も、すごく効果的な薬ができた! と医学会で話題になって、どんどん使ったらどんどん死亡者が増えて。結局は合う人には効くという結論だった。
今回はそのテツを踏まないように、適合する人を先に確認したから4%の患者のみに効くとわかった。
ちなみに純ちゃんはEGFR変異はないから、イレッサは効かない。

「あの時代だったら誤薬で死んでたね」。
純ちゃんの一言に、背筋が凍る想いがした。