こんばんは。千葉です。
めずらしく本日はクラシックのお題ダブル・ヘッダでお送りします。お誕生日記念バーンスタインの話です。


お誕生日なのに、と思われるかもしれませんけれど、マーラーの交響曲第九番の他に昨日聴いた、というか見たのはこのDVDです。

バーンスタイン/ヴェルディ:レクイエム [DVD]/ジョセフィン・ヴィージー(MS),プラシド・ドミンゴ(T),マーティナ・アーロヨ(S)
¥1,995
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バーンスタインがロンドン交響楽団を指揮した1970年2月の映像です。バーンスタインとロンドン響といえば、1973年にイーリー大聖堂で収録されたマーラーの交響曲第二番を思い出される方も多いでしょうし、また晩年には自作ミュージカル「キャンディード」の最終改訂版の演奏や、最後の来日公演での共演も比較的記憶に新しいところです。それでも20年前、ってことになるんですけどね、いやはや…


この曲は、バーンスタイン没後に同時期のセッション録音が追悼盤として発売されて、千葉はその演奏で初めて知ったのです。


その当時は今みたいに効果音的に使われたりしてなかったんですよ!折角の機会だから余談ですが書いておきます、バブル期っていうと単純にけなす気配があるように思われますけど、クラシック音楽をその文脈を無視して効果音風にリミックスしちゃうほど無節操ではなかったと記憶してます。CMで使うにしても、もう少し節度と理解があったと思うのですけれど…
この曲について千葉が覚えている限りでは旧劇場版と称されるエヴァンゲリオンの完結編の予告で用いられたのが、作品から切り離された使い方だったように記憶してます。あれはまだ、殺伐とした展開を「怒りの日」になぞらえていたように思えたからギリギリセーフだけど、最近のはもう、ね…


すみません、愚痴になりました。その録音でこの曲を知り、その後ヴェルディも聴くようになるのだから千葉にとってはバーンスタインが教え導いてくれたものは本当に多いのです。その後、レーザーディスクのボックスでこの映像が発売されて、その巨大な編成やバーンスタインの指揮姿などなど、楽しみ驚き勉強して、という感じだったのを覚えています。まぁ、久しぶりに映像を見た感想は「バーンスタイン若いな!カッコいい!」とか「ドミンゴ(笑)その髪型を何とかしろ(笑)でも四十年前のあなたは実にパワフルでいい声ですな(今もいい声ではあるのですけれど)」などなど、なかなかどうして、どうでも良い内容になってしまうのです(苦笑)。


当時のヴィデオ収録の映像ですから画質は期待しないでいただきたいし(マーラーはフィルム収録なので少しまし、しかしこれが意外な禍根を残すのだった←いつかちゃんと言及しますが、第七番の音と映像をちゃんとシンクロしようとしないユニテル以下制作サイドには呆れてものが言えない)、音声だって1970年録音のCDなんかと比べたらけっこう残念なレヴェルです。しかしそれでも、指揮者というのがどこまでもコミュニケータでなければならないのだ、ということをよく教えてくれる素敵な記憶です。


そして、指揮者がある作品を演奏するということにどのような意味があるのか(または、演奏することによってどのような意味を持たせられるのか)、考えさせられるものでした。演奏に先立って、バーンスタインのメッセージが収められているのですが、そこで彼は「(セントポール大聖堂がドイツによる空襲から奇跡的に助かったことに触れた後)ここでヴェルディのレクイエムを演奏し、爆撃による倒れた人々に哀悼を捧げます。とめどない戦火と迫害、忌まわしい非人道的行為でした。痛ましい過去の犠牲者のみならず、現代と未来の我々のためにも演奏を捧げます。(中略)演奏を聴いて今こそ我々の時代を振り返ってください。二度にわたる世界大戦、朝鮮、ベトナム、ナイジェリア--罪の無い人々が殺され強制収容所には死体の山が築かれました。指導者の暗殺も続きました。ケネディ兄弟、マルコムX、ハマーショルド国連総長、マルティン・ルーサー・キング、その他多くの人々です。先立った人々の魂を思い、人類の救済を祈りましょう。」と語っています。


なるほど、今ならよくわかるのですが、この作品には死者の冥福を祈ること以上に、生き残った側による死という理不尽への異議申し立ての如き怒りがある。なるほど、ヴェトナム戦争も末期の1970年にアメリカを代表するマエストロがこう言えば否応なくいろいろな意味がついたことだろう、そしてそれは多様な議論を醸すだろう。バーンスタイン自身はこういった政治的な場面でも他人に結論を与えるのではなく、議論の契機を提示するタイプだったように思うので、こうした振舞いによって少なくない批判を浴びたわけです(政治的にアマチュア、って奴ですね)。しかしながら、40年経ったいま見てみると、また違う目で見られるようになったのではないかな、と思えます。ベトナムは例外じゃなかった、今もまた同じことが繰り返されている。そもそも論だけで語れるアマチュアならではの射程距離、と言えるでしょうか…


いろいろと脱線してしまいましたが、千葉はこの映像、大好きだなって再認識しましたよ、というお話でした。いけませんね、バーンスタインのことを書くと多岐にわたって書きたくなるものだからいくら書いても書き足りない様にも思うし、調子にのって書いていったら支離滅裂になることもみえているし(笑)。新全集の話が終わったら、取り上げ方を考えます。


なお、最近Twitter方面で話題のCDボックスをひとつ最後にご紹介。

Bernstein Symphony Edition/Leonard Bernstein
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CBS時代にバーンスタインが録音したシンフォニー60枚をまとめたボックスが10月に発売されます。その値付けが、H○VT○werrec○rds とAmaz○nでけっこうなギャップがあるね、という話になりまして(あんまり伏せられてないぞ~)。今のところ上にリンクを貼ったAmaz○nが最安値で予約受付中で、なんとクラシックのランキングで一位をキープしているのだから驚きです。まぁ、8,000円強を60枚で割ったら、えっと、一枚あたり…ですからね、お買い得なのは間違いありません。千葉も一部の重複を恐れずに購入することにいたしました。だってこれでマーラーの旧全集も揃いますし!(笑)


きっとこれから10月の没後20年にかけて、いろいろと話題もあるだろうバーンスタイン関係、これまで以上に書いていくと思いますので期待されたい方はぜひ。では今度こそここまでで〆ますね、ごきげんよう!