こんにちは。千葉です。

今日の夕方、日も短くなったものだなどと思いつつビルスマの無伴奏を小さい音で流しながら読書をしていました。もうようやく台風が過ぎたことで季節が変わってくれたのか、セミではなくて秋の虫の声との二重奏になってしまいましたけれど、これはこれで…

なんて、季節のエッセイみたいなお話ができればいいのですけれど、ニュースで報じられる台風の被害に、今年の季節の変わり目は何故かくも厳しいのかと、しばし絶句してしまいます…まだ何も収まっていない東北への支援ももちろんですが、早々に近畿地方への支援が立ち上がってくれることを願っております。


さて今日も読み終わった本の話。オペラ絡みです。

トゥーランドット 蝶々夫人 ラ・ボエーム (中公文庫―マンガ名作オペラ)/里中 満智子

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千葉にしては珍しく、著名な先生なのにその作品を読んでいない里中満智子先生による、プッチーニの「蝶々夫人」「トゥーランドット」「ラ・ボエーム」のコミカライズを読みました。「アリエスの乙女たち」はマンガを読むより先にドラマになってしまったし、長じてからは先生の取り組む路線と千葉の嗜好が合わなかったんですよねぇ…

それはともかく、読んだマンガの話をします。
三作品とも、基本的にリブレット通りに描かれている、というか、ほとんどマンガに置き換えただけ、というか…音楽とは違って読み手のテンポで好きなように読めてしまうから、この忠実さがなかなか微妙に思えました、特に「蝶々夫人」。見せ方あるんじゃないの、なんて無礼なことを感じつつ「トゥーランドット」まで読み進めて、慣れたせいかどうかはわかりませんが「ラ・ボエーム」はけっこう楽しめました。

思うにですね、「蝶々夫人」「トゥーランドット」の二作と「ラ・ボエーム」では求められるものが違うんですよ、きっと。
前者では、社会構造と人間関係を組み合わせて描く必要があったり(「蝶々さん」の描写において、日本的なガジェットがどうこうよりもそっちのほうがずっと大事です!)、作品自体がメタ構造になっていたりしますから(「トゥーランドット」をいわゆる自然主義に押し込めるとただの変な人大集合、になりますからね!)、マンガにするにはけっこうな力技が要るように千葉には思われるのです。有名な割に複雑だなぁ、っていつも思うんですよこの二作。「トゥーランドット」はスペクタクル的な演出も多いから、マンガだとスケール感が出にくかったかも。

しかし後者は至ってシンプル、いわゆる人情モノの範疇で描写してもさほど問題なく作品の魅力は伝わってくる。さすがに音楽上の工夫は再現しにくかったか第三幕の幕切れ(二重唱×2)はいまいち座りが悪いけれど、フィナーレはなかなか感動的で、読ませるものがありました。

というわけで、イタリア語対訳で台本を読むのはちょっと…と思われる方は読んでみてもいいかも。ほら、展開がわかっちゃえばイタリア語がわかんなくても楽しめますから、アリだと思いますよ、入門の入門、くらいの位置づけではありますけれど。

先日も書いたけれど、本当は声抜きでオペラがどうこう言うのはけっこう不毛なところがありますので、このストーリィが気に入らない日本の扱いがどうこう、って話をするのはもったいないです!もし興味が有るのなら、まずは日本語字幕付きのDVDで見るのが一番、なんですけどね…

と最後にちゃぶ台を返して逃げるように本日はおしまい。ではまた、ごきげんよう、おやすみなさい。

リチートラ・デビュー! ~プッチーニ & ヴェルディ:アリア集/リチートラ(サルヴァトーレ)

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抜粋は入門向きではないのだけれど、若き日の彼の歌で今日は送らせていただきます。合掌。