日本の経済学部に明日はあるのか | 秋山のブログ

秋山のブログ

ブログの説明を入力します。

久しぶりに小峰隆夫氏の記事から。軽減税率の話

国会の参考人質疑で軽減税率反対の話をしたそうだ。4人の経済学者全てが反対意見を述べた。
『小塩氏は「公平性の追求という政策目的から見て効果的でない」という観点から反対であると述べた。五十嵐氏は「税制はシンプルな方が望ましいから」反対だと述べた。村岡氏は「10%程度の税率であれば、逆進性はそれほど大きくないから(10%を超えた段階で考えるべき問題であるから)」反対と述べた。 』
『私は次のように述べた。「複数税率にして食料品は軽減税率ということにすると、何が食料品で何が食料品でないかという線引きをめぐる問題が出て、なるべく食料品にしようと課税逃れの工夫をする人が出てきたりする。せっかく工夫するならもっと建設的な工夫をしてもらいたいと思います」 』

消費税自体の問題である経済への悪影響に比べれば、どうでもいい話である。シンプルであるべきという話には私も賛成であるが、どれもこれも経済学者に聞くべき理由ではないだろう。

注目したのはそこではなくて、その次の内容だ。
『政策として非効率というのは、次のようなことである。表の数値例を使って説明しよう。 年収300万円の世帯の食料支出が(中略) 消費税を10%にすると、(中略)300万円世帯が3.3%であり、年収1000万円世帯では2.4%となる。所得が低い層ほど、所得比で見た税負担が高くなる。これが逆進性である。 この逆進性をなくすために、食料品の税率を5%に据え置いたとする。税金を払わないで済んだ金額だけ補助金を受け取ったと考えると、300万円世帯への補助は5万円、1000万円世帯への補助は12万円となる。高所得層の方が多くの補助を受けることになる。確かに低所得層を補助してはいるのだが、それは高所得層により大きな補助を行った上で低所得層を補助しているのだ。いかに非効率的な分配政策であるかが分かるだろう。 』
同じ税率で高低二人の人間がいた場合、税率が下がれば払う税金が少なくなるのは当たり前だ。その減った分を補助金扱いして高所得者層により大きな補助などいうのは全く意味がない(意味があるのはトータルでどれだけ払うかだけだ。高所得者はより多く払うことになっているが、収入比からすれば負担は軽いという話だ)。馬鹿げた言葉の遊びだ。逆進性で問題になるのは、あくまで払う額ではなくて、払う税の総所得との比だ。
その後にある年収と負担額、年収比の表も、税率が半分になれば食費に関する負担比が半分になっているだけで、収入に対する負担率の比の、高所得者と低所得者の比には全く変化がない。低所得者層では、全経費における食費の割合が高いということも、逆進性の鍵であり、食費だけ取り上げても意味は全くない。

おそるべきはさらにその次の話である。
『消費税の持つ逆進性を説明し、その対策として「食料品に軽減税率を導入するのに賛成か、反対か」を問うと、これも8~9割の学生が賛成であった。ところが、前掲の表を示して、軽減税率が富裕層に大きな恩恵を与えることを説明した上で、再度賛成か、反対かを問うと、何と賛成は「ゼロ」になってしまったのだ』

法政大学の学生は、こんな単純な話のカラクリにも気付かないのか?!
130人も聴講生がいたという。単位欲しさにだまっていたのかもしれないが、一人も気付かないとは、法政大学の経済学部のレベルは推して知るべしだろう。
自然科学分野で、論文の査読になれている人間がみれば、経済学の素養が全くなくても、この程度のことには気付く。

消費税に反対する人間の中には、狭い視野で反対している人間も少なからずいるだろう。しかし、例えば新党きづなの議員など、経済を深く理解して(多分)反対している人間も少なからずいるのだ。賛成している視野の狭い人間が、より視野の狭い人間を見つけたからと言って、言っていることが正しくなることはないだろう。

小峰氏の視野の狭さを示す文章がこちら。
『社会保険料を納める人が減少し、給付を受ける人が増えていく。これを是正するには、保険料を引き上げるか、給付を引き下げるしかないのだが、いずれも国民に痛みを強いることになる』
これはある程度正しいことであるが、需要に供給がおいつくかどうかの視点が抜けている。供給が追いつく限りは、そしてどう考えても追いつく(しかもそれほどの苦労もなしに)のであるが、納める人が少なくなっても問題がおこるとは限らない。一人あたりの供給は以前より大きくなっているのだから、当然一人あたりの給与は高くなっていなければいけないだろう。そして給料があがったところで保険料を上げれば、ほとんど痛みなどないだろう。これに気付かないのは視野が狭いとしか言い様がない。