インフレーション1 | 秋山のブログ

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一般物価水準が上昇し続ける現象をインフレーションという。「ざっと学べる本」ではインフレ需要曲線、インフレ供給曲線を指標として説明している。

インフレ需要曲線に関しては、インフレ率の上昇から需要の減少しGDPの下落と繋がるとしている。実証上、P202『GDPは、名目貨幣供給の増加率からインフレ率を引いた実質貨幣残高』と正の相関があり、従ってインフレ率が上がればGDPが下がると言えそうにも思えるが、そもそもマネーサプライの増加率とインフレの関連性が相当高いところで、これは迂闊な考えだろう。インフレ率が上がれば可処分所得が下がり需要が減るというのは、確かにその通りでもあるが、いつも書いている重要な視点、消費者の収入次第でどのようにでもなるところであるし、需要減少が物価の上昇に相殺されてGDPには反映されないこともありえるだろう。インフレ需要曲線は、何でも均衡で説明したがる経済学の悪い習慣が出たものと言ってよいだろう。

インフレ供給曲線は、フィリップス曲線・マークアップ原理・オークンの法則から導き出されるとされている。この連結はかなり乱暴だ。一応、因果関係を記述すれば、物価上昇(賃金上昇)→失業率低下→GDPギャップ縮小ということであるが、これは需要曲線より輪をかけて無理やりだろう。

「ざっと学べる本」では、インフレ期待に関しても説明している。インフレ期待が高ければ、賃金の上昇圧力が強くなるからという理屈である。これは理にかなってはいるが、実際に上がったかどうかが重要であろう。インフレ期待がなくても賃金の上昇圧力は存在する。物価上昇に関して、インフレ期待の概念を持ち出してくる必要は無いだろう。企業が融資を多く受けるなどして、賃金を上げられるような貨幣の量を確保できるかどうかの方が、重要であろう。
期待インフレ率と融資の関係に関しても、記述している。融資の確率にもちろん影響はあるが、そもそも金利の影響自体が実証上限定的であるところに、期待インフレ率は現時点のインフレ率に実証上強く相関するということを考えれば、期待インフレを通しての経済政策の効果は微々たるものとなろう。

「ざっと学べる本」のインフレの種類に関する説明はよい。ディマンドプルインフレとコストプッシュインフレがあって、前者が需要に生産が追いつかないことによって起こるもので景気がよい時に生じ、後者が生産性の上昇を上回るコストの上昇で起こる悪いインフレであるというのは、常に留意しなくてはいけないことであろう。ただ、もう少し深く考える必要もあるだろう。コストプッシュインフレに、賃金の生産性を上回る上昇も理論上入りことになるが、賃金の上昇は需要の上昇に繋がるので悪いことではない。原油価格の高騰など、短期的には国民の厚生を低下させるが、大きな労力の増加もなく、上がった原油代の分だけ生産を増やして輸出できるのであれば(新古典派の均衡によって最大限の生産がおこなわれているという想定が間違いの元だ)、国内の分配が上手くいけばいいだけとなる。実際、原油価格の低下は、輸出産業の低迷によって経済に悪影響も与えている。
また、インフレの慣性についても触れる必要がある。価格を決定する生産者は、生産を開始する時に設備投資をおこなっている。それを返済する場合、時間が経てば金利をつけて返さなくてはいけない。それがなければ価格は一定でもよいかもしれないが、それがある限りその分を上乗せしなければ、国がどんどん借金するといった外部要因がない限り、全体として成立しないはずである。金利はインフレと相関があるところで、インフレには慣性がある(しかし加速させる構造は見つからない)。

一般物価水準が上昇し続ける現象をインフレーションといいます。一方、下落し続けることはデフレーションといいます。

インフレには種類があり、需要が多いことによっておこるディマンド・プル・インフレ、生産性の上昇を上回るコストの上昇によっておこるコスト・プッシュ・インフレがその代表的なものです。どのような形でインフレが起こったのか見極めることは重要な事で、例えば原油価格が上昇したことによるコスト・プッシュ・インフレに対して金利を上げることでインフレの抑制をはかり景気を急激に悪化させたことが過去にはありました。

インフレは、経済学においてさまざまな事象との関係が研究されています。インフレと失業率の関係は、過去大きな研究テーマでした。インフレと失業率は負の相関にあることが観察されていましたが、この関係は、その後スタグフレーションによってそうでない場合があることが明らかになっています。ここで重要な事は、物価が変動する構造から理解することです。例えば、好況で失業率が低く、その結果物価が上がるディマンド・プル・インフレがおこっている状況であれば、負の相関が観察されるでしょう。しかしコスト・プッシュ・インフレであれば、そのようなことにはならないわけです。

インフレと景気を考える時に重要なのは、消費者の可処分所得がどのように変化していくかです。消費者の収入は有効需要の元ですから、これが足りないということは需要不足となり、不景気になります。収入が同じで、モノの価格が上がれば、それも需要を減らします。逆に、どのようなインフレ率であれ、消費者の収入が同程度に上昇するのであれば、景気に悪影響はほとんどないということです。


●インフレ税による再分配

インフレにより金融資産は目減りします。一方、国の負債も減少することになります。国が負債を持つのであれば、インフレは資産家から国への所得移転、税のように働くということになります。これだけ見るとインフレは好ましくないかのように見えるかもしれませんが、格差是正にも働き決して悪いことではありません。例えば、もし国が借金をしてそれを低所得層に給付したとすれば、インフレはまた有効な再分配の手段にもなるでしょう。(経済はこのように全体を見て判断することが重要です)

●インフレと利率

利率は経済の状態に大きな影響を与えます。融資に対するブレーキとなるため高くなり過ぎるようであれば、調整が必要でしょう。この利率に対する評価において、インフレ率が重要になります。同じ利率でも、インフレ率が高い時と低い時では、その効果が全く変わってきます。そこでインフレ率との差である実質金利(実際のインフレ率ではなく期待インフレ率を使うのが正確な定義ですが、議論の対象となることでしょう)が、よく使われています。
デフレの時にはこの実質金利が高止まり(名目金利は通常ゼロ以下にならないためです)するために不況が回復しにくいということになります。

また一方、インフレ率が上がる時は、利率も上がることは多いです。貸す人間の立場に立てば、以前と同じだけの見返りを求めたいと思うことでしょう。借りる方にしても、金利をはらう余力が増えるために受け入れやすいということになります。ここで重要なことは、インフレ率が上がれば必ず利率も上がると誤解してはいけないということです。政策や、金利を払う側の状況など考えうる要素を全て考慮し、適切なモデルを構築した上で推測しなくてはいけません。

●インフレと貨幣供給

貨幣の量が増えることにより、貨幣の価値が下がり、その結果物価が上がるという考えがありますが、構造をきちんと理解しなければ、間違いのもとになります。現実での貨幣の量の増加とは、生産と消費のループにおける消費者の収入の増加です。消費者の収入が上がれば、価格が上がっても購入が可能になるため、物価を上昇させる方向に力が働くということに過ぎません(収入が増加したことによる効果の何割かは、消費量の増加に反映されます)。モノの価格が上がるのは、貨幣の価値が下がったからではありません。(例えば金融政策に関する誤解も、このような表現を取ることによって起こってくるものです)