容疑者Xの献身 | 甲羅に似せて

甲羅に似せて

蟹は甲羅に似せて穴を掘るそうです。私も日々の想いを
蟹が穴を掘るように綴っていけたら・・・。

先程まで、テレビでやっていた「容疑者Xの献身」を、最後まで入り込んで観ておりました。


こんな話だったんだ…。


ドラマのような軽い感じのストーリィかと思ったら、始まってすぐの殺人事件からの展開が息苦しいほどで、気がつくと手に汗を握りながら最後まで。


石神役の堤真一さんが、すごくよかった。印象的でした。


白髪交じりの服装に頓着しない雰囲気とか、猫背で自信がなさそうに歩く外見的なところから、表情とか話しぶりの役作りがすごくて、観るうちに石神という役中の人物にしか見えなくなってくるところが、あ、これなんだろう、不思議という感覚でした。


自分の学問に対する愛着と美意識という、一般には理解されにくい部分でつながっている、湯川と石神の心の結びつきを思う時、物語の思わぬ展開に、学問と生活の相容れなさの皮肉を感じました。ひとり突き進んでいく石神を、もう一人の自分を見るような思いで見つめていた湯川。


学問に対する純粋さと、石神の花岡靖子に対する純粋さには、何か通じるものがある気がします。


最後に花岡靖子が現れたのを見た、石神の泣き叫ぶ姿が圧巻でした。


全てが水の泡になった悲痛の叫びのもっと奥には、彼のために彼女が来てくれたことへの感謝と喜びがあったのではないでしょうか。


映画がこんなに、ドラマと別物とは思いませんでした。


ああ、いい時間だった。