こんにちは。千葉です。

もう震災から10日、と思ってすぐにいやまだ10日か、と思い直す。今現在深刻な状況にある福島第一原子力発電所は、その後処理まで考えるとかなり長い期間にわたってつきあっていかなければならないものですから、10日くらいでどうこうなんて、言ってはいられませんね。昨日救出される方もいらしたくらいですから、まだ可能性はあるのだと思うのと同じくらい、先々のことを考えないといけないのだろうなと思い始めています。


閑話休題(と書いて「さて」と読ませた先人は素晴らしい!)。当ブログの通常営業といったら、これを進めなくてはなりますまい。そう、今年前半の軸になるはずだったこのボックスの盤を聴いていく企画ですよ!…って、みなさんもうお忘れかも知れませんね、すみません。それにこのボックス自体がどんどんと入手困難になっていくこの悲しい状況、時宜を逸した自覚をひしひしと思い知りつつ、これもいつか何かの役に立つと信じて粛々と進めたいと思います…

Bernstein Symphony Edition/Leonard Bernstein
¥13,107
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エクトル・ベルリオーズ
幻想交響曲 Op.14a(1830)
[1963/5/27: NYC, Manhattan Center]
[付]ベルリオーズ・テイクス・ア・トリップ~バーンスタイン「幻想交響曲」を語る(1969/3)


今ではこの曲は「ベートーヴェンのすぐ後に書かれたもの」という認識が広まっている、はず。1830年に作曲されたベルリオーズ最初の、そして比較的普通の交響曲です(…えっと、この人の場合、他の曲がちょっとユニークなので。「イタリアのハロルド」は協奏曲だと思うし、「ロメオとジュリエット」はカンタータじゃないかなぁ…)。全曲を通してフィックス・イデー、固定観念なるメロディ(というかモティーフ)が想いを寄せる女性を表す、ある種の表題交響曲です。名曲ですよ!
で、説明が終われるといいんですけど(笑)。ストーリー仕立てになっているこの作品、全五楽章のうち三楽章まではまだいいんです、恋は盲目だよね、で済みますもの。四楽章からは明らかに妄想がちょっと痛い方向に飛んでしまい、最終的にはワルプルギスの夜に暗躍する魔女になっちゃいますからね、妄想の中の彼女…※その後、作中で描写される彼女のモデルであうハリエット・スミッソンと結婚できるとはまったく思っていなかったんでしょうね、若きエクトルくんは(笑)。


この曲を知ったのは、かつて吹奏楽ではやっていた頃のこと。その当時にはベートーヴェンがどうとかそんなこと知らないから、タイトルの割に意外に大人しい曲だなって思った覚えがあります。吹奏楽はジャンル自体が若いですから、その経験の中でより近代よりの曲を知ってればそう思うよね、それは。うんうん(さりげなく昔の無知を擁護してみた)。


とは言いつつ、ノリントンがロンドン・クラシカル・プレイヤーズを指揮してこの曲を録音した頃には、この曲についてはいわゆる古楽アプローチはかなりネタっぽく扱われていたように思います。実験的、と言いましょうか。その後ガーディナーやインマゼールなどの説得的な演奏が続いたこと、またラトルのように折衷的なスタイルの演奏が出てきたことで、作曲された時代相応の演奏が普通になったように思います。もちろん、去年タワーレコードで一番売れたというミュンシュ&パリ管弦楽団の演奏のように、ロマン派的なアプローチのほうが今でも人気なんだろうな、とは思いますけれど(けっこうフクザツな心境)。


ではバーンスタインの演奏がどうかと言えば、古楽方向ではなくロマン的な演奏、ということになるでしょう。作品が体現する時代の相を踏まえるのに、より精神的な面から捉えているといえばいいでしょうか。ちょうど最近になって少しわかってきた感じのあるチャイコフスキーの「マンフレッド交響曲」なんか、けっこうこの曲の直系の作品なんじゃないかしら…
演奏のスタイルという点ではむしろベルリオーズ以降の、ワーグナー的な語りを採用した、先程の例で言えばミュンシュよりのもの。元気の良い鳴りはさすがですし、音楽の流れも緩急自在で実に雄弁。劇的な音楽を「語らせる」とさすが、でありました。
もちろん、勢いのありあまる演奏は好みが分かれるかも知れません、カラヤン風の演奏を求める方にはオススメしません。まぁ、千葉はこの曲はカラヤン的なアプローチに向かないと思いますけど。


なお、彼のこの作品への認識は、この盤に収録された彼の解説からもうかがえます。トリップをおクスリ的な意味合いと物語の展開をかけて「Berlioz takes a "Trip"」と題された解説では、ビートルズよりずっと先にサイケデリック音楽をやっていた、と半ば冗談まじりでこの作品の「標題」と音楽的な作りを教えてくれています。さすが「ヤング・ピープルズ・コンサート」のマエストロ、であります!拍手!


※もちろん、11話から先がとても観たいなって 思うがゆえに、直訳の「サバトの夜の」云々にしていないんですよ?やだなぁ、あたり前じゃないですかぁ(おいおい)。なお、千葉は改訂される前の「おクスリinは第三楽章のあと」派です(改訂版だと、全曲を通じておクスリの影響ということになってます。じゃあ一楽章とか、あんなに真摯な祈りに収斂するのはどうなのよ?って彼の墓地で説教してあげたいと思います)


以上、久しぶりに音楽の話に集中したような気がする。え?気のせいだ?…まぁ、リハビリってことでご容赦いただけますれば、拙この上なき歓びにござりまする(希望が小さすぎる…)。
では例によって少しでも早く支援の手が必要な人達に届きますように、核燃料や炉心が想定通りの冷却状態に進みますように、とお祈りして本日はおしまい。なお、バッハさんの誕生日は「音楽の捧げもの」あたりで祝おうかと思っております。ではまた、ごきげんよう、おやすみなさい。