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久々のピアノネタです。
私、今シューマン中毒です。 シューマン、ご存じでしょうか?ドイツのロマン派を代表する作曲家、ロベルト・シューマン。誰もが一度は聞いた事があるであろう“トロイメライ”の作曲者です。




シューマンの魅力は、まず何よりもその情緒豊かな曲想。シューマン自身、あまりに繊細過ぎて精神を病んでしまったのですが、彼の曲は時に痛いほどに優しく、時に荒れ狂う波の如く激しい。この二つの要素はフロレスタンとオイゼビウスと言う形でよく言い表されます。有り余る感情は数々の名曲の中で昇華されたのです。





同時代のピアノの詩人、ショパンも大好きで、パリに居た頃は先生から“マドモアゼル・ショパン”と呼ばれるほどショパンはよく弾いて自分なりに究めたつもりですが、今はシューマンの温かな世界にどっぷりです。ほとばしる激情でラッシュしている中で、突如現れる夢や童話の様な温か~い響き。狂おしい激しさと背中合わせだからこそ、それは切れる様に美しい。涙無くしては聴けないぐらいです。





妻クララとの激しくも障害の多かった恋も、素晴らしい曲を生み出す原動力となりました。私がシューマンの最高傑作だと思うピアノ曲、“クライスレリアーナ”は正にこれを絵に描いたかの様な曲です。恋の喜び、悲しみ、柔らかな心…
私の、帰国前のパリでの最後のコンサートのプログラムでも弾いた思い出深い曲でもあります。




シューマンの作品には文学的な背景や、哲学的な関連がある場合が多いのですが、聴くに当たって難しい知識なんて要りません。余りにも素晴らしくて言葉は要らない。ただただ感情移入して、曲に身を任せればいいのです。それは誰もが知っている感情。恋する気持ちと動揺、憧れ、叫び、相手をいたわる気持ち、子供の様な純真さ、人生への諦め…





シューマンを収録した名盤を数枚ご紹介します。


◆シューマンのクライスレリアーナとクララ・ヴィークの主題による変奏曲

ピアノ: ウラディミール・ホロヴィッツ

CBS/SONY
32DC441


収録曲数が2曲、と少ないのですが、音質も良くどちらも素晴らしい曲であり演奏です。クララ・ヴィークの主題~は、ソナタの1番(今私がやってる曲です!)の第3楽章に当たる曲ですが、独立した曲として演奏される事もあります。クララ・ヴィークとは、愛する妻クララのこと。彼女は優れたピアニストでもあり、余り有名な曲はありませんが、作曲も少ししていました。染み透る様な美しく、物悲しい、心をえぐる曲です。ホロヴィッツの、情感豊かでありながらバランスの良いキレの良い語り口はここでも非常に心地よい。
(ホロヴィッツについては2月17日「スカルラッティ」をご参照下さい)




◆シューマンの子供の情景とクライスレリアーナ他
ピアノ:ウラディミール・ホロヴィッツ

SONY CLASSICAL
(\1600)
SICC374
ベストクラシック100


こちらもクライスレリアーナが入ってます。演奏日時が先に紹介した物とは違い、どちらかと言うと演奏も音質も先の方が◎ しかし、これは私が2枚を聴き比べたからで、初めて聴くならこちらもかなりな名演。しかも沢山曲が入っているのでお得(笑) 有名なトロイメライを含む名曲、「子供の情景」や元気で楽しい「トッカータ」、親しみやすい「アラベスク」、柔らかで美しい「花の歌」を収録。




◆シューマン謝肉祭OP.9他
ピアノ:ミケランジェリ

東芝EMI,CLASSICS
決定盤1300の43
TOCE-13043


イタリアの天才ピアニスト、ミケランジェリの名演。ミケランジェりは理想の為には一切の妥協を許さなかった為に、コンサートのキャンセル魔としてご存じの方もおられるかもしれません。完璧主義者の録音。
謝肉祭はあまりにも有名で、昔カレーの宣伝で使われたアレです。聴けばきっとわかるはず。クライスレリアーナよりも、全体に楽しく明るい童話集みたいな感じ。
他に幾つか小品が収録されており、1曲目の「冬の季節Ⅰ」はいきなり胸を突き刺されます。





◆ホロヴィッツ Playsシューマン
グランドソナタとユーモレスク他
ピアノ:ウラディミール・ホロヴィッツ


RCAゴールドシール
(\1800)
BVCC-7341


ホロヴィッツ70歳を過ぎた頃の録音。テクニック的にやや綻びはある物の70過ぎのおじいさんとはとても思えない、生き生きとした表情に脱帽!私が今手掛けている「グランドソナタ1番」と「ユモレスク」等を収録。名盤ですが、やや渋い選曲のせいか手に入りにくいかも…




先の3枚のCDは手に入り易く、割に安価だったと思います。是非、お試しあれ!




春の夜、シューマンの世界に浸って、感動と癒しと人生に涙を流してみるのもいいものです。