『利を以って合する者は、窮禍患害(きゅうか・かんがい)に迫られて相棄(あいす)つ』
―以利合者、迫窮禍患害相棄也―            

<荘子>


 利害関係で結ばれた者は、苦境や困難に直面すると、たちまち相手を見棄ててしまうのだという。

その逆はどうか。『荘子』はこう語っている。


 「天を以って属する者は、窮禍患害に迫られて相収む」


 「天を以って属する者」とは、わかりやすく言えば、深い信頼関係で結ばれた者である。


そういう場合は、苦境や苦難に陥ると、かえって親身になって助け合うというのだという。


 これまた真理と言ってよい。


※ われわれは多面的な交友関係の中で生活しており、利害関係で結ばれているケースも少なくない。それが悪だというわけではないが、こういうものだということは、はっきり認識しておいたほうがよいだろう。そうすれば、相手に余計な心理的負担を強いることもないし、こちらで対応を誤まることもない。いざと言うとき、頼りにならないものを頼りにするのは、もっとも拙劣な処世なのである。