こんにちは。千葉です。

千葉にとっては今年唯一最大の、と言っていい演奏会の感想、難しさに苦難呻吟しつつ書いておきます。明日の公演に行かれる方は、読まないほうがいいのかなぁ、ネタバレというわけではないけれど先入観なしで聴かれるのがいいんじゃないかと思います。


◆サー・サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

2011年11月22日(火)19:00開演

会場:サントリーホール 大ホール

曲目 マーラー:交響曲第九番 ニ長調


千葉は2階Pブロック四列目、ラトルを真正面に見据える席で聴きました。鐘が一音ずつ見るからに頑丈そうな箱に入っていたので直接音が来ない、というようなデメリット※はあったけれど、このホールが参考にしたフィルハーモニーで慣れてますからね、彼ら。音響的には直接音多め、ということ以上の問題はなかったように感じています。というよりもむしろ、彼らの音楽の細部までを十分に聞き取れたのですから、席に文句はありません。

※とは言いましたが、これにしたって、ある種の効果と思えたほどです。「ドン・カルロ」の天上からの声、「パルジファル」のアルト、そしてマーラーが使用した数々のバンダが想起され…ということで、千葉はかってに演奏を読んでしまうから音楽が曇らずに、ちゃんと聴こえる席であれば文句はないのです(笑)。

3年ぶりの彼らの来日、そして記念年のマーラーのそれも第九番、1993年のウィーンとの録音も2007年の彼らの録音も好んで聴いているものですからね、思うところ大いにあるわけですよ。おかげさまでもう、どこから書いたらいいものか…

演奏自体は非常に雄弁そのもの、特にもそのオーケストラときたら!いわゆるヴァイオリン両翼配置でしたので、千葉が座ったPブロックには第二ヴァイオリンが直接聴こえてくるのだけれど、彼らがまた!ラトルがキューを出さなくても十分に主張しているのだけれど、キューが出るとその途端に主役として振舞い始めるさまは圧巻でした。随所で印象的に主張していたのですけれど、例えば第三楽章の細かいパッセージなんて、そこまで主張しちゃうのか…と呆れにも近いほどに(笑)驚かされました。
樫本大進コンマスに率いられる第一ヴァイオリンはもちろんのことヴィオラ(!!!特筆モノ、後で言及します)、チェロ(クヴァント、ブラーヴォ!)にバシスト諸氏(鳴るなんてもんじゃない)と弦セクションの鳴りは、強音ではまさに嵐のごとく(Pブロックには暴風が吹き荒れていました、割と本気で)、弱音では音が輪郭を失うぎりぎりのところまで表現が追求されるという見事さで、その表現力には起立脱帽して喝采を贈るほか、ありませんよ、もう。
管楽器で千葉が識別できたメンバーはフルートがアンドレアス・ブラウでオーボエがアルブレヒト・マイヤー、ホルンはトップがシュテファン・ドールにトランペットはガボール・タルケヴィ(!!!素晴らしい出来!)、低音金管は若返り中の印象(トロンボーンの二、三番が何故かリーゼントだった…いや、演奏には関係なかったわねあははは)、そんなところでしょうか。クラリネットがフックスでなかったのは少し意外でした、この曲ならクラリネットの役割も大きいだろうに、と思ったものですから。部分的に事故はあったものの(例えば二楽章最後のファゴット、ちょっとしたミスが散見されたテューバ←これは昔さらった曲だから気づいた、というレヴェルかも。一番は樫本大進の楽器、弦が切れちゃったところでしょうね)、基本的には「世界最高のオーケストラ」と言われるだけのことはあるのだ、と今さらながらに申し上げるほかない、のです。

とは言いながら。おそらく、このオーケストラに美音を、それだけを求める人には喜ばしくない部分もあったのではないかと。というのも、この音楽をドラマとして提示してくれたように千葉は感じているのですけれど、その振幅の大きいことと言ったら!この作品絶賛していたアルバン・ベルクの言葉を引くまでもなく圧倒的な第一楽章、その濃縮されたドラマの密度と言ったらもう!栄光の頂点が高ければ高いほど「Mit Hochster Kraft」のところで襲いかかる悲劇の影もまたより昏くなるものだけれど、この演奏の見事さはもう、なんと言ったらよいやら…
冒頭からリズム・モティーフや主題、そしてその変形を印象的に描き分けていくからこその、栄光と崩壊の圧倒的なコントラスト、その衝撃はやはり聴いていただかないと伝わらない…特にも何度となく頂点を目指す道の途中で強迫的に打ち込まれるティンパニの印象的なこと!この楽章、やはり厭世的であったり諦念よりも、もっと意志的な音楽ですよ、少なくともこの演奏から、パラノイアックな死への恐怖など感じようもない。ラトルのかつての録音でもそのようには感じられていましたが、やはり目の前でこれだけの音楽が鳴り響けばより一層その思いは強まろうというものです!

あああ、何か第十番のマーラー自身の書き込みのようにエクスクラメーションだらけになって来ました(笑)。ここで、今回の記事だけで書きたいことを書ききるのを諦めて、続き物の第一回とします!(と言えば格好がつくだろうか)自分で書いていて何が困るって、音響としての話と解釈としての話が本当は不可分なのだけれど、これだけの音を聴いてしまい、かつ自分なりに受け取れたこの音楽の「本筋」があるともう、何から書いていいのやら(笑)。ということで、明日また続きをアップします。書くのは今、勢いがついているうちにやろうと思いますが。

では本日はこれにて、ごきげんよう、おやすみなさい。


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