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毎月月末恒例のお薦めクラシックです。先月はスペインでしたが、今月は残暑を逃れる為にロシアに行ってみましょう!(いつの間に旅行記に(笑))



ロシアピアニズムはそれはもう素晴らしくて、大作曲家と世界的演奏家がゾロリと居ます。スクリャービン、ストラヴィンスキー、チャイコフスキー、プロコフィエフ、ムソルグスキー、メトネル、ショスターコビッチ。。。演奏家もホロヴィッツやリヒテルをはじめ、プルトニョフやニコライエワ、マガロフ、チェルカスキー。若手(中堅か?)でもヴォロドスやキーシン等など(有名でも個人的に好きでは無い演奏家は省略しました(^w^))。天才揃いです!



ロシア音楽はヨーロッパのそれよりも日本人には馴染みやすいのかもしれません。ヨーロッパとアジアの融合とまでは言いませんが、どこか演歌調な歌い回しやメロディーの親しみ易さ、感情的でやや暗さのある所はヨーロッパ文化の中で生まれた音楽よりも日本人に近いものを感じさせます。



ラフマニノフは私の中で紆余曲折のあった作曲家です。小学校2年生の時にピアノ教室で“好きな作曲家は誰ですか?”と聞かれて、みんながショパンやモーツァルトと言う中でラフマニノフ!と生意気にも答えていた私ですが、その後、中学高校になってからはテクニカルでガンガン弾くのがラフマニノフ、と言う印象が強くなり敬遠するように。きっとその頃聴いたラフマニノフ演奏がマズイものばかりだったせいでしょう。同じ作曲家、同じ曲でも演奏者次第で素晴らしくも陳腐にも聴こえてしまう。。。私達音楽の翻訳者は実は重大な責任を背負っているな、とつくづく思います!その後、ホロヴィッツの演奏を聴き直してたちまちラフマニノフに魅了されました。



ラフマニノフの曲は結構有名な曲が多いので何かしら聴いた事があるかと思います。ピアノ協奏曲2番はフィギアスケートでよく使われているし、同じく3番もかなり有名。ヴォカリーズやエレジー、前奏曲集や練習曲集音の絵の中にも耳にしたことのある曲があるかもしれません。ラフマニノフは自身がピアニストだったことからピアノ曲が非常に多く、ロマンチックさとメランコリー、広大なロシアの土地を思わせる雄壮さと深み、暗い情熱、朗々と歌い上げるメロディが魅力です。ラフマニノフ自身が人間離れしたとてつもなく巨大な手を持っていたので(背もジャイアント馬場並み(笑))、時々とんでもない超絶技巧や和音が繰り出されるのも特徴です。
とても親しみやすく聴き易いので、虜になる方は多いようです。




ラフマニノフ演奏と言えば、共に祖国ロシアを離れてアメリカに渡り、ラフマニノフと特別に結び付きの強い親交があった前述のホロヴィッツが文句なく素晴らしい!! 協奏曲は勿論、プレリュードやエチュード、楽興の時、私も将来やりたいピアノソナタ第2番等など、沢山の曲を録音しています。超絶技巧にばかり耳を向けずに、心で聴いて欲しい音色です。ロシア人でありながらアメリカで笑って暮らしていかなければならない者同士の哀しみが胸に迫るものがあります。
◆ホロヴィッツの世界 ラフマニノフ:ピアノソナタ第2番
楽興の時、前奏曲、音の絵(3曲)etc.
ソニーレコード\2650



もう1枚。私がつい最近までやっていた“コレルリの主題による変奏曲”(←これも名曲)は現在指揮者としても活躍するミハイル・プルトニョフが知と情のバランスの良い冴え渡るテクニックの心地好いCDを出しています。ラフマニノフの愛用したピアノでの演奏で、透明感のある響きの良い音が耳を惹き付けます。プルトニョフは現存するロシアピアニストでは私は一番好きです。
◆ラフマニノフへのオマージュ
ラフマニノフ:コレルリの主題による変奏曲、音の絵(4曲)、ショパン:アンダーテ・スピアナートと大ポロネーズ、ベートーヴェン:告別ソナタ、メンデルスゾーンetc.
ドイツグラモフォン



私が好きな演奏家の条件は、まず音が良く響き、透明感があって美しいこと、情感豊かでありながら情に溺れずに知的でスッキリとキレの良い聴かせ方をすること、です。
演奏とは難しいもので感情移入し過ぎると情に流されてしまい、聴く方はシラケてしまうのですね。



最後にもう1枚。ホロヴィッツとモスクワ音楽院で同期だった隠れた天才ソフロニツキー。容貌もホロヴィッツと違って素敵です(笑)演奏はどちらも素晴らしく甲乙つけ難いですが、ソフロニツキーの方が真面目な演奏と言えるでしょう。私はホロヴィッツの方が面白いですが、ソフロニツキーの艶やかでひたむきな情熱も心揺すぶられます。
◆ラフマニノフ&プロコフィエフ
ラフマニノフ:前奏曲(7曲)、音の絵(5曲)、楽興の時(2曲)プロコフィエフetc.
DENON \1260
(安くて曲数も多くてお得!)

ラフマニノフを聴いてあなたは何を思うでしょう?