美術館開館4・メッセージ に続いてこの部屋の作品を紹介します。
4でもお伝えしたのですが、こちらのお部屋は、前室を光の部屋に例えると「心にといかける」作品が多く集まりました。
コメントはアーティストの方から作品についてお伺いしたもの、館長やご来館いただいた方々からの感想を入れています。ご自身も共感や違う視点でご覧いただけたら幸いです。
前記事で紹介したアーティスト、MariMari & The Needle Treeさんのメッセージ の隣には、アーティストmaiさんの、「青の碧」という2枚の画があります。
光の明るい部屋から次の部屋に移動する際、この鮮やかで吸い込まれるような青がぱっと目にはいります。
青いチュールにふわっとくるまれた天使たち。水の精たちなのでしょうか。
maiさん曰く、この美術館の話を聞いたときに、浮かんだイメージをこの画にしてくださったとのこと。
普段、画をかかれる際は、この色は使わないそうです。地球という星が水に包まれた美しい星であり、その青さは宇宙から見ても美しい光を放っている、その輝きまでも表現していただいたのかな、と感じました。
地球は私たちそのものである、そのような印象も受けました。
美しい青を拡散する、そのイメージが、伝わってくる作品です。
そして、「この美術館のために描いたので、、」とおっしゃってこの作品をお譲りくださいました。
maiさん、大切にします。心より御礼申し上げます。
そして、扉を挟んで、左には、アーティストJunkoさんのシャドーボックス2作品がならびます。
左側が「Fairy(フェアリー)」、そして右側が「大すきなものだけ詰め込んで~夢の旅~」です。
シャドーボックスとは、絵をパーツごとに切りながら、立体感を出して作られます。
この作品を1つ作るのに、1年かかるのだとか。
この美しさと繊細さに立ち止まっておられる方がいらっしゃいました。
そして、「~夢の旅~」では、ある外国の男性より、「これは、売っていただけるのですか?一目で気に入りました」と質問がありました。自身が船に大好きなものをいっぱい詰め込んで旅や冒険に出るイメージが浮かんだのでしょうか。
目を輝かせて作品をご覧になっていました。Junkoさんご自身からも作成時から、大好きな作品であることを伺っていましたので、その想いもお伝えしたところ、「私もです」とのこと。
一つの作品からイマジネーションの世界がとたんに広がる。なんて素晴らしいのだろう、と感動しました。
そしてその左には、アーティスト佐藤泰壱さんの「街」という作品が並びます。
非常に大きな作品です。
街を見ていると人や道、建物、空を飛ぶ飛行機、さまざまなものが見えてくる、という内容だそうで、
一見近くで見ると、抽象画のような作品ですが、数歩下がってみてみると、人の顔が現れ、また、近くに寄って観てみると、口の辺りが道のブロックでできていたり、影の部分に街並みや空をとぶ飛行機が描かれていたり、というもの。
アーティストは美大の学生さんで、まっすぐに、今をみつめて、心にとめよう、空間やその空気感までも受け止めよう、と想う様が浮かんでくるようです。画法もさることながら、佐藤さんの感覚のするどさと視点に驚愕し、じっと見入ってしまいます。
その左には、アーティスト、ほんまじゅんこさんの「夢の花1」「夢の花2」があります。
「夢花1」
小学校の美術の先生でもあるほんまさん。いつもは生徒さんばかりに描くように言っているので、久しぶりに
自身でも作品を作ってみました、とおっしゃっていました。
作品はパネルに画を書き、紙を貼って立体感を出し、透明なシートを貼り付けてあります。
泥の中から誕生した花、植物、動物、光、空間などが誕生し、輝きを放ちながら生きている様を表現されたのだそうです。
普段私たちが目をそむけたくなるドロドロした想い、体験、経験してきたこと。その中に実は輝かしい意図が込められているのではないか、という問いかけに心を打たれます。
また、命のサイクル、経過していく進化という時の流れ、その中に身を置いている自身までも全てがこの1枚の画の中に込められているようも見えます。
「夢花2」
実は、この作品、パネルではなくて、ハードカバーのノート表紙に書かれています。
縦横の細かい糸の織がまるでキャンパスのようでした。
日本画も描かれるとのことで、着物のデザインに、蓮のつぼみを描こうと筆を走らせていたら、できた作品なのだそうです。
「小人も出てきましたけど、、」と苦笑しながら話されていましたが、心の中にある異次元、異空間への扉、それもすぐに開く方法をご存じの方なのだなあ、と思ってしまいました。
その作品のとなりにはアーティスト 和珠(かじゅ)さんの作品群「天使のささやき」が展示されています。
キャンパスに羽やビーズを貼られ、天使を表現しています。
柔らかいその羽や光からも優しく気持ちのよい空間が現れ、この場所へ身を置いている自身を感じる、そのようなイメージが浮かんでくるようです。
それぞれから「応援」や「励まし」を感じます。「大丈夫ですよ」という声が聞こえてきそうです。
白い樹脂粘土で作られた作品。和珠さんの手に触れると柔らかくなり、本当は樹脂ですから固いのですが、そっと優しく手で包み込みたくなるような感覚。
ご来館いただいた方からも、「ちょっと触ってみたいのですが」という声をたくさんいただきました。
この作品の横にはY・Mさんの「Time Mirror~時鏡~」
鏡を使って皆さんに問いかけます。「あなたの”今”はどんな姿ですか」
この作品を見て、後ろを振り返ると、
別の角度で後ろ姿の自身が写される、という作品です。
下の子どもの写真はM・Yさん自身で、鶴や学生時代に描いたというデッサン、作品の数々も合わせて1つの作品となっています。
開館初日、この作品はなく、2日目に会場でこの空間が作られました。
会場に来てから出展を決めてもいいですよ、とお伝えしていましたが、しばらく会場に身を置いてから、それからものすごい勢いで、展示に取り掛かりました。スイッチが入った、というか、彼の雰囲気がガラッと変わったのです。まさしくそれはライブアート。目の前で作り上げられる彼の世界にじっと見入ってしまいました。
本当は、このたくさんの鶴を鏡と鏡の間に吊るしたかったのだそうですが、そのイメージは十分に伝わってきます。鏡には、カラフルな揺れる折鶴たちの間に万華鏡のように見える自分の姿があります。1面だけではない、いろんな角度から見える自身です。現在を視点に、それぞれの過去、そして未来へといざないます。
鏡を覗き込むあなたを含めて完成する、参加型の作品です。
来館者からはカラスのデッサンにも感動の声をいただきました。
次に紹介するのは、小澤綾子さん、山田賢明さんのメッセージ
を挟んで左横にある、
アーティスト Tokuさんの「Happy Family」という写真展示があります。
私たちの間に生まれてきてくれてありがとう。ご両親の愛がいっぱい伝わってくるような1枚です。
これからどんな素晴らしい未来が待っているのでしょう。
大きくなったときに、この写真を観て子供たちはどう思うのでしょう。
一瞬一瞬が輝きながら「今」をつないでいきます。
だいぶ大きくなって、作品の前でパチリ。お子さんたちの成長ぶりが、時の速さを見せてくれます。
この写真展示を観て、「このうちのコになりたい」「こんな可愛い子たちを持った両親がうらやましい」「しあわせが伝わってくる」など、いろんな方から、感想をいただきました。
自身を重ねる方もあり、全体から雰囲気をつかむ方あり、多角的にメッセージを受け取られているようでした。
この写真展示の横には、アーティスト もりもと喜よこ さんの 「喜かえる」という作品が並びます。
フエルトをほぐし、さまざまな色を混ぜながら、オリジナルな色を作り、それをミシン針のように穴の開いた針の先で繊維を押し込みながら形にしていきます。糸は使いません。
最初はふわふわしているフエルトも、針を刺し続けることで、繊維が奥で絡みあい、結びついて固くなっていきます。固くするところと、ふわっと残すところ、一刺しづつ考えながら、イメージを形にしていきます。
もりもとさんの作られる鮮やかな色のフエルトからは、エネルギーがあふれてくるようです。作品を拝見したとたん、じわじわくるこのカエルのキャラクターに心奪われました。
この長い舌にある緑のツブツブも、作品の一部。観れば見るほど、もりもとさんの世界観に惹かれていきます。
タイトルも「喜かえる」。喜びに帰る。命を吹き込まれた喜かえるがシンプルに答えをくれたような気がしてきます。
この作品の横には、アーティスト Erikaさんの「高校演劇部の大会および公演のチラシ」作品群があります。
高校3年間を演劇部に所属して、来年の春卒業されるErikaさん。
演じるだけにとどまらず、各演劇のポスターも描いたのだとか。ポスターを描くにあたり、写真を取り込み、彼女が描くイラストを合わせて作っているそうです。幼いころからカメラが好きで、人物、物を観察し、ストーリーや構図を瞬時に判断し、シャッターを切り続けているので、このモノクロ作品からも、明確なものが伝わってくるようです。
タイトルの補足には、「私の青春時代がつまりにつまっています!」。
「夢中」「輝き」という言葉が浮かんでくるようです。
そして、その左には、NPOユニバーサルイベント協会さんの紹介パネルが展示されています。
年齢、性別に問わず、車いすや聴覚の方だって、さまざまな特性の方が集まって、楽しく暮らしていくってどんなことだろう。
ユニバーサルデザインという言葉が浸透していく中で、コミュニケーションを生かして、もっと良いものを生み出そう。新しい気づきが視点が生まれるように、いろんなイベントを企画しているNPO法人さんです。
ユニバーサルスポーツってご存知ですか?
オリンピックの後に行われるパラリンピックをイメージされている方もいるかもしれません。
でも特殊な道具を使わなくても、身近にあるもので、誰かに合わせるのではなく、誰もが楽しめるスポーツをみんなで考えたり競技したりする。これもユニバーサルスポーツ。
そして、年に1回ある八丈島でのユニバーサルキャンプ。今年は中学生から80歳までの100名が参加しました。
見知らぬ者同士が集まって班になり2泊3日を過ごします。サポートやコミュニケーションの方法を学んだり、お互いに「あなたが、(私が)こんなことができるって知らなかった!」って体験を通じて知ることができます。
協力しながら料理を作ったり、さまざまな方の話を聞くプログラムなどから徐々に心のバリアが解放されていく気がしてきます。
普段話せない心の内を初めて会ったばかりなのに、話せてしまう。バリアって自分が作っていたんだ、少し低くなった段差のように、飛び越えられそうな気がしてきます。
八丈島の温かい方々の作る料理や盆踊りなど、楽しくて、コミュニケーション満載のプログラムが詰まったキャンプ。
イベントを企画している協会のメンバーも、参加者も、全員が同じ立場で参加します。
協会の今後の予定としては、近くには、12月7日の「ユニバ―サルクリスマス」、12月29日の「ユニバーサルそばうち会・ユニバーサルスポーツ体験会」のイベントを予定しているとのこと。どなたでも参加いただけるイベントです。
ここまで読んで、楽しそう、面白そう、参加してみたくなった、と思ったら、協会のHPへ来ていただくか、FB(フェイスブック)に「いいね!」していただけるとイベントの情報を受け取ることができます。
協会のHP→こちら
協会のFB→こちら
そして、この紹介パネルの左には
アーティスト 世界のよっぱさんより 「館長紹介(してください)」 が貼ってあります。
この真ん中が館長の似顔絵だそうです。とてもかわいく描いてくれて嬉しかったのですが、展示は館長が顔を赤らめてしまう作品になっていました。
似顔絵の周りに、それぞれが持つ館長のイメージを色ごとに会場で貼ってもらおう、という企画になっていました。館長を知らない人は会場で話しかけて、という内容にもなっており、全員参加型の作品となっています。
本当にご来館の方が話しかけてきました。
お子さんたちが、シール大すきですから、それは楽しそうに貼っていました。
花びらの色、この色が好きって、内容も観ずに貼ってくださる方もいました。
優しい方は、いろんな面がある、と数枚貼って下さいました。
するとこんなにたくさんの花びらにかこまれる私が出来上がりました。
皆さんの1枚1枚に感謝を込めて御礼申し上げます。
また、この突拍子もないこの作品を作ってくれた世界のよっぱさん。
はじめは、館長紹介の作品の企画に私は驚きをかくせませんでした。
でもこの「地球から美術館」は出展いただいた方、来館頂いた方により1つの作品として完成しました。
作る方も観る方も全ての方がアーティストであり、ふれたもの、感じたものすべてがアートである、というコンセプトで開催したこの美術館です。
皆さまに支えられて出来上がったこの「地球から美術館」という作品をよっぱさんが違う形で見せてくれました。
出来上がった大輪の花を観ながら感動いたしました。心からありがとうございます。
そして最後となりましたが、僭越ながら私の作品を紹介して、この美術館を閉館したいと思います。
この部屋の真ん中に配置させていただきました。
作りはとてもシンプルで、木箱に穴をあけ、LEDライトを下からあてています。
これらの石、普段は色も違って見えます。ヒビがたくさん入っていますし、不純物も入ってます。
でも、それだからこそ、こうやって光をあてた時に輝きを拡散するのです。
この石を皆さまの心だとすると、ヒビや不純物はいままでの喜怒哀楽といった経験や体験かもしれません。
タイトル名、「これがあなたの心です」
全ての方々に素晴らしい道を歩まれてきたこと、それにより、自身がより輝いていることを伝えたい、という
想いを表現したくて作成しました。色や形が違うからこそ、それぞれの輝きを放ち惹かれあう、と私は思います。皆様そのものが進化するアートなのです。
最初、この美術館のコンセプトに「地球から光がたくさん舞い上がるさまをイメージしてみてください」「光の祭典です」とお伝えしましたが、
一人一人の想い(輝き)が拡散し、世界が、地球が輝いてみえる、光をたくさん飛ばす、というのは、実は既に皆さんが普段行っていること。特別な誰かが行っているだけではなく、皆さんが無意識に行っていることなのではないかと考えました。
もっと自身が輝いていることに気づいたら、、、、。
もっと輝きに満たされた世界になるかも、というイメージが湧き、この美術館を開館しよう、と決めました。
この美術館に出展いただいた作品からは、その1つ1つが観る側の心に共感を呼び、灯りをともす、そのような作品ばかりであったと思います。アーティストの皆様、心より御礼申し上げます。
そして、ご来館いただいた皆様からも、心地よい空間、刺激を受けた、元気になった、とさまざまな感想をいただき、大変嬉しく思いました。ご来館、誠にありがとうございました。
最後に、お手伝いいただいた皆さん、設営や空間を作り上げてくれて、心から感謝申し上げます。
最良の想い出とともに、このブログに記録させていただきます。
2013年12月1日
館長 大久保愛子