いま新しい時代の胎動が聞こえてきている。


いままでとは、まったく違ったモメンタムが世界をそして歴史を動かそうとしている。そして、権力の質を根本から変えつつある。


その1つの証左が、チュニジアの「ジャスミン革命」である。友人のS君がいまチュニスに在住しており、刻々とその状況を教えてくれているが、今回の革命の背景には、インターネット、とりわけ、Facebook(フェイスブック)の存在が大きいとの由。


いまや、チュニジアを端緒に、エジプト、バハレーン、リビア、さらにはサウジアラビア、いずれはシルクロード(絹の糸)を通って、中国にも波及しようとする勢いである。


かのFacebook(フェイスブック)は、昨年から日本でも急激にユーザーを増やしているSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)であるが、このFacebookは「実名で登録すること」が規約で決まっており、従来の匿名性の持つ不気味さや不透明さから解放されたよりリアルで透明性の優れた媒体として、世界中で利用者が急増している。


このFacebookの基本コンセプトは、リアルな社会のつながり、実生活に基づいたつながりを、ネットワーク上で行うことにあり、実名登録を必須としている。


その魅力と強みは、「情報の乗数効果」にある。


1人のA君が、リアルな実在する人間として、自己の意見をウオールに述べる。それを観たBさんが、実在の友人として、反応する。それをまた多くの潜在的な友人のC君やDさん等のあまたのネットワークが捕捉し、「いいね」の核分裂が起こる。


それは、かつて、ケインズが、かの「一般理論」で自身の理論的支柱に置いたまさに「乗数効果」と同様に、すざまじい勢いで世界中に拡散してゆく。


従来のインターネット媒介との違いはその実名性にある。1つ1つのつなぎ目は、実名と実名とのリアルな結合から成っている。そのリアルな波及が、リアルでグローバルなパワーを生みだしてゆく。どこの誰だかしれない者の意見と、日ごろ顔を知ってて親しい友人に「いいね」トは、説得力が違う。また、そうしたリアルな本音の連鎖は、特に爆発的な「革命」の原動力となりうる。


今回の、北アフリカのチュニジアの「ジャスミン革命」を端緒として、いまや、野火のように、シルクロードを通って、中国に向けて東進拡大しようとしている、革命のモメンタムは、こうしたインターネットの世界で生まれたイノベーションの派生であるとも言えよう。


リーマンショック以降の世界的な不況の嵐に追い打ちをかけるように、昨年から、ドル過剰発行の過剰流動性の反動もあり投機マネーのため、食料投機などにより食料の国際価格が高騰しており、今回のG20でも深刻な問題として議論されている。バーレーンでもこうした食糧価格急騰が、下層のシーア派市民の生活が悪化して、政府に対する市民の不満が高まり、そんなタイミングで、「ジャスミン革命」「エジプト革命」が起きた。


そして、エジプトの革命と同様、バーレーンの権力者も、国民の反政府運動に対して前代未聞の譲歩を開始している。ここに権力側の大きな変化の階を観察できる。


このモメンタムは、世界に巨大な影響を与えつつある。


万が一、このバーレーン革命がさらに進展し、バーレーンがシーア派の政権になったら、ほぼ確実に、バーレーンと海上の橋でつながっているサウジアラビアの東部州の大多数を占めるシーア派が政治覚醒し、彼らの決起が起こる可能性がある。サウジの石油の9割は東部にあり、その影響力は甚大である。


そして、既にいまや、バーレーンからはるか東部の中国でも、インターネットによる政治改革の集会開催の呼びかけが野火のように広がりつつあり、当局が警戒体制を強化している。


もはやグローバルな変革モメンタムにあるのは、時間の問題と言ってもいいかしれない。


徒然人がまだヤルタ体制が厳しい時期に渡独した欧州も、その後数年でベルリンの壁が崩壊し、かつては鉄のカーテンとも揶揄されたヤルタ体制はあっけなく瓦解した。当時は、国境を越えてテレビやラジオのメディアが大きな力を発揮した。


それから、20余年たった今日、いまや、Facebookが、新しい世界史作りの黒子となっている。


これから数カ月、世界の動きから目が離せない。