「松山千春 『私たちの望むものは』に思うこと~松山千春 全作品解説293~」S3068
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◇更新履歴
V1.0:2015.6.24 初稿
V1.1:2017.9.07 是正
V1.2:2021.7.22 是正
■「私たちの望むものは」
作詞・作曲:岡林信康 編曲者:飛澤宏元
2006年5月31日発売のカヴァー&リテイクアルバム『再生』のDISK1 の9曲目
*オリジナルアーティスト:岡林信康
1970年7月リリースの3枚目のシングル(ビクターレコード)
◆レコーディングミュージシャン(後日追記)
01. ドラム:
02. ギター(AG):
03. ギター(EG):
04. ベース:
05. キーボード:
06. サックス:
◆所有収録アルバム画像
◆2015.6.24 夢野旅人
松山千春に「人生とは」と音楽で、投げかけてくれたという岡林信康。
貧しかった幼少期に関西フォークを知った。
小学生のとき、足寄に彼がコンサートで訪れる(詳細な日時は不祥)。
貧乏だったから、チケットは買えなかった。
外で、漏れる音を聞いていたという。
これを機に、よりフォークソングに傾倒していく。
高校一年(1971年)のとき、文化祭の前夜祭。
初めて人前で歌った。
その唄が「私たちの望むものは」だった。
途中、電飾の電源が切れて暗く静まり返った中、
自分の歌声が、聴衆に浸透していく実感を初めて知る。
その瞬間が、歌い手としての始まりだったのだろう。
5年後、アマチュアといえどギャラをもらって歌い始める、そして翌年デビュー。
すぐに、ラジオ「オールナイトニッポン(2部)」で岡林との初対面を果たした。
ステージで共演したのは、
1979年7月22日、西武球場で行われた「’80s JAM OVER JAPAN」 。
「フォークの神様」と彼を紹介した千春に、ライター達は「千春は岡林のことをよく知っていない」と揶揄した。
千春にとっては、誰が何をいおうが、岡林本人が否定しようともフォークの神様なのだろう。
週間プレイボーイでの連載「天下無敵」で、以下のように語っている(一部、省略、要約)。
幼少期、精神的には豊かだったが、物質的には貧しく追い詰められていた。
人は追い詰められると、なにかにすがろう、手を伸ばして何かを掴もうとする。
俺の場合、
「こんな生活、もうイヤだ。 逃げ出したい」と、
思わず伸ばした手で、掴んだのが岡林たちのフォークソングたった。
彼らの歌は俺の空腹感を満たしてくれた。
彼らの音楽にのめり込んでいった。
彼らが歌う歌詞は、俺にとってとても身近で、自分が今、置かれている境遇を代弁してくれているように思えた。
この世界に入った一番の原動力も、岡林たちにあこがれていた部分が大きい。
でも、俺が彼らと同じフィールドにたったとき。
すでに、彼らは昔の彼らではなかった。
あるとき、岡林と一緒のステージに立った。
彼から、なんのパワーも感じられなかった。
目の前の彼は、ただ懐かしさだけが残る、もぬけの殻の岡林信康だった。
でも、そんな彼のことを嫌いにはなれない。
もぬけの殻の岡林であろうが、少年時代に聴きこんだ、あの岡林がずっと俺の心の中に生き続いている。
いや、だからこそ、俺は彼らにもっと頑張ってほしい。
あの日、俺は決心した。
彼らを挑発しよう。
彼らが持っている本当の潜在能力、それを引き出してやるぞ、と。
それは、
あの頃の彼らが持っていた輝くばかりの感性。
世の中をズバズバと斬っていた鋭い歌の数々。
その感性で、どうして今の世の中を斬ってくれないんだよ。
と、俺からすればやるせない苛立ちが激しくあるからだ。
彼らが俺に与えてくれた果てしない希望に対しての感謝を忘れたくない。
だから、俺は挑発する。
と、述べられている。
あるイベントとは、「’80s JAM OVER JAPAN」のことだろう。
それを前提として付け加えると、
その当時、岡林のマネージメントをしていた事務所が、今では東証1部上場の大手芸能プロダクションである。
その創立者でもある当時の社長が、
岡林信康に対してぞんざいな態度でものを云っていた。
それを目の当たりにした千春は、その社長に憤りを感じたという。
また、そんな状況に甘んじている岡林の姿も見たくなかったのだろう。
もぬけの殻という言葉には、そんな思いも含まれているのだろう。
千春がソロコンサートで、
人の唄をほぼフルサイズで歌ったのが、1986年8月8日 北海道厚生年金会館での「10th memorial concert」だろう。
加川良の「伝道」と、風の「22才の別れ」とともに、この「私たちの望むものは」が歌われた。
その20年後の2006年。
30周年記念アルバム『再生』でカバーされた。
岡林のオリジナルはAメロの歌詞が8番まであるが、千春は6つ。
オリジナルの6番目の歌詞と、8番目である
~私たちの望むものは あなたと生きることではなく
私たちの望むものは あなたを殺すことなのだ~の歌詞がカットされ、
順序も入れ替わっている。
自分は、
シンガーソングライターのカヴァー、ましてや知名度のある日本のカヴァーは好まない。
が、この『再生』のカバーサイドには、
彼らが俺に与えてくれた果てしない希望に対しての感謝を忘れたくない。
という千春の想いがきこえてくるのです。
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