こんにちは。千葉です。


さて本日のマーラー、「角笛」歌曲集とはダイレクトにつながってしまうので交響曲第三番を選択。演奏は、久しく聴いていなかったジュゼッペ・シノーポリ指揮フィルハーモニア管の1994年の録音です。

Mahler-Sinopoli: The Complete Recordings [Box Set]/Bernd Weikl
¥11,506
Amazon.co.jp


彼の全集ってもう少し前に録音されていたような気がしましたが、確認してみると80年代後半から90年代前半にかけて収録されているんですね、なるほど…そしてこの第三番は、チクルスの掉尾を飾ったもの、であります。
(こんな印象があるのは、たぶん1990年の東京芸術劇場のこけら落としでマーラー・チクルスを行ったことの印象が強かったせいだと思う)

このディスクはいわゆる4D録音の頃のもの、なかなかの録音です。4D、後期はけっこう酷いものもありましたけどね(特に名を秘すが、敬愛する京都賞受賞マエストロ/コンポーザーさまの、アメリカで録音されたディスクはけっこう…)。


ジュゼッペ・シノーポリといえば千葉にとってはひとつの原体験でもあります。それについて書くと長いし以前に書いたものがあります故、もし興味をもたれた方はこちらをご覧ください 、今と違う、自分が書くこと書けること、そして営業モードとのあいだで試行錯誤する初々しい文章(笑)が読めます(自分で言うな)。

しつこいようですが、千葉は原理主義的バーンスタイン派でしたから、彼亡き後に黄色いレーベルがシノーポリを推していたことを快く思えなかったものです。今はまぁ、そういうものだと割り切っていますけれど(あたりまえだ)。その結果、シノーポリは実演を聴くまでは聴く対象にならず、むしろ遠ざけていたように思います。


なに故か、と考えるに。彼に枕詞のようにつきまとい続けた精神分析云々、そのあたりのレーベルが気にいらなかったのかなと思います。ニューアカ(旧いな)には間にあわなかったけれど、その名残くらいはあった時期に思想的にものごころついたばかりですからね、それはもう覚えたてのフレーズでツッコんでやりたくもなりましょうよ(笑)、「さて君はシノーポリが何派か知っていて「精神分析云々」言っているのかね?」とか(厭な奴だ)。
さりとて当時は作品分析を踏まえ彼の言動を踏まえ、その上でディスクを聴き込んで検証するだけの能力もないからどうしようもない、語り得ぬものについては沈黙しなければならないのです(苦笑)。なにより、マーラーを大量に買い込めるだけの財力が(以下略)。


そんなわけでほとんど白紙の状態で聴いた実演に大いに感銘を受け、聴いても良いと思えるマエストロになっていたのに、あまり聴かぬまま2001年にマエストロは亡くなられ、その後もあまり遺された録音を聴く機会はなく、今に至るのです。ドレスデン時代のレパートリーには注目してたんですけどね…


さて、そんなワタクシが久しぶりに聴いたシノーポリのマーラー、なかなか新鮮でした。オーケストラの堅実な仕事も素晴らしいし、上述した通り録音もなかなか。強調するポイントが独特ですね、これはまあ、過去の演奏を参照すると文句が出てしまうところかな…独自の表情付けに気を取られてしまうと、本筋を見失いかねないかな、と思われるところもあったように思いますし。


とはいいつつも、演奏行為で求められることが先人の模倣だけならしなくても好い訳ですし。ここに散見される試みが、自分の中で腑に落ちてくれればもう少し評価出来そうに感じています。と、斯様に離れたところから、比較的上手くこの演奏を見られているように思います故、このマエストロの演奏について考えることも今年の課題のひとつと考えたいと思います。


アルト独奏はハンナ・シュヴァルツ。千葉がワーグナーを聴き始めた頃、映像ソフトでみるワーグナー作品には必ずと言って良いほどに出演していたように思われる(たぶん母数が少ない所為だと思います)実力派ですね。四楽章での控えめな表情は印象的でした。


こう書いてきていま一度、当時のマエストロにつきまとったコピーでもある「精神分析」云々を好意的に、有意なものとして考えてみましょうか。

シノーポリの独特な表情付けは、演奏をいわゆるスケールの大きいものにはせず、むしろ特徴的なディテールにあふれた小天地として作品を再現前させる。そのディテールの集積が示す、物ごとが錯綜する様から何かを読み取ろうとするかのごとき演奏が、彼らの演奏から読み取れる。そしてそれはなかなかに説得的なものだ(または妥当し得ないものだ)。


こういった含意がかつてのキャッチコピーにあったら好いな、と、かつてこのお決まりのフレーズに辟易した若者だった千葉から申し上げて今日のところは〆ましょう。ではまた。


※なお、このマエストロに関しては、現場レヴェルでの悪評を、特に国内のオーケストラ関係で聞いています。ですが、まぁ、聴くだけの側からすればそんなことは問題になりませんのでその件は追求しません(笑)。だってねぇ、作曲家の悪評を書けば音楽がわかるってものでもないのと同じですよ←ワーグナーの件を忘れたことにしているな、こいつ