スティーブンキングの「死のスワンダイブ」を読み終えて、兄の事を思いました。

兄とは小さい頃よく喧嘩もしましたが、一方でとても頼りになる人でした。

ただ、頼り過ぎるあまり、常に兄の陰に隠れて、弟である自分は、あまり存在感は無かったのではないでしょうか。

高校の頃の兄はとても器用で(今もそうだと思いますけど)、マッチョ。
よく北斗の拳のケンシロウの絵を描いたり(これがまた上手い!)、プラモデルの兵隊人形セットを勝ってきて、彫刻刀やパテで加工し、キン肉マンの超人達を作っていたものです。
アーティスト的な面を持った人でしたね。

私はそんな兄が大好きで、尊敬さえしていました。
でも、うちの両親は、兄のそういった才能を認めていませんでした。
そんなモンで飯を食えるか、と。

そんな兄も、入った専門学校でパチンコパチスロを覚え、いつしかそういったことをしなくなっていきました。

その後就職し、建築設計事務所に行く事になったのですが、それは彼が希望した業界ではありませんでした。
兄が器用だという理由だけで、比較的堅そうな職種だ、と言って親がそこに追い込む形でした。

兄の地獄の日々の始まりでした。
兄は生真面目な人でしたから、仕事が終わらなければ夜中まで残業し、帰宅してもちょっと仮眠するだけで、また出勤する、といったことがよくありました。

気がつけば、彼の体と精神はボロボロでした。
睡眠不足、運動不足、不規則な脂っこい食事にタバコ、強度のストレス。
休日は日曜日だけで、貴重な休みもパチンコパチスロで終わるのでした。

いつしか、「自分も働き出したら兄のようになるのだろうか。人生夢も希望もない」という思いを持つようになっていました。

つづく?