こんにちは。千葉です。

ガンダム芸人って、人による濃度の違いで番組自体が危うい瞬間がありますね、なんてエラそうな感想(そんなとこで?)。


さて、ストラヴィンスキィの予習、ちょっと方向を変えて聴いてみましたこの一枚。


◆Symphony of Psalms / Fireworks


先日の来日公演でも大いにその健在ぶりに感心させられたマエストロ、リッカルド・シャイーの約20年前の録音です、オーケストラはベルリン放送響。現在のベルリン・ドイツ交響楽団ですね。
収録されているのは以下の四曲、すべてストラヴィンスキィ作品です。

詩篇交響曲(1930)

花火(1909)

カンタータ「星の王」(1913)

交響詩「うぐいすの歌」(1917)


最も新しい作品でも詩篇交響曲、新古典主義時代の作品ですから、基本的には初期作品を中心にしたアルバム、ということになるでしょうか。とはいえ、ものの見事に三大バレエのような有名作品を避けて一枚のアルバムを作ってしまうところに、当時のシャイーのポジションと、その状況を逆に利用していたであろう野心が透けて見えるように思います。


実際、演奏がまた素晴らしいのですよ。ちょっとメタリックな光沢のあるオーケストラの響き(ホルンの音色がこんな印象を作っている気がする)、シャイーのリズム感とカンタービレの同居、実にいい。マニアックな、と言わざるを得ないこれらの作品が面白く聴けること請け合い、です。ちょっと、いやかなり入手困難だと思われますけれど、図書館であるとか中古屋さんを探す価値はあるかと。


とまぁそれだけなら、どの曲も他の録音だってあるわけですし、あえてここで紹介しなくても良いかもしれないのですが。このディスク、ちょっと感動的なくらいに録音が良いのです。掛け値なしに。一曲めの詩篇交響曲の冒頭、ピアノと管楽器、そしてバスドラムのアタックの一音を聴いただけでもそれはおわかりいただけるはず。あのう、録音は25年ほど前になるはず、なのですが・・・


確かに、RCAレーベルの「Living Stereo」シリーズのように、50年以上のときを経てなお名録音と称えられる、まさにエヴァー・グリーンと申し上げるにふさわしい録音もありますけれど、最近の録音はそういうものがメジャーなレーベルから新録音で発売されることが少なくて。期待の新譜が時として悲しいほど平坦な音だったりするのが、本当に恐ろしいのです(アーノンクールは例外的にまともな音で聴けるほう)。あ、SACDで発売されるようなものは除きますよ(とは言いながら、SACDでもピンキリだとも感じてます。悩ましい・・・)。


脱線してしまいました。
なんというか、この録音にはやたらと録音の精度を追求した雰囲気があって、実に面白いのです。オーケストラのみ、また声楽入りのオーケストラとキャラクタの違うサウンドをどこまで克明に録れるか挑戦してしまっているような雰囲気。


で、考えちゃいました。今って、ことデジタル録音に関する限り、現在はある程度の仕上がりでコントロールしちゃっているけれど、デジタル録音黎明期の終わりにはコスト意識の希薄な、最良の意味でチャレンジングにすぎるオーヴァ・クオリティな録音がけっこうあるのでは?と。テラーク・レーベルやDENONレーベルが攻撃的な録音を出していた時期、メジャー・レーベルも攻めざるを得なくて、コスト以上の録音をしていた時期があるのかなと。


おそらくはある種の実験でもあっただろうから間違いなく玉石混交だろうし、レーベルによっては許せないレヴェルの録音も存在するのです(特に名を秘すが、この録音に近い時期に収録されているロンドンのオーケストラによる高名なマーラー全集はその録音が許せない。その録音の所為でまったく演奏が評価できない)。それはわかっているのだけれど、コスト意識に還元されない録音に対する志のようなものは評価したい。裏返すと、最近の・・・いや、言うまい。


こんなことを考えてしまうと、比較的録音に定評があって好きな音楽家が移籍した先のマイナなレーベルの録音を購入することが増えてしまう今日このごろ、なのです。なにより、こんなプログラムのCD、メジャー・レーベルからは今は出ないでしょう?残念ですね・・・


ちょっと愚痴になってしまったのでひとまず〆て引きましょう。ではまた。